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奇怪で気味の悪い新聞(表)
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「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻 ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」
今宵も幽幻ゆうなの配信が始まる。そんな彼女の部屋だが、いつも整理整頓されておしゃれなインテリアが飾られる部屋の中に、新聞やチラシらしき束がうずたかく積まれていた。
「徘徊者のみんなは最近新聞って買ってる? ゆうなは全然。だってニュースだったらネットの方が早いしテレビ欄もテレビ見ないから用無いし、社説はそれって貴方の感想ですよねって感じ。あ、でも片付けに便利だから束とかたまに買ってるよ」
いきなりの新聞ディスにリスナーの意見で大いに湧いた。概ね新聞に対して否定的な意見ばかりだが、中にはスポーツ新聞愛読者や電子版購読者の反対意見が見られる。情報が偏っている、というコメントで一致はしているが。
「今日はそんな新聞にまつわる怪奇をおとどけー。まずは徘徊者田中健太郎さん(仮名)からだよ。彼の知り合いから聞いた話みたいだね」
■■■
その日は普通の日だった。
伊藤雄一(仮名)はいつも通りに新聞を取りに玄関まで歩いて行き、ポストから取り出した。しかし、その新聞は何かがおかしい。表紙の記事は「未来を知る方法」というものだった。興味を持って記事を読むと、不思議な方法で未来を予知することができるという内容だった。
伊藤雄一は「面白そうだな」と思いながら、記事に書かれた方法を試してみることにした。紙を丸め、何回かほどとても速い速度で回し、それから紙を広げると、そこには未来の日付と出来事が書かれていたのだ。
最初は面白半分だったが、予知された出来事が当たり始めたとき、恐怖が押し寄せてきた。
まずは友人の誕生日プレゼントについての記事が現実と全く同じ内容で書かれていた。次に家の近くの交差点での交通事故、更には地元のニュースに載るような事件がそのまま予知されたのだ。
驚きと恐怖心から、彼は新聞を見ること自体を避けるようになった。だが、毎日のように新聞は玄関先に届いてきた。
ある日、新聞が何も書かれていない白い紙になっていた。不気味さを感じながらも、興味本位でその白い紙を広げると、そこにはただひとつの文字が書かれていた。
「終わり」
その瞬間、部屋の中で不気味な静寂が広がった。部屋の明かりが点滅し、強烈なめまいに襲われた。そして、何かが見え隠れする気配がした。自分の周りで、何かが動いているような気がした。
その後、伊藤雄一は意識を失ってしまった。目を覚ますと彼は不気味な空間にいた。白い紙だらけの部屋で、その先には誰もいない延々と続く廊下が広がっていた。
新聞が予知する未来は、その「終わり」だけだった。そして、この場所から脱出する方法も、何も示されなかった。
以来、その新聞の記事は現実の出来事を的中させ続け、誰もがその呪われた新聞の存在を恐れるようになった。そして、新聞配達人が何者かによって消えてしまった後、新聞は玄関先に現れなくなった。
だが、それが再び現れる日のことを誰もが恐れるばかりだった。
□□□
「色々と考えられるよね。実は新聞が未来を綴った代償として伊藤雄一さんが未来を失った、とか、伊藤雄一にとっての世界が本当に初期化されて全てがなくなっちゃった、とかさ」
ところで、と幽幻ゆうなは高く積まれた新聞の塊から一部新聞を抜き取り、リスナーに見せるようにカメラへと近づけた。それは一見すると何の変哲もないありふれた新聞なのだが、詳しく見ることで一同は戦慄することになる。
「これ、うちのマンションの住人が作ってる新聞。多分発行してる人はアマチュアのテレビ番組配信者と同じじゃないかなーって思ってる」
そこに記された文字は文字の体をなしていなかった。世界中を探したところで当てはまる言語はない。強いて表現するならソレは文字に似て非なる記号の羅列だ。自分達の使う文字に生じ酷似しているだけに気味悪さと気持ち悪さが際立っている。
更には写真に映し出される人物や風景も異様だった。これもまたどこにでもある田舎町の背景に複数名の人が映されているが、顔や指が歪んでいたり脚が別なところから生えていたりと、これもまた嫌悪感を掻き立てる。
リスナーの誰かが言った。AIで生成した画像みたいだ、と。
「そうそう、実際そんな感じ。これ毎週発行されるんだけど全ページ違うんだよね。きちんと新聞っぽいし。面白かったら切り抜いてファイリングしてるんだ」
幽幻ゆうなは新聞を切り抜いた跡をリスナーに見せびらかした後、それを再び束の上に置いた。リスナーからは不気味な物を収集する変わった趣味扱いされてその話は落ち着いた。
「んじゃあ次、岩崎悠太さん(仮名)からの投稿だよ。これはご自身の体験談みたいだね」
今宵も幽幻ゆうなの配信が始まる。そんな彼女の部屋だが、いつも整理整頓されておしゃれなインテリアが飾られる部屋の中に、新聞やチラシらしき束がうずたかく積まれていた。
「徘徊者のみんなは最近新聞って買ってる? ゆうなは全然。だってニュースだったらネットの方が早いしテレビ欄もテレビ見ないから用無いし、社説はそれって貴方の感想ですよねって感じ。あ、でも片付けに便利だから束とかたまに買ってるよ」
いきなりの新聞ディスにリスナーの意見で大いに湧いた。概ね新聞に対して否定的な意見ばかりだが、中にはスポーツ新聞愛読者や電子版購読者の反対意見が見られる。情報が偏っている、というコメントで一致はしているが。
「今日はそんな新聞にまつわる怪奇をおとどけー。まずは徘徊者田中健太郎さん(仮名)からだよ。彼の知り合いから聞いた話みたいだね」
■■■
その日は普通の日だった。
伊藤雄一(仮名)はいつも通りに新聞を取りに玄関まで歩いて行き、ポストから取り出した。しかし、その新聞は何かがおかしい。表紙の記事は「未来を知る方法」というものだった。興味を持って記事を読むと、不思議な方法で未来を予知することができるという内容だった。
伊藤雄一は「面白そうだな」と思いながら、記事に書かれた方法を試してみることにした。紙を丸め、何回かほどとても速い速度で回し、それから紙を広げると、そこには未来の日付と出来事が書かれていたのだ。
最初は面白半分だったが、予知された出来事が当たり始めたとき、恐怖が押し寄せてきた。
まずは友人の誕生日プレゼントについての記事が現実と全く同じ内容で書かれていた。次に家の近くの交差点での交通事故、更には地元のニュースに載るような事件がそのまま予知されたのだ。
驚きと恐怖心から、彼は新聞を見ること自体を避けるようになった。だが、毎日のように新聞は玄関先に届いてきた。
ある日、新聞が何も書かれていない白い紙になっていた。不気味さを感じながらも、興味本位でその白い紙を広げると、そこにはただひとつの文字が書かれていた。
「終わり」
その瞬間、部屋の中で不気味な静寂が広がった。部屋の明かりが点滅し、強烈なめまいに襲われた。そして、何かが見え隠れする気配がした。自分の周りで、何かが動いているような気がした。
その後、伊藤雄一は意識を失ってしまった。目を覚ますと彼は不気味な空間にいた。白い紙だらけの部屋で、その先には誰もいない延々と続く廊下が広がっていた。
新聞が予知する未来は、その「終わり」だけだった。そして、この場所から脱出する方法も、何も示されなかった。
以来、その新聞の記事は現実の出来事を的中させ続け、誰もがその呪われた新聞の存在を恐れるようになった。そして、新聞配達人が何者かによって消えてしまった後、新聞は玄関先に現れなくなった。
だが、それが再び現れる日のことを誰もが恐れるばかりだった。
□□□
「色々と考えられるよね。実は新聞が未来を綴った代償として伊藤雄一さんが未来を失った、とか、伊藤雄一にとっての世界が本当に初期化されて全てがなくなっちゃった、とかさ」
ところで、と幽幻ゆうなは高く積まれた新聞の塊から一部新聞を抜き取り、リスナーに見せるようにカメラへと近づけた。それは一見すると何の変哲もないありふれた新聞なのだが、詳しく見ることで一同は戦慄することになる。
「これ、うちのマンションの住人が作ってる新聞。多分発行してる人はアマチュアのテレビ番組配信者と同じじゃないかなーって思ってる」
そこに記された文字は文字の体をなしていなかった。世界中を探したところで当てはまる言語はない。強いて表現するならソレは文字に似て非なる記号の羅列だ。自分達の使う文字に生じ酷似しているだけに気味悪さと気持ち悪さが際立っている。
更には写真に映し出される人物や風景も異様だった。これもまたどこにでもある田舎町の背景に複数名の人が映されているが、顔や指が歪んでいたり脚が別なところから生えていたりと、これもまた嫌悪感を掻き立てる。
リスナーの誰かが言った。AIで生成した画像みたいだ、と。
「そうそう、実際そんな感じ。これ毎週発行されるんだけど全ページ違うんだよね。きちんと新聞っぽいし。面白かったら切り抜いてファイリングしてるんだ」
幽幻ゆうなは新聞を切り抜いた跡をリスナーに見せびらかした後、それを再び束の上に置いた。リスナーからは不気味な物を収集する変わった趣味扱いされてその話は落ち着いた。
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