【R18】美少女転生

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プロローグ 「自助努力には限界があります」

第五話 「初めてのデート?」

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 この店は一見カジュアルな雰囲気なのだが、実は本格的なステーキ屋でカウンター席では目の前で肉を焼いてくれたりする。
 ちなみに、俺がカウンター席をチョイスした理由の一つも、ジュウジュウの焼き立てがすぐに食べられるという利点があるからだ。

 そして、もう一つのサービスとして、肉を焼く前にシェフがいちいち部位の説明をしてくれるのだが、正直俺はあまりこちらには興味がなかったりする。
 つまり、話なんぞ不要だ。早く焼け、ということだ。
 だから俺は、次々と焼き上げられる厚切りのステーキ肉を、頬張るように黙々と食べていた。

 柔らかい肉質も、ジューシーな焼き加減も最高で、特製のステーキソースは酸味と甘みが程よい感じでひたすら旨い。
 和風でポン酢と大根おろしっていうのもあって、これはこれでさっぱりとしていて中々に後を引く。
 それと、この岩塩だけで食べるっていうのも、素材の味が引き立つ感じでかなりうまい。肉好きにはたまらないな。

結衣ゆいちゃん…よく食べるねぇ。お腹大丈夫?」
「え、あぁ、えーっと大丈夫です」

 しまった。少しガッつき過ぎた。何たる不覚。これは怪しまれたか。
 ハッとして、思わず食事の手を止めて下を向く。

「あー、いいよ、いいよ。お腹空いてたんだもんね。食べて、食べて。」

 俺が気まずそうな態度で上目遣いで見ていると、逆に慌てたような仕草で肉を勧めてくれる。
 えーっと。最初に声をかけてきた方だから、確かこいつの名前は悠翔はるとだったっけ。色々と気が付く男だが、やっぱり、こういった男がモテるのかねぇ。
 見た目は確かにチャラいけど、何となく王子様っぽいんだよね。

 食事の量が進むにつれて食欲は落ちてきたが、やはり依然として空腹感は治まらない。ウーロン茶もさっきからゴクゴク飲んでいるのだが、ノドの渇きが癒されないのも変化なしだ。予想はしていたけどね。

 だが、すぐ近くに人間がいるというのは、精神衛生上は好ましい。

 いざという時に頼れるか未知数のチャラ男達ではあるが、一人で孤独でいるのと比べれば、かなりマシだ。少なくとも誰にも気が付かれることなく、野垂れ死にということはないからな。

「あー、俺そろそろ腹いっぱいだわ」
 と、浩太こうたがもう降参といった感じの声をあげる。

「かなり喰ったからなー、結衣ゆいちゃんは、もう大丈夫?」
「あ、はい…お腹いっぱいです」

 食欲が落ちているので、これ以上喰ったら、たぶんまた吐くな。せっかくの高級肉なのに、それは勿体なさすぎる。そう思った俺は、治まらない空腹感はとりあえず無視して二人に調子を合わせる。

「ん…じゃあ、会計頼むわ」
 と、悠翔はるとがクレジットカードを近くの店員に渡す。

 キャー、悠翔はるとさんカッコいい!! こういった時にカードがサッと出せるといいよね。俺は審査通らなくてカード作れないけどさ。
 え? 学生でも、普通は作れるって? 馬鹿言え、生活保護を受けてたら審査通らないんだよ。俺は正直者だからな。ちゃんと申し込み時に生活保護を受けていると書くのさ。
 まあ、最近は嘘をつけば、審査も通るのかもしれないけどな。

結衣ゆいちゃんは、今日はこの後、何か予定あるの?」
 と、悠翔はるとがそつなく訊いてくる。

 友人も無く、カネも無く、趣味がAV鑑賞で、ゲームしかやることのない俺に、それは愚問だな。
 それにしても、年下の男に結衣ゆいちゃん呼ばわりされるのは、当初は違和感を覚えたものだが、今は普通に感じてしまうからおかしな話だよな。

「いえ。特にないですけど…」

 すると、悠翔はるとは本当に嬉しいといった感じで、
「え、マジで? じゃあこれから遊びにいかない?」と、訊いてくる。

「いいねー。映画でも観て、その後、カラオケでも行く?」
 と、浩太こうたも、「俺テンション上がってきたわー」と、その横ではしゃぐ。

 どうやら、無駄にテンションがあがってしまったようだ。何かゴメン。
 それにしても君たち、今の俺の外見にことごとく騙されているね。中身おっさんの女を、映画やカラオケに誘うのがそんなに嬉しいか。
 そうか、そうか。若いっていいなぁ。青春だなぁ。

 俺はそんな二人に同情しながらも、
「いいですよー」と、ニッコリ微笑みながら返事をしてやる。

 家に帰っても、やることは限られてるし、間違いなく永遠と続く空腹感で、精神的にへこむだけだしな。
 ま、観たい映画もあったし、こいつらと一緒でも暇つぶしくらいにはなるだろうし、どうせ全部おごりなんだろうから、これって楽しまなきゃ損だよね。

 向かった先の映画館は、昼食をとったステーキ屋と同じ商業施設に入っていて、休日のそこはカップル達の集う、年齢イコール彼女いない歴の俺にとっては縁もゆかりもない場所だ。
 どうせ映画を観るなら、一人でゆっくりと、平日の安い時を狙うのがベストなのさ。つまり、無駄な金がかからなくて素敵ということだ。

結衣ゆいちゃん。何か観たい映画とかってある?」
「えーっと…これかな?」

 悠翔はるとに何か観たい映画はあるかと聞かれたので、俺は迷うことなく最新のアクションものを選択する。
 気を使わないでいいよーとか言われたが、別にお前らに気を使っているわけではない。俺が観たかっただけだ。
 映画のチケットを購入すると、そのままポップコーンなんかを買って、入場券に書かれた座席番号を見ながら席を探す。

「あの辺じゃない?」
 と、浩太こうたが指さす。

 真ん中寄りの後方の席で、映画を観るにはちょうど良い感じの場所だ。そして、やはり座る場所は俺が真ん中のようで、誘導されるがままに座る。
 まあ俺もどちらかに肩入れするつもりもないし、どう考えたって、こうなりますよねー。
 男女間の関係の難しさと面倒臭さを再認識したよ。本当に。この二人、あとで仲が悪くならなきゃいいけど…。

 アクション映画は演出だけはやたらにド派手で、余計に金がかかってるなーって感じだったけど中身はいまいちだった。
 単純で観ていて先が読めるっていうか、映画鑑賞が経験豊富な俺にとってはね。
 まあ若い男二人は楽しそうに観ていたようだけどな。

 そして、その後に行ったのが、カラオケだ。これも、同じ商業施設の中にあったので、移動は楽ちんだった。
 ここでも悠翔はるとが、「結衣ゆいちゃん、なに歌う?」って、そつなく訊いてきたから、俺はここぞとばかりに、今流行りのアイドルの曲を熱唱してやったさ。
 普段のおっさんスタイルでは、恥ずかし過ぎて到底できない芸当だからな。

 おまけに振り付けなんかも完璧に覚えてたので、歌に合わせて踊ったら、場が盛り上がるわ盛り上がる。
 ちなみに、これも腹の出たオッサン姿で踊ったら、放送コードに引っかかるレベルで、かなりのドン引きものだからな。
 だから、俺も乗せられて気分が良くなって、ついつい羽目を外しまくりで、まあこれってある意味しょうがないよな。
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