良識のある異世界生活を

Hochschuler

文字の大きさ
上 下
8 / 41
学園

試闘

しおりを挟む
音速を超えた彼の拳は虚空を掠める。
拳の先にはすでに僕の姿はなく、後ろに回り込んでいた僕は彼の首目掛けて手刀を繰り出す。
然し、一瞬にして彼の姿は消え、彼は下から蹴り上げてくる。
僕は両腕を交差させそれを防ぐ。
体に響く重い打撃だ。
然し彼の体重はその蹴りに乗っていたので彼は少しふらつく。
僕はすかさず距離を詰めて彼の顔に拳を入れ込む。
すると彼はその拳を避け、両腕で巻き取ると僕を後方へ投げた。
彼は僕の方へ詰めてくる。
僕はバク転をして投げられた勢いを殺すと、彼の顔目掛けてパンチを繰り出す。
彼もそれに合わせて僕にパンチを繰り出す。
僕は直前で身を屈めると、彼の拳に腕を巻きつけ、そのまま彼を地面に叩きつけた。
地面は割れて、轟音が響く。
どうやら勝負はあったようだ。

「ハァ、ハァ、プハ!やっぱお前って化け物だよな!」
マイケルは地面に大の字に寝ながら言う。
いや、まだまださ。
「いいえ、事実、こいつは化け物よ。この前もS級冒険者と対等に戦っているところを見たわ」
「なんじゃそりゃ、人間かよ」
いや、あれは決して対等なんかではない。こっちは木剣を持って、然もあっちは一歩も動かないと言う制約で漸くああ言う試合だ。
「おいおい、S級とはどんな制約であっても対等に戦えるだけでバケモンなんだよ」
「そうね、しかもその冒険者が言うにはこいつは未来のSS級らしいわ」
「ハハ!ちげえねぇ」
おいおいよしてくれ、俺はそんなに強くないぞ。
「どの口が言ってるんだか」
ところで読者の皆さんは何故こんな状況になったのか不思議に思っているだろう。それはマイケルが放課後、どうせなら俺と一戦交えたいと言ったことに端を発する。俺としてはそんな戦闘狂の話など聞いてやるに値しないのだが、シャーロットが久しぶりに見たいと言うから、まあ減るもんでもないし見せてやろうと思ったまでだ。然し、このマイケルというやつもなかなかに強く、この一戦は俺にとっても面白いものとなった。さて、説明はそれくらいにして帰るか。荷物を取りに行った時、漸く気づいたのだが、グラウンドには多くの人が見物に来ていた。僕の姿を見ると、みんな拍手喝采で迎えてくれた。やれやれ、僕としてはそんなすごいものを見せようとしたのではなく、ただ楽しんだだけなのだから、そんなことされたら当惑してしまうのだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...