良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

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早朝の霧雨は既に過ぎ去った。

地面に燻る雑草どもは朝露に身を擡げる。

蛙鳴蝉噪の声声に払暁を痛感する。

グレイになった石畳には水溜りがあり、新聞屋の馬車が慌ただしく通り過ぎると、波紋がたつ。

早朝の匂いに肺をいっぱいにすると、朝日の暖かみを肌で感じる。

油風に喜色の炎熱を乗せると、冷静を取り戻して道を睨んだ。

今日も今日とて学校である。










学校はいつも通り、うつらうつらしていると疾うに過ぎ去り(つまり俺は模範的な落ちこぼれというわけで、実直なみなさんには是非とも見習ってほしいわけだが)、俺たちは放課後を満喫していた。

まぁ、満喫というからには、そりぁあもう楽しいことであって、それは今行われているパーティーに起因する。

このパーティーはつまり、リリーのお帰り会だ。
当然、こんな私事には、王族といえど公費を出せるわけがないから、各々自分のお小遣いから今回のパーティー代を出しているのだが。

ただ――ああ、日本の中流階級の方々と比べてもらっては困る。

まあ、勿論この言明は俺の前世と同じような中流階級の方々を馬鹿にしているわけではなく、卑近な例がそれであったためであるが。

このパーティーのためにメイドだって雇ったし、世界の大珍品を集めたりもした。
勿論、それの料金は俺ら3人、つまりリリー以外で折半だが。

然も、これで驚きなのが参加者が4人しかいないということだ。

4人しかいないのにビュッフェ形式なのはどうかと思うが、これを提案したのはマイケルなのでもし何か料理が残ろうものなら、マイケルの胃の中に突っ込もうと思う。

とまあ、そんなことはさておき、マイケルがついにシャンメリー(俺たちは未成年なのでお酒は禁止だ)を開けたらしい。
そろそろ俺も腹が減ってきたし何かを食べるか。










ババ抜きに於けるマイケルの弱さが露呈して、それは最早ゲームにならないほどの噴飯物であるとわかったところで、気を逸らそうとしたマイケルが俄然、こんなことを言い始めた。
「そういや、そろそろ終わりにするか? 」

俺は鹿爪らしい装飾の施された、これぞ王族とでも言わせるような金の懐中時計(純金であるからとても重いわけで、俺としてはこれを振り捨ててどこかそこら辺の川にでも投げたいのだが、これは王族の権威を示すだけでなく、身の保身にもなる、つまり何か強盗が来た時にこれを渡して命だけは助けてもらうためでもあるからと親父が断固認めない。)を開き見ると、もう真夜中、ミッドナイトであるわけだから、そろそろ各々の親が何か心配をするのではないかということで俺もそれに賛成した。

するとマイケルは俄に席を立ち、恭しく服を整えると、こう言った。

「えぇ、宴もたけなわでございますが――」

俺はマイケルのまじめ腐った挨拶に苦笑するわけだが、マイケルはのちにこうつづけた。

「このパーティーはリリー様の帰還を祝うものでございまして、我々一同はその帰還に安堵を通り越して感涙を催したのであります。では、その涙はどこに落ちたのかというと、たぶん、それは我々の友情という若葉、或いは大木の地を湿らせ、益々の発育を促すでしょう」

なんだ、こいつ、案外いいことを言うではないか。

「今回のことから我々は波乱万丈こそが我等の友情を強くすると学びました。ですから我々はこれから困難に当たった時、こう思えるでしょう。『成長のチャンスだ』と。ですから、みなさん、どうか慄く気概は北北東へ、勇猛果敢な気骨をこそ追っていきましょうではありませんか」

マイケルは一息置いてこう締め括った。

「とりあえず、今回はリリー様の帰還を祝して、一本締めを。お手を拝借!」

そして俺らは訳もわからぬまま、マイケルの口上に乗せられて手を叩くのだった。
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