【R18】美少女転生

pizz

文字の大きさ
上 下
2 / 80
プロローグ 「自助努力には限界があります」

第二話 「転生」

しおりを挟む
 背中に凝り固まった痛みを感じて目を覚ます。キーボードに突っ伏した状態から、ググッとゆっくりと伸びをして、それから肩を軽くゴリゴリと回す。
 昨日、ゲームしながら寝落ちしたから、間違いなくそれが原因だろう。俺って経験豊富だから、すぐに分かっちゃうんだよね。テヘペロっ。

 目覚めたらそこは異世界で、チート能力でハーレム最高ウハウハなんて事、本当にあれば良いのになぁと、そんな事を考えながらも空腹感を覚える。
 誰しも人間生きていれば腹は減るのだ。

 窓からは日の光が差し込んでいるので、恐らく朝になったのだろう。いや、むしろもう昼かな……さて、今日もいつものブランチにでもするかな。ま、買い置きのカップ麺なんだけどね。

 そう思った俺は、ホコリと汗と少しの体液にまみれた布団から立ち上がるが、同時に違和感を覚える。
 視界の端に、ちらちらと入る長い黒髪。そして立ち上がった際の目線についても、いつもよりも若干低い。
 小太り、眼鏡、ガニ股、キモオタに加え、俺に長髪ロンゲ、チビがステータスとして追加された瞬間だった。
 
 ふ、ふはははっ! もはや俺様最強、ある意味チート最高ってやつだなっ!

 絶望的な感傷に浸りながら、体を見下ろすと、服はぶかぶかで丈も合っておらず、手も華奢きゃしゃで細くて白く、いつものおっさんの太い指ではなかった。
 そして、眼鏡をかけていないのに、視界が良好であることにも気が付く。それは俺から、小太り、眼鏡の状態異常が解除されたことを知った瞬間だった。

 さっきの説明では「状態異常」じゃなくて「ステータス」だったって? そんなもの良いか悪いかの違いで、どちらでも同じことだ。
 得るものが「ステータス」、失うものが「状態異常」、そういう風に考えないと、生きているのが辛くなるだろう?

 慌てて、洗面所に向かう。途中、弁当の空容器を踏みつけた感触があったが、そんなものはどうでもよい。
 いや、実際はどうでもよくない。くそっ! 腐った弁当汁の被害が布団に及ばなければ良いが。

 そして、水垢で曇りまくった、お世辞にも奇麗とは言えない鏡を見ながら、俺は茫然自失する。何故なら、そこには黒髪セミロングの超絶美少女の姿が映し出されていたからだ。

 そう俺は、おっさんから美少女にジョブチェンジ…ってレベルではないな…クラスチェンジって言っても、どう考えても派生してないだろう…。
 そう、これは転生だ! 俺は美少女に転生したのだ!

 パッチリと大きな目、長いまつ毛、ほんのりとした珊瑚色の唇に、透き通るようなスベスベの肌、すらりとした細い腕――。
 それに加えて、サラサラの黒髪は美しい色艶いろつやを放っていた。
 そして、明らかに10代だよね。これ。若返った? 美人って驚いた顔でも、やっぱり超美人なんだなと、少しだけ現実逃避してみる。

 こ、これは……医者に行くべきか? それともお医者さんごっこをするべきか?

 い、い、いかん、錯乱してしまった。これは緊急事態だ。スクランブルだ。いや、あかん出動はまずい。
 どうして良いかわからず混乱の極みの中ではあったが、まずは自分の体の状態をちゃんと確認しようと最終的には思い至る。

 ――べ、別に変態的な事するわけじゃないんだからねっ!
 
 ゆっくりとトレーナをまくし上げると、そこにはやや小ぶりだが、ふっくらとした柔らかそうな形の良い胸、そしてその先には桜色の先端。
 しばらく洗濯していない愛用のゴムズボンとトランクスをずり降ろすと、可愛らしいヘソと、くびれた腰。
 そして、薄く毛の生え揃った股には、未だ穢れを知らないであろう縦筋の一本線。俺の相棒たる暴れん坊の息子は、影も形も無くなっていた。

 再び鏡に目をやると、そこには自らの恥部を惜しげもなくさらす、卑猥ひわいな美少女の姿が映し出されていた。
 普段の俺であれば、これだけで一度に三回は抜ける。間違いなく神コンテンツだ。だが、不思議とムラムラとした感情は湧いてこない。
 一体全体、俺はどうしちまったんだ? 芸能人顔負けの半裸美少女が目の前にいるのに! 間違いなく「ヒャッハー!」な状態なのに…。

 もしかして、自分の体だから欲情しないのだろうかと、俺は愕然がくぜんとしながらも乱れた服装を整える。
 そして、定位置ホームポジションである薄汚れた布団に移動しながらも、今後のことを考える。
 これまでの腐った人生とはおさらばできた。だが、現実世界からはおさらばできなかった。

 なんだ、この中途半端は。

 冷静に考えると、女になった今の俺には、身分を証明するものは何もない。収入もなければ、貯蓄があるわけでもない。

 この先、どうやって生きていったら良いんだ?

 ……まぁ待て。まずは落ち着いて、前向きに今後の事を考えてみよう。 
 改めて自分の姿を見て考える。うん、この服装では、まず外出ができないな。
 男物の服で、ぶかぶかの状態。すぐにずり落ちてしまうし、美少女とはいっても、このままでは明らかに変質者だ。

 俺は取り合えずパソコンに向き合い、ショッピングサイトで適当に女物の服を探し始める。通販で翌日届き且つ、クレカを持っていない俺には代引きができることが条件だ。

 正直言って、自分の服にも無頓着なのに、どんな服が良いのかなんてわからんが、美少女が着るならこんな服かなーという感じで選んでいく。
 うん。ムフフな感じで、想像力をかきたてられる。なんだ楽しいなこれ。

 そんなわけで、テキトーに選んでいったのだが、思った以上に下着が高いことに気が付く。それとスリーサイズなんかも、身体全体が変わってしまった俺にとっては、もはや意味不明だ。
 家にあったメジャーで、なるべく正確に身長やらスリーサイズやらを測って、それらしいサイズのものを注文する。

 オンライン注文が終わったところで、軽く息をつく。これで衣服が届く明日には自由に外出できるはずだ。
 俺はノロノロと立ち上がり、非常食でもあり、常食でもある、カップラーメンの蓋を開けると、そこに電気ポットのお湯を注ぐ。

 そしてふと、床に落ちているエロ本を拾い上げて中身をパラパラとめくるが、こんなものだったかなという思いだけで、特に面白くもない。
 いつもなら、元気にいきり立つ息子がいないからだろうか。それとも、ひどく動揺しているからだろうか。

 決して不能EDになったわけではないっ……認めんぞっ、俺はっ!

 しばらくして、わが愛しのカップ麺からは、食欲をそそる芳醇な香りがほのかに立ち上る。腹が減ってはいくさはできない。まずは落ち着いて食するとしよう。
 それに、たぶんこれは絶対に夢だよね。そうに違いないって。だから、目が覚めたらなぁんだってなるんだよ。きっと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...