良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

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「で、この子とはどこで知り合ったのかしら」
そう言うと、シャーロットは俺を睥睨する。
い、いや、赤の他人だが。なぁ?
俺は話を合わせろという圧力も込めてリリーに視線を送る。しかし、リリーはそんな視線に小首を傾げてこう宣った。
「いや、私とアルは仲良しだ」
ああ駄目だ。こいつ、人間界にいたことがないのか空気を読む力が途轍もなく低い。
「ふぅん」
シャーロットの目がより険しくなる。おいおいよしてくれ!俺とてこいつと好きで知り合いをやっているわけじゃないんだから!裸の付き合いも持っているが決して甘々なものではなく、肋骨が何本か折れるくらい痛々しいものなのだから!
「まあいいわ。そこらへんは聞かないでおいてあげる。あんたの頭の認識阻害もね」
刹那、リリーは興味深そうに笑みを浮かべた。
「ほう、これに気づいたか」
「まあ、そりゃあね」
「となると、人間にしては高い戦闘力を持っているな」
「それって最早あんたが人間じゃないってことを認めているようなものだけど――まあそうね」
「まあ、アルの友達なら少しは信用できるんじゃないか?」
俄然、マイケルが入ってきた。シャーロットが俺を睨んでいる時は何も喋らなかったくせに、そう、下を俯いて黙っていたくせにだ。
「そうね、こいつは或る意味では莫迦だけど、信用できないやつを信用するほど莫迦ではないわ」
「だってさ、信用されているんだな。アル」
リリーが意地悪く笑う。
やれやれ、それはつまり友達の友達は友達って理論ですかね。それはついぞコミュニケーション欠乏の俺にはわからない理由だったね。
「……ねぇ、ちょっと気になるのだけれど、この子、リリーはいつからあんたのことをアルと呼ぶ許可を得たのかしら」
許可?許可も何もアルバートじゃ長いし――
そこで俺は気づいてしまった。シャーロットが何故そんなことを気にするのか。それはつまり「友達の友達は友達」理論に起因する。コミュ欠の俺にはついぞ会得し得なかった概念だから気づかなかったのだが、例えばさっきの論を「BのAはC」と捉え直すとはっきりとわかる。つまり、友達であっても別種の友達ということだ。一次的な友達と二次的な友達にはある種の隔絶がある。そりゃそうだ。友達となる契機が違うのだから。そしてシャーロットはBのグループ分けとして俺を「アル」と呼ぶことを定義としている。それかそれ以外かで分けるわけだ。となると、当然、Cグループであるリリーが俺を「アル」と呼ぶことは定義の不安定を意味する。なるほど。そう言うことか。つまり、シャーロットは自分の帰属する社会的単位の曖昧模糊化を嫌っているんだ。ここで俺はどうするべきか。そう、新たな定義づけをシャーロットに提案するべきなのである。この間コンマ一秒!俺は矢継ぎ早にこう言った。
なるほど。シャーロットお前の気持ちはよくわかった。だったらこうしよう。マイケルをマイマイと呼ぶことに。
「は、は?何言ってんの?」
そうかそうかよくわかった。つまりお前は照れているんだな。自分の考えが俺に解析されてしまって。だが案ずること勿れ。俺はお前とBグループの友達さ。その思考内容を他人においそれと言うことはない。
「……チッ!いいわ、マイケル、あんたのことはこれからマイマイ、いえ、なめくじと呼んであげるわ」
「は、はぁ!?おい!八つ当たりするな!」
「八つ当たり?なんのことかしら?塩かけるわよ」
「……何やってくれてんだアル!これじゃ俺が無意味にナメクジになっただけじゃないか!――」
よし、これでシャーロットも落ち着くだろう。いやしかし社会的単位の定義が問題となるとは。やはり頭のいいやつってのは些細なことで躍起になるんだな。
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