残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.

福留しゅん

文字の大きさ
上 下
55 / 88
Interlude1 アレクサンドラのその後

公爵嫡男セシリオの興味(前)

しおりを挟む
 ■Side セシリオ

 タラコネンシス王国の三大公爵家は準王家と呼ぶに相応しい系譜と歴史を持つ。
 王妃が必ず三大公爵家の息女から選出されるだけでも数多の貴族の中でも別格だ。

 そんな三大公爵家の嫡男として生を受けたセシリオには妹が三人、弟が一人いる。中でも上の妹アレクサンドラは王太子となるアルフォンソに嫁ぐことが決まっていて、公爵家はしばらく安泰だ、との見方が強かった。

 そのセシリオが後に求婚する相手となるセナイダと始めて出会ったのは、学園に通い始める何年か前の頃だった。

「セナイダと申します。精一杯に務めを果たします。右も左も分かりませんが、ご指導ご鞭撻のほどお願い致します」

 どうにも友人の屋敷に招待されたアレクサンドラがひと目見て気に入り、家に圧力をかけて強引に引き抜いたんだそうだ。給料は公爵令嬢の侍女を務めることを加味しても破格。妹が一介の使用人にこれほどこだわるのも珍しい、とセシリオは感想を抱いた。

 しかし、蓋を開けてみたらセシリオにとってセナイダはつまらなかった。アレクサンドラの我儘に従い、横暴さに文句一つ言わず、悪巧みの片棒を担く。体の良い使いっぱしりが欲しかっただけか、とセシリオは彼女から早々に興味を失った。

 そんな彼に学園に通い始めてから転機が訪れた。

 貴族の子息息女は例外無く学園に通う決まりになっていて、奇しくもセシリオとセナイダは同い年。セナイダも昼間はアレクサンドラから解放されて学園生活を送ることになった。学費まで公爵家より援助される厚遇扱いで。

 貴族は自動的に入学するとはいえ、学力を計るために入学試験は行われる。公爵家の嫡男として最高峰の教育を受けてきたセシリオにとっては難関と評価される試験も容易いもので、上位五名に名を連ねるだろうとの手応えがあった。

 結果、セナイダが二位でセシリオが三位だった。

「セナイダ!」

 セシリオは掲示板に張り出された結果を見て愕然。セナイダに始めて声をかけた。怒るセシリオと澄まし顔のセナイダの構図は他の入学生や保護者達の注目を集めた。それでも場所を移そうとの発想は無く、セシリオは続ける。

「何をした?」
「質問の意図が分かりません。もっと具体的に説明していただけませんか?」
「入学試験の結果だ。君は俺よりも高かっただろう」
「そのようですが、まさか不正を疑っていますか?」
「当然だろ。屋敷での君の勤務を見ればとても高得点を狙える勉強量は確保出来なかった筈だからな」

 アレクサンドラに振り回されるセナイダは早朝から夜まで時間を拘束されている。勤務後の深夜に睡眠時間を割いても限度がある。恥ずかしくない点数を取るだけならまだしも、セシリオを超える結果を残すのは不可能、とセシリオは結論付けている。

「知りたいですか? なら教えてあげましょう」

 そんなセシリオにセナイダは笑いもせず、呆れもせず、ただ淡々と言葉を紡いだ。

「教師陣も暇ではありません。教育内容は毎年決まっていますし、頭に入れなければいけない要点も然り。なら、毎年試験の内容は似た傾向になりますよね。中には面倒くさがって数年おきで問題を使い回す教員もいるみたいですし」

 だから数年間の過去問から試験の傾向を把握して要点だけ勉強した、とセナイダは悪びれずに言い放った。

 奨学金目当ての一般市民なら話が別だが、試験範囲をきちんと学べているかを計る目的で行われる試験に問題のみを対策して望むのは恥、との見方が貴族の間では強い。それを子爵令嬢であるセナイダは行ったと堂々と宣言したのだ。

「だけどさ、問題用紙は毎年不正対策で試験終了後に回収されるだろう。問題の事前把握は不可能だ」
「良いところのお坊っちゃまではその程度の発想力しかありませんものね」
しおりを挟む
感想 249

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。