【R18】美少女転生

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プロローグ 「自助努力には限界があります」

第一話 「朝比奈雄介」

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 童顔ロリ体系のとびきりの美少女が、その大きな瞳をうるわせ、頬を朱色に染めあげ、羞恥心しゅうちしんをはらんだ控えめな嬌声きょうせいをあげる。
 赤みのさした白い肌は、若く玉のように張りがあり滑らかで、見ているだけでむしゃぶり付きたくなるような衝動に駆られる。

 そしてひとり俺はというと、その様子をノートパソコンのディスプレイの向こう側に捉えながら、いつもの缶ビール(発泡酒)をチビチビとあおっていた。

結衣ゆいちゃんのこの作品も、そろそろ見飽きたなぁ」

 独り言ちた可愛らしいその名前は、いま俺が鑑賞しているお気に入りのAV女優のものだ。

 ちなみに俺の名前は、朝比奈雄介あさひなゆうすけ

 小太り、眼鏡、ガニ股、キモオタの三十八歳、職業は自宅警備員。未だに童貞で、きっとこの先も死ぬまで童貞が保証されているナイスガイだ。
 ついでに、いまの職に就くのは人生で四度目になる。何気に職歴豊富だろ? 行きつけの職安でもよく言われるよ。

 それでもって、いい歳して何をやっているかって? エロ動画見てるんだから、そんなの決まってるだろ? ナニをやってるんだ。
 無職で容姿も最悪で、友人もカネも能力も何の取り柄もない、社会のド底辺の無能な俺に、それ以外にヤルことがあるっていうのか?
 ふふん。考えるだけで既に愚問だな。

「最近、グッとくるネタが減ったよなぁ」

 児ポ法が制定されてからというもの、インターネット上の無料コンテンツは劣化の一途だ。昔は掘り出し物を探して、リンク先をひたすら辿る楽しみがあったが、今となってはそれもない。

 怪しいサイトで、ウィルス感染するのが怖い? そんなのはOSごと全部入れ替えれば良いだけだ。そもそも正規のライセンスも持ってないし、ましてや、ウィルス対策ソフトなんて金のかかるものを買う余地すらないからな。
 第一、毎月再インストールすることになっても、時間が無限にある俺にとっては大した作業でもないし、ゲームだって、ほとんどオンラインだからローカルにデータは無いしな。

「くっそー、デリヘルやりてぇなぁ」

 閲覧履歴から、お勧め表示されたインターネット広告を見ながらぼやいてはみたが、無論、俺にはそんな金はない。それどころか借金だって、少なくとも三百万くらいはあったんだぜ。何気にヤバいだろ?
 借金は昔、友人と思っていた奴に、一緒に事業をやろうと言われて騙された時のものだ。未だに思い出しただけでもムカつく。次に会ったら絶対ぶっ殺す。

 まぁ借金については、何回も引っ越しを繰り返しているうちに督促状も届かなくなって、裁判も起こされなかったから、時効成立で踏み倒してやったんだがな。
 ん? 収入もないのに、普段の生活はどうしているのかって? 生活保護に決まってるだろ? 不労所得サイコーってやつだ。

「腹減ったなぁ…コンビニでも行くか」

 あかですっかり黒ずみ、湿り気を帯びた万年床と化した我が相棒たる布団。ちなみにここが、俺の定位置ホームポジションだ。
 そこから俺は、「よっこらせ」と重たい身体を立ち上がらせると、床に散乱した弁当の空容器を踏まないように玄関に向かう。
 そうそう。この前、最悪だったのが、間違えて容器を踏みつけたら腐った弁当汁が染み出してきて、臭くて大変だったのを思い出したよ。

 部屋の散らかり具合は最悪で、所々に煙草の吸い殻や、スナック菓子のカスが散りばめられているのだから、見た目的にも衛生的にもあれだな。
 ちなみに、弁当の容器やらビールの空き缶やらエロ本が堆積して、層ができあがってて、最後に床を見たのがいつだったか思い出せないくらいだ。
 きっとカビだらけなんだろうが、まあ、誰も来ることはないし、男の一人暮らしだからな。その辺は大目に見てくれ。
 
 自宅のアパートを出て、最寄りのコンビニに向かう。コンビニは向かいの大きめの幹線道路を渡ってすぐの位置だ。
 道路を渡らなきゃならないのは少々面倒くさいが、贅沢は言ってられない。ホームレスをしていた時期に比べれば、格段にマシなんだからな。
 
「いらっしゃいませ」

 自動ドアが開くとコンビニの女店員が声をかけてくる。名前は「やまみや」さん。本人に聞いたわけではなく、名札を見ただけだ。
 亜麻色ショートヘアの、目がくりっとした可愛い顔の俺好みの女の子だ。彼女はこの時間帯のシフトなので、狙ってくるのなら今がまさにベストだが、唯一エロ本は買いづらい。
 まぁ、買いづらいだけで、結局は普通に買ってるけどな。

 そんな事を考えながら、俺は適当に弁当を見繕う。実際、正直どれも食べ飽きたものばかりで、結局はどれでも一緒という感じなんだがな。
 たまには超高級店で美味いもの食いたいなぁ。ステーキとかステーキとかステーキとか。なにそれ、バリエーション貧弱過ぎるし。

 心の声で不平を言いながらも、いつものチキン南蛮弁当で妥協する。こんなものばっかり食べているから太るんだって?
 馬鹿を言うんじゃない、このタルタルソースが食べられなくなるくらいなら、たとえ肥満で死んだって、我が人生に一片の悔いはない。
 そして、そのままいつもの缶ビール(発泡酒)を選んでから、チキン南蛮と一緒にレジに置く。

「お弁当は温めますか?」
「あ、はい」

 事務的な言葉を交わしただけで、会話とも言えない些細なやり取りだが、この瞬間は俺にとって至福のひと時でもある。
 やっぱり生の女の声っていいな。スピーカーの声とは段違いだよな。

 なに? キモイッって? ああ、確かにキモイさ。キモくて結構。いっそのこと、清々しいまである。で、それがどうしたっていうんだ?
 この先、俺の人生の中で絶対に関わることはないであろう可愛い女の子と、言葉を交わせて嬉しい気持ちになる。それのどこが悪いんだ?

 会計を先に済ませて、弁当を温めてもらっている間、レジ前を空けて暫し待つ。
 その間にも、他の客が雑誌やら菓子やら飲み物やらを購入していき、「やまみや」さんはせっせとレジ打ちの対応をしていく。
 そして俺は、ただボーっと、そんな彼女の様子を眺めていたが、やがて「ピピッ」という小気味よいレンジの音が鳴る。

 すると、そのレンジの音に反応して、
「お飲み物の袋は、お分けしますか?」と、「やまみや」さんが可愛らしい声でこちらを伺う。

「あ、一緒でいいです」
 と、俺が応えると、手際よく弁当とビールを袋に入れて渡してくれる。

「ありがとうございました」

 営業スマイルと分かっていても、ニッコリと笑う彼女はやはりとても可愛い。
 こんな可愛い子が、俺の嫁だったらなぁと叶わぬ願望という名の妄想を抱きながらも、俺はコンビニを後にする。
 さて、帰ったら何するかな。まあ、やることは決まってるんだけどな。つまり、AV鑑賞が無課金オンラインゲームのどちらかだ。

 家に帰ってから弁当を食べて、ビールを飲みつつ煙草をふかしながら、だらだらとゲームを始める。最近、煙草を買う金も厳しくなってきたが、こればっかりは止められないんだよな。
 そして俺は、そのまま寝落ちするまで、いつものゲームをやり続けてから、いつも通りの翌朝を迎えた。
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