良識のある異世界生活を

Hochschuler

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学園

遅速的濫觴

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学園へと続く一本道は赤色が蠢動し、散った桜は大勢に踏まれ、石畳にこびりついている。その群衆の中の多くが期待に目を輝かせている。かく言う僕はどうなのかと言うと、小首を傾げていた。その理由は、周りと同じく赤色の制服に身を包んだシャーロット・リリーにある。何故か彼女が頬を赤く染めて下を俯いたままなのだ。いったい何故だ。そんな行動、僕に恋慕している時しかあり得ないはずだ。然し、彼女は僕に恋慕などしていないはずだ。何故なら彼女は僕に人脈作りのために近づいたのだから。では、この事態はどう言うことか。僕は考えを巡らせる。まず、僕と彼女との関係は王族と公爵家だ。社交会で出会って、そこから懇意にさせてもらっている。然し彼女の社交の場はそこだけではないだろうから、多分恋慕している人は他の場所であったのだろう。とすると、僕に近づく理由は何だ?その時、一つのシャーロックホームズ顔負けの推理が頭に浮かんだ。つまり、事件の真相とはこうだ。
リリーの恋慕している相手は王族との繋がりを持ちたいと思っている。その意志を持つことは悪いことではないのだが、いかんせんそいつが王族と近づくことに熱中してしまって公爵家のリリーとの仲が等閑になってしまった。それに心を痛めたリリーは王族と近づくためには自分と近づくのが1番の近道だと示すために、今ここで僕と一緒に登校している。そして事実その試みは成功していて、耳目は大変集まっている。中には僕たちを揶揄する奴らもいるくらいだ。では、リリーの顔は何故赤いのか。それは揶揄ってくる奴らがいるからだ。それに憤慨し、然しそれを僕に吐露したり、逃げ出したりしたら自分の計画も台無しになってしまうため、耐えるように下を向いているのだ。
そうなったらリリーにかける言葉は一つ。
お前も苦労してんだな。
「……は?」
ああ、みなまで言わずともわかる。ただ、頑張れよ。
「は、は?誰のせいでこうなっているって言うの!?」
僕のせいだよ。ああ、全部僕のせいだ。この、眼光紙背に徹する僕のね。
「なんか言葉は合っているのだけどその裏にある意味が全く違うような気がするわ」
ふ、僕ってば、罪な男だな。
「むかつく。なにも分かってないくせに。むかつく」
目の前にはすでに学園があった。
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