良識のある異世界生活を

Hochschuler

文字の大きさ
上 下
21 / 41
学園

21

しおりを挟む
女は洞穴に入る。さぁ、これが最後の戻るチャンスだ。俺は当然まだあの女には勝てないし、この中にはこいつの仲間が大勢いるだろうから勝つ確率なんてものは天文学的数字だろう。そして俺はこいつらの敵、然も敵陣営の中核人物であるのだから、もしかしたらこちら側の情報を知るために拷問されるかもしれない。俺は一呼吸おく。どうする、俺。このままこいつらの巣の情報だけを持ち帰ってあとは親父に任せるのも手だぞ。と考えてみるが、ここにきた時点で答えは決まっている。そうだ。俺はこの女についていく。たとえそれが罠であったとしても。

洞窟内には多くの龍がいた。みんな俺を睨んでいる。その中の一体がこう話しかけてきた。
「おい、ドラゴニル。人間なんか連れてきてなんの真似だ」
「うるせぇ、龍皇がこいつに用があるって言っているんだ」
「こいつに?……まあ確かに人間にしちゃ強そうだが、あの方が興味を持つほどか?」
「黙ってな。狭量なあんたにはあの方の考えなどわからないだろうから」
「お前もだろ」
……
ドラゴニルと呼ばれた女はその言葉を無視して奥に進む。すると、一つ、大きな扉が現れた。女は徐にそれを開く。それだけでもこの女が怪力だと言うことが知れた。
金属の扉が岩に擦れ耳障りな金切り声を出す。女は俺に先を促した。俺はその指示に従って入る。その先にいたのは――あの老人だった。
龍皇ってのはあんたのことか?
「ああ、そうだとも」
なるほど、通りで。ただの龍にケインさんがやられるわけがないし、矢張り王は曲がりなりにも王ってことか。
「はっはっ、まあ、あやつには少し手こずったがな。何せ、時空間魔術を儂が使う前提で戦ってくるのだから。普通だったらもっと圧倒されても良いものを……」
で、なんのようだ。
「前に言ったじゃろ。ほら、時空間魔術と体術を教えてやろうとな」
……敵の俺にか?
「……まあ、敵に塩を送るのもまた一興じゃろう」
老人は俺から目を離すと、机に立てかけられていた無骨な杖を手に取りこう言い放った。
「まず、人間よ。アルバートと言ったか?ではアルよ。お前は体術の型がなっていない。そこから指導を始める。そして体が疲れたら次は魔術だ。時空間魔術だ。頭も使おうではないか。これには膨大な努力と……何より才能が要る。儂の指導は少し厳しいが――ついてこられるかな?」
ちっ、あんたの腹の中はついぞわかりかねるが、くれるもんは全部もらってやるよ。
「ふぉっふぉっ、その意気じゃ」
こうして龍皇と俺の、不思議な関係が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...