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幽幻ゆうなはかく怪奇を語りき(後)
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「このマンション、ヴィンテージヴューヴィレッジで起こる怪奇を一掃すれば霊界との結びつきは絶たれて、マンションは現世に戻る。これは解決案その1」
「逆に完全に霊界に侵食されきったら現世との結びつきは絶たれて、マンションは現世から行けなくなる。これが解決案その2」
「今のところエレベーターからは全部の階に行けるけれど、霊界に侵食されきった階層はもう見捨てていいから。はい、これ今のところゆうなが暇な時に調べてるマンションのマップね」
「面倒くさいのが、エレベーターがマンションとは全く関係ない別の所とも繋がってるっぽいんだよね。厄介なことにこのマンションの居住階のマネしたミミックフロアもあるぐらいだし。見分けるの最初大変だったんだ」
「ゆうなも配信中に仕分けてたんだ。ここ最近だと、プール階はもう大丈夫。スポーツジム階と玩具屋階は配信後の裏作業で掃除しといたから。美術館階と水族館階は手遅れだから諦めて」
「よいちさんが住む最上階フロアは安心かな。大家さん、引き続き管理よろしくお願いします」
「白黒未確定な階層は残り三つ。体育館階と、工場階と、ゆうな達が住む居住階。これをどう対処するか、話し合おっか」
圧倒される、とはこのことか。深刻に受け止めていた冥道めいや宵闇よいちを尻目に、誰よりも深く関わりながら全く知らず存ぜずなふりをしていた幽幻ゆうなこそが解決に一番近づいていたなんて。
宵闇よいちはきゅうすに入れていたお茶を湯呑に注ぎ、あおるように飲み干した。そして口元を拭って、幽幻ゆうなが提示したタブレットの資料を読み漁る。それから悔しそうに歯ぎしりした。
「私の地道な調査は無駄だった、ってことかな?」
「ううん。マンション内のテレビ放送と新聞配布、アレすっごく助かったんだ! 指針として超便利だったの!」
「……。そ、そうか。少しでも役立ったなら、まあ、構わないかな……」
「徘徊者のみんなには分からないから説明すると、あの赤い画面で黒い影がわけわからない言語で喋ってた意味不明な放送なんだけど、アレ実はVdol宵闇よいちさんの配信と全く同じだったんだ」
「それはわたくしが解き明かしましたが、それとマンション攻略がどのように関係あったのですか?」
「よいちさんの配信からどれぐらい変貌したか、が霊界度の指針になるの。例えば……」
幽幻ゆうながタブレットを操作すると、画面には宵闇よいちの配信はそのまま流れ出した。しかしそれは動画配信サイトにアクセスしているのではなく、マンション内の放送を受信しているのだとか。配信がそのまま流れているので、宵闇よいちの住む最上階は問題なくなったと判断できる。
次に、と操作して見せたのは……いつぞや冥道めいの配信でも目撃したあの怪奇放送そのままだった。ただ漆黒の影が若干恐れが和らいでいるようにも感じる。幽幻ゆうな曰く、これは仮想PCを使って幽幻ゆうなの部屋から受信した放送を転送しているのだとか。
「そこで役に立つのがポータブルテレビ。これを調べるフロアに持ち込んで、対処できそうな怪奇は祓って、無理そうなら逃げる。受信しなかったらもうそこはマンションじゃないから絶対に足を踏み入れない。これで結構安全に探索できるの」
「なるほど……」
冥道めいが思わずうなずいていたら、宵闇よいちが幽幻ゆうなに拍手を送った。
「そこに気付くとは流石だな。見くびっていたよ、悪かった。私もそうやって各階を調べていたんだ。無論、私はここや一階管理室の監視カメラ越しだがね」
「じゃあよいちさんの仕分けとも比べてゆうなの判断が合ってるか確かめたいんだけど、いい?」
「分かった」
宵闇よいちはタブレットの映像をテレビの大画面に映すよう準備した。
「美術館階は手遅れか? 来客を襲う物騒な絵画さえ始末すれば、さ」
「美術館全体が怪奇化してるから、絶対無理」
「本屋階もだ。本を全処分して改築すればいいだろう」
「そんな事する前に本の中に異世界転生する破目になっちゃうって」
「逆に体育館階は諦めるべきだ。あんな連中なんて放っておけばいい」
「最後の手段が残ってるんで、よいちさんお願いどうにかして」
「……っ。相手に断られたら絶対諦めてくれよ」
「で、工場階だけどうやっても行けないんだけど。よいちさん分かる?」
「あいにく監視カメラの映像もそこだけ映らない。どうなってるのかサッパリだ」
「どうにかして行く方法探すしかないかぁ」
「それで、幽幻ゆうなが住む階なんだが、まだ救いようがあるのか?」
リスナーには最初、宵闇よいちが何を言っているのか、理解出来なかった。
宵闇よいちの恐れを抱いた眼差しと彼女の言葉で、徐々に理解が及ぶ。
冥道めいもまた理解したが、彼女は警戒する必要なしと判断し、静観する。
「信じていいんだよね? 君、幽幻ゆうなを含めて、まだあの階には現世に戻ってこれる住人が残っている、って」
それでも宵闇よいちは希望を込めて訪ねた。
目の前の幽幻ゆうなは本当に生きているのか? と。
「逆に完全に霊界に侵食されきったら現世との結びつきは絶たれて、マンションは現世から行けなくなる。これが解決案その2」
「今のところエレベーターからは全部の階に行けるけれど、霊界に侵食されきった階層はもう見捨てていいから。はい、これ今のところゆうなが暇な時に調べてるマンションのマップね」
「面倒くさいのが、エレベーターがマンションとは全く関係ない別の所とも繋がってるっぽいんだよね。厄介なことにこのマンションの居住階のマネしたミミックフロアもあるぐらいだし。見分けるの最初大変だったんだ」
「ゆうなも配信中に仕分けてたんだ。ここ最近だと、プール階はもう大丈夫。スポーツジム階と玩具屋階は配信後の裏作業で掃除しといたから。美術館階と水族館階は手遅れだから諦めて」
「よいちさんが住む最上階フロアは安心かな。大家さん、引き続き管理よろしくお願いします」
「白黒未確定な階層は残り三つ。体育館階と、工場階と、ゆうな達が住む居住階。これをどう対処するか、話し合おっか」
圧倒される、とはこのことか。深刻に受け止めていた冥道めいや宵闇よいちを尻目に、誰よりも深く関わりながら全く知らず存ぜずなふりをしていた幽幻ゆうなこそが解決に一番近づいていたなんて。
宵闇よいちはきゅうすに入れていたお茶を湯呑に注ぎ、あおるように飲み干した。そして口元を拭って、幽幻ゆうなが提示したタブレットの資料を読み漁る。それから悔しそうに歯ぎしりした。
「私の地道な調査は無駄だった、ってことかな?」
「ううん。マンション内のテレビ放送と新聞配布、アレすっごく助かったんだ! 指針として超便利だったの!」
「……。そ、そうか。少しでも役立ったなら、まあ、構わないかな……」
「徘徊者のみんなには分からないから説明すると、あの赤い画面で黒い影がわけわからない言語で喋ってた意味不明な放送なんだけど、アレ実はVdol宵闇よいちさんの配信と全く同じだったんだ」
「それはわたくしが解き明かしましたが、それとマンション攻略がどのように関係あったのですか?」
「よいちさんの配信からどれぐらい変貌したか、が霊界度の指針になるの。例えば……」
幽幻ゆうながタブレットを操作すると、画面には宵闇よいちの配信はそのまま流れ出した。しかしそれは動画配信サイトにアクセスしているのではなく、マンション内の放送を受信しているのだとか。配信がそのまま流れているので、宵闇よいちの住む最上階は問題なくなったと判断できる。
次に、と操作して見せたのは……いつぞや冥道めいの配信でも目撃したあの怪奇放送そのままだった。ただ漆黒の影が若干恐れが和らいでいるようにも感じる。幽幻ゆうな曰く、これは仮想PCを使って幽幻ゆうなの部屋から受信した放送を転送しているのだとか。
「そこで役に立つのがポータブルテレビ。これを調べるフロアに持ち込んで、対処できそうな怪奇は祓って、無理そうなら逃げる。受信しなかったらもうそこはマンションじゃないから絶対に足を踏み入れない。これで結構安全に探索できるの」
「なるほど……」
冥道めいが思わずうなずいていたら、宵闇よいちが幽幻ゆうなに拍手を送った。
「そこに気付くとは流石だな。見くびっていたよ、悪かった。私もそうやって各階を調べていたんだ。無論、私はここや一階管理室の監視カメラ越しだがね」
「じゃあよいちさんの仕分けとも比べてゆうなの判断が合ってるか確かめたいんだけど、いい?」
「分かった」
宵闇よいちはタブレットの映像をテレビの大画面に映すよう準備した。
「美術館階は手遅れか? 来客を襲う物騒な絵画さえ始末すれば、さ」
「美術館全体が怪奇化してるから、絶対無理」
「本屋階もだ。本を全処分して改築すればいいだろう」
「そんな事する前に本の中に異世界転生する破目になっちゃうって」
「逆に体育館階は諦めるべきだ。あんな連中なんて放っておけばいい」
「最後の手段が残ってるんで、よいちさんお願いどうにかして」
「……っ。相手に断られたら絶対諦めてくれよ」
「で、工場階だけどうやっても行けないんだけど。よいちさん分かる?」
「あいにく監視カメラの映像もそこだけ映らない。どうなってるのかサッパリだ」
「どうにかして行く方法探すしかないかぁ」
「それで、幽幻ゆうなが住む階なんだが、まだ救いようがあるのか?」
リスナーには最初、宵闇よいちが何を言っているのか、理解出来なかった。
宵闇よいちの恐れを抱いた眼差しと彼女の言葉で、徐々に理解が及ぶ。
冥道めいもまた理解したが、彼女は警戒する必要なしと判断し、静観する。
「信じていいんだよね? 君、幽幻ゆうなを含めて、まだあの階には現世に戻ってこれる住人が残っている、って」
それでも宵闇よいちは希望を込めて訪ねた。
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