5 / 72
公園を彷徨う悪霊(表)
しおりを挟む
「悪鬼彷徨う怪奇の世界からおこんばんは~。幽幻 ゆうな、です! 今晩も徘徊者のみんなを霊界に引きずり込んじゃうぞ♪」
いつものように幽幻ゆうなの配信が始まった。
彼女の怪奇語りは特に映像美も無いため、リスナーの何割かはラジオ代わりに聞いている、とアンケート調査の結果判明している。作業用に二画面にしているリスナーも何割かいて、純粋に画面上で動く幽幻ゆうなを視聴するリスナーの割合はさほど多くない。
「そんなわけだからさ、この時間にびっくり映像流そうかなーとか思ったこともあったんだけど、何というか、ポリシーに反する、みたいな? だからこの時間は耳を傾けてくれるだけでゆうなは嬉しいよ」
バックミュージックも無い。ただ延々と幽幻ゆうなの語りを聞くだけ。彼女の声に癒される、一日の励みになる、との声がリスナーからあがっていて、それが支持に結びついているのだ。
「じゃあ今日も怪奇話を語っていくよ。まずは徘徊者川口千絵さん(仮名)からの投稿だよ。「幽幻ゆうなちゃん、こんばんは。いつも楽しく聞いています」、はい、どうもありがとうございます~。「この体験はずっと忘れられそうにありません。実は――」」
■■■
町の中心にある公園は、昼間は賑やかで子供たちの笑い声や家族連れの楽しい姿が見られた。だが、夜になると、その公園は不気味な雰囲気に包まれる。
ある晩、友人の誕生日を祝うため、川口千絵たちはその公園で夜遅くまでパーティを楽しんでいた。楽しい時間は過ぎ、友人たちが家に帰る途中、川口千絵は一人で公園を歩いていた。
月明かりが公園を照らし、木々の影が長く伸びる中、何かが違和感を覚えさせた。空気が重くなり、足元の土が冷たく感じられた。しかし、私はその感覚を無視して公園を歩き続けた。
すると、突然、目の前に立ちはだかるようにして、見知らぬ少女が現れた。彼女は不気味な微笑みを浮かべ、何かを囁くようにして話し始めた。
「ここには悲しい霊がいるのよ。彼女は貴女たちを見ているの」
彼女の言葉に戸惑いを隠せず、川口千絵は不安を感じながらも彼女の話を聞いていた。
「この公園には、かつて悲劇があったの。若い女性がこの場所で失踪して、その後、彼女の遺体が発見されたの。でも、その霊はまだここにいるのよ。」
彼女の話に耳を傾けながら、川口千絵は公園の周囲を見回した。何か不気味な気配を感じながらも、公園は静まり返っていた。
すると、彼女が突然、川口千絵の顔を覆うようなジェスチャーをして続けた。
「彼女は見た目では現れないけど、影としてこの公園に住み着いているの。だから、夜は絶対にここに来ない方がいいわ」
その時、彼女の姿が消えたかのように、公園には一瞬にして静寂が戻った。川口千絵は驚きと恐怖に包まれ、一刻も早くその場を離れようと一目散に駆け出した。
家に戻り、その夜の出来事を友人たちに話すと、彼らも同じような経験をしたと言った。誰もが同じ少女の話を聞いていた。そして、それ以降、その公園には夜になると誰も足を踏み入れなくなった。
数週間後、新聞で調査された記事を目にした。そこには、かつてその公園で失踪した女性の霊が、未だに公園を徘徊しているとの証言が記されていた。そして、公園の周囲には一切の音が聞こえなくなったという報告もあった。
その日以来、その公園は誰もが避けるようになり、多くの人々がその悲劇の影響を感じていた。誰もがその公園での夜の出来事を二度と忘れないだろう。
□□□
「こういう場合って神社とか寺に依頼してお祓いでもするの? それとも公園潰して別の建物とか建ててロンダリングする? いや、でも今どこも財政難らしいし、実害が無いから放置されるとか?」
リスナーの予想に反して、話が終わると幽霊が出没した公園への対処法で盛り上がった。寺を立てれば一石二鳥といった声からコンクリートで地面を固めて物置にするといった意見もあった。
少なくともそんな物騒な場所のある近くには住みたくないなぁ、と幽幻ゆうなが締めくくり、その話題は終わりを迎えた。その意見にはリスナーも概ね賛成のようだった。
「じゃあ次! えっと、徘徊者鈴木拓海さん(仮名)からだよ。えっと、これも実体験だってさ」
いつものように幽幻ゆうなの配信が始まった。
彼女の怪奇語りは特に映像美も無いため、リスナーの何割かはラジオ代わりに聞いている、とアンケート調査の結果判明している。作業用に二画面にしているリスナーも何割かいて、純粋に画面上で動く幽幻ゆうなを視聴するリスナーの割合はさほど多くない。
「そんなわけだからさ、この時間にびっくり映像流そうかなーとか思ったこともあったんだけど、何というか、ポリシーに反する、みたいな? だからこの時間は耳を傾けてくれるだけでゆうなは嬉しいよ」
バックミュージックも無い。ただ延々と幽幻ゆうなの語りを聞くだけ。彼女の声に癒される、一日の励みになる、との声がリスナーからあがっていて、それが支持に結びついているのだ。
「じゃあ今日も怪奇話を語っていくよ。まずは徘徊者川口千絵さん(仮名)からの投稿だよ。「幽幻ゆうなちゃん、こんばんは。いつも楽しく聞いています」、はい、どうもありがとうございます~。「この体験はずっと忘れられそうにありません。実は――」」
■■■
町の中心にある公園は、昼間は賑やかで子供たちの笑い声や家族連れの楽しい姿が見られた。だが、夜になると、その公園は不気味な雰囲気に包まれる。
ある晩、友人の誕生日を祝うため、川口千絵たちはその公園で夜遅くまでパーティを楽しんでいた。楽しい時間は過ぎ、友人たちが家に帰る途中、川口千絵は一人で公園を歩いていた。
月明かりが公園を照らし、木々の影が長く伸びる中、何かが違和感を覚えさせた。空気が重くなり、足元の土が冷たく感じられた。しかし、私はその感覚を無視して公園を歩き続けた。
すると、突然、目の前に立ちはだかるようにして、見知らぬ少女が現れた。彼女は不気味な微笑みを浮かべ、何かを囁くようにして話し始めた。
「ここには悲しい霊がいるのよ。彼女は貴女たちを見ているの」
彼女の言葉に戸惑いを隠せず、川口千絵は不安を感じながらも彼女の話を聞いていた。
「この公園には、かつて悲劇があったの。若い女性がこの場所で失踪して、その後、彼女の遺体が発見されたの。でも、その霊はまだここにいるのよ。」
彼女の話に耳を傾けながら、川口千絵は公園の周囲を見回した。何か不気味な気配を感じながらも、公園は静まり返っていた。
すると、彼女が突然、川口千絵の顔を覆うようなジェスチャーをして続けた。
「彼女は見た目では現れないけど、影としてこの公園に住み着いているの。だから、夜は絶対にここに来ない方がいいわ」
その時、彼女の姿が消えたかのように、公園には一瞬にして静寂が戻った。川口千絵は驚きと恐怖に包まれ、一刻も早くその場を離れようと一目散に駆け出した。
家に戻り、その夜の出来事を友人たちに話すと、彼らも同じような経験をしたと言った。誰もが同じ少女の話を聞いていた。そして、それ以降、その公園には夜になると誰も足を踏み入れなくなった。
数週間後、新聞で調査された記事を目にした。そこには、かつてその公園で失踪した女性の霊が、未だに公園を徘徊しているとの証言が記されていた。そして、公園の周囲には一切の音が聞こえなくなったという報告もあった。
その日以来、その公園は誰もが避けるようになり、多くの人々がその悲劇の影響を感じていた。誰もがその公園での夜の出来事を二度と忘れないだろう。
□□□
「こういう場合って神社とか寺に依頼してお祓いでもするの? それとも公園潰して別の建物とか建ててロンダリングする? いや、でも今どこも財政難らしいし、実害が無いから放置されるとか?」
リスナーの予想に反して、話が終わると幽霊が出没した公園への対処法で盛り上がった。寺を立てれば一石二鳥といった声からコンクリートで地面を固めて物置にするといった意見もあった。
少なくともそんな物騒な場所のある近くには住みたくないなぁ、と幽幻ゆうなが締めくくり、その話題は終わりを迎えた。その意見にはリスナーも概ね賛成のようだった。
「じゃあ次! えっと、徘徊者鈴木拓海さん(仮名)からだよ。えっと、これも実体験だってさ」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/3/15:『きんこ』の章を追加。2025/3/22の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/14:『かげぼうし』の章を追加。2025/3/21の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/13:『かゆみ』の章を追加。2025/3/20の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/12:『あくむをみるへや』の章を追加。2025/3/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる