配信者幽幻ゆうなはかく怪奇を語りき

福留しゅん

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異次元への扉と化した本(表)

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 かつて、静かな街に佇む小さな本屋が、ある日から不思議な出来事で知られるようになった。その本屋の名前は「星野書店」。ここでは普通に売られている本だけでなく、街の人々が手に入れたくなるような奇妙で不可解な書籍も置かれていた。

 ある日、古い本やオカルトに興味を抱いていた大学生の佐藤悠太(仮名)は、友達と遊んだ帰りに星野書店を見つけた。店の入り口をくぐると、そこには幅広いジャンルの書籍が所狭しと並んでいた。興味津々に店内を見て回ると、その中の一冊の本が彼の目を引き寄せた。それは「異次元の扉を開く方法」が記されているというものだった。

 好奇心に駆られた佐藤悠太はその本を手に取り、中を見てみることにした。その本には不可思議な記述が綴られていて、異次元への扉を開くための儀式が詳細に書かれていた。興奮と緊張が入り混じる中、佐藤悠太はその本を購入して帰路についたのだった。

 夜が更け、佐藤悠太は一人で儀式を試みた。言葉を唱え、特定の手順を踏むことで、異次元への扉が開かれる、と本に書かれていた。しかし、儀式を行っても何も起こらず、佐藤悠太は落胆して寝ることにした。

 翌朝、佐藤悠太の部屋から昨夜読んだ本がなくなっていた。不思議に思った彼は再び星野書店を訪れて店員を問いただすと、店員は微笑みながら次のように答えた。

「あの本は一夜限りの本だったんですよ。異次元への扉を開ける方法を知りたければ、別の方法を見つけなければなりません」

 その後、星野書店は街の人々にとって不思議な場所となり、多くの者が様々な奇妙な本を手に入れに足を運んだ。しかしその中には、本当に異次元と繋がるものもあれば、ただの妄想や錯覚を味わうだけのものもあった。

 ある日、星野書店に訪れた若い女性・高橋美香(仮名)は、本を手に入れることに成功しました。その本は「星と繋がる鍵」と書かれており、特殊な儀式を行うことで星座と繋がり、過去や未来の出来事を垣間見ることができるとされていた。

 高橋美香は帰宅し、夜が更ける中で「星と繋がる鍵」の指示に従い儀式を始めました。星座の配置が変わり、奇妙な光が彼女を包み込む中、彼女は次第に今を過ごす世界、次元とは異なる超常的な存在に触れていく感覚を覚えた。星の輝きが彼女を包み、過去や未来の情景が彼女の前に広がっていったのだった。

 しかし、その中で見たものは美しいものばかりではなかった。未来の出来事は彼女にとって不安と絶望をもたらし、過去の出来事は彼女の心に深い傷を残してしまった。彼女は異次元からの情報の重さに耐えかね、自分の手で扉を閉じようと決意したのだった。

 星野書店に戻り、その本を返しに行くと、店員は再び微笑みかけた。

「異次元への扉は開けることも閉じることもできます。ただし、それには代償がかかります。未来を知ることができれば、その未来に抗うこともできるでしょう。ただし、その代償を理解した上で、どうするかはあなた次第です」

 高橋美香はその日以降、星野書店には足を運ばなった。彼女は自分の未来を知ることができたことで、その未来に向き合い、変える決意をしたから。

 星野書店は街の中で独自の存在感を放ちながらも、多くの人々がその扉を開けずにいることを知っていたのだった。

 □□□

「異次元、異世界への扉、かぁ。今ゆうな達は本を何気なく読んでいるけれど、その中には本当に別の世界が広がっているのかもしれないね。だからこそ圧倒的な描写、物語、登場人物の生き様に心打たれるのかも」

 幽幻ゆうなに届けられるお便りは一応リスナーの体験談、または耳にした噂話を募集したものだ。しかし中には都市伝説の類や全くの創作物もあるだろう。しかし幽幻ゆうなが語る限りは全てが真実である。これはそういう配信なのだ。

「でも、こう、夢中になれるぐらい引き込まれる傑作に出会えるって素敵だと思うよ。その後の人生とか心がけとかがガラッと変わっちゃうようなさ。ゆうなも幾つかあるんだけれど、紹介はまたの機会にしようか」

 だから異次元に閉じ込められた男性も、未来を垣間見て歩みだした女性も存在する。犠牲となった本人の投稿であっても犠牲となった後に何らかの手法で記録している。記載内容が合っていることを前提に幽幻ゆうなは語る。それが自分に語ってほしいと願いを込めて届けられる投稿への礼儀だと幽幻ゆうなは考えているから。

 そうした姿勢だからリスナーも茶化すことこそあれど真っ向から否定はしない。真剣になって事象を考察したり、内容にかすりながらも思いっきり脱線したり。そうやって幽幻ゆうなや他のリスナーとの共有の時間を大事にしているのだ。

 コラボという異物が紛れ込むのは、たまにでいい。

「徘徊者のみんなも紙の本買おうね。タブレットで読む電子書籍は便利だけど、味気ないって。じゃあ今日はこの辺でお別れね。ばいび~♪」
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