186 / 209
第四章 熾天魔王編
聖女魔王、魔王軍全軍を集結させる
しおりを挟む
「そんな! 魔王軍は確かに退けたはずなのに!」
「ユニエラもエルネストもよく見てますか? 軍を構成する魔物の種類が違うでしょう。アンデッドの軍勢、冥法軍はこれまで誰とも戦ってませんよね?」
映像に映る魔王軍はゾンビやスケルトンを主力に数多のアンデッド系の魔物で半分以上占められている。もう何割かはリビングアーマーやゴーレムやガーゴイルといったすぐさま補充が効く魔影軍。所々に邪神と思われる個体が配置されている。
突如襲来した魔王軍。その脅威が聖地まで伝達されるにはしばらく時間がかかるだろう。俺達のいる丘近くを除けば聖地やその周囲はいつもの平穏な様子を保っていた。まるでミカエラが見せつける映像の方が嘘のようだな。
「更に言えばラファエラ達が相手した魔影軍は半壊しただけ。これならいくらでも立て直し出来ますよ。邪神も軍長に従った何名かは残ってますし。残念でしたね」
「ミカエラ……! この聖都を戦場にするつもりなのか!?」
「先に喧嘩を売ってきたのはそっちでしょう。非難される謂れはありませんね」
「ぐ……!」
魔王刻印持ちのルシエラがいる以上、一般聖女や並の聖騎士では太刀打ち出来まい。数の暴力で押し切るか勇者が討伐に繰り出す他無いだろう。ミカエラかルシエラか。エルネスト先輩達はどちらを優先させるか究極の選択を迫られてしまった。
それでもやがて意を決したようで、先輩達は戦闘態勢に入った。この場から離れずにそのままミカエラに専念するつもりか。そっちがその気なら……と戦鎚と盾を持つ手に力がこもったが、ミカエラはそんな俺の手に自分の手を添えた。
「威勢がいいのは結構ですけど、ユニエラ達の相手をしてあげられるほど暇じゃないんですよね」
「何を……!」
「ですがせっかくご足労したんです。遊び相手を用意してあげましょう!」
ミカエラが権杖を天高く掲げたと同時に上空に巨大な魔法陣が構築されていく。それは先程ルシエラが見せたのとまるっきり同じもの。その効果も自ずと分かるというものだ。悟ったのは相手側も同じで明らかに警戒を強めている。
「デモンズゲート!」
ミカエラの力ある言葉と共に魔法陣が漆黒に輝き、直後に滑り落ちるように続々と魔物が出現しだした。そして聖地の裏手に開けた平野に続々と集結していく。その数は見る見るうちに増えていき、群れが集団に、集団が軍勢へと変化していった。
半数近くがゴブリンやトロールやオーガなどで構成された妖魔地上軍、そしてハーピィやサキュバス、ヴァンパイア等で構成された妖魔空中軍。残りの何割かが地水火風の邪精霊達や多種多様なドラゴンのようだ。
「妖魔軍、邪精霊軍、そして超竜軍の残存勢力を結集させました。さあ人造勇者と人造聖女達。果たしてこの脅威から聖都を守れますか?」
ミカエラが権杖で教会総本山の方を指し示したのを合図として魔王軍の第二陣が容赦なく襲いかかる。聖都を守る防壁や結界も郊外までは伸びていない。言わばこの一帯は完全に無防備な状態。このままでは蹂躙されるしかないだろう。
ユニエラ先輩は歯ぎしりし、ミカエラを射殺さんばかりに睨みつける。しかしミカエラはどこ吹く風。今にも口笛でも吹きそうなぐらい余裕綽々だった。更には後方を指し示して「放っておいていいんですか?」と挑発する始末だ。
「覚えていてよ……! 魔王軍を退けたら次は貴女の番なんだから!」
「それが遺言ですね。三日ぐらいは覚えておきますよ」
ユニエラ先輩は憎々しげに吐き捨てて丘を駆け下りていく。人造聖女や人造勇者達も彼女に従って聖地から去っていった。残された俺達を阻む者は誰もいなくなった。いくら魔王軍が脅威とは言え肝心の魔王を放置していいのか、と思わなくもない。
「さて、それじゃあ行きましょうか」
「行くって、どこに?」
ミカエラはユニエラ先輩達を最後まで見届けずに丘を降りていく。勿論魔王軍と合流するためではなく来た道を戻る方向、つまり教会総本山へと。念のため聞いたんだがミカエラは愚問だとばかりに「ニッコロさんは馬鹿ですねー」とか言ってきた。
「決まってるじゃないですか。ルシエラの身体を取り戻しにですよ」
こうして教会総本山へのお礼参りが決定したのだった。
□□□
聖地のある郊外から教会総本山に戻ってくるにあたり問題が一つあった。
それは聖域の奇跡ホーリーサンクチュアリが張り巡らされた境界をまた超える必要がある点だ。
しかも聖女という肩書が物を言った先ほどとは異なり、今度は魔王として対処する気満々なようだった。まだ城壁までは遠いのに教国軍が待ち受け準備を慌ただしくする様子が見て取れる。
聖都の街はようやく魔王軍の到来が伝わったらしく、避難場所や自分の家に戻ろうとする人で混乱した様子だった。行きと帰りで全く異なる情景にやはり魔王軍とはそれほど人々の平穏を脅かす存在なのだと改めて思い知った。
「それで、あの城壁は強行突破するの?」
「聖域の奇跡を飛び越えての転移は出来ませんから、そうするしかないですね。隕石魔法メテオストライクあたりで物理的に潰しますか」
「あー、そんな仰々しい真似するぐらいならうちが対処するさー。要するに聖域の奇跡と城壁を無力化すればいいんだろー?」
そんな街を貫く街道のど真ん中でティーナは背負っていた魔王弓の封印を解いた。相変わらず一切光らない漆黒の弓を携え、矢をつがえて引き絞る。心なしかティーナの周辺も光が失われているような気がした。
「ダークネスエターナル」
ティーナが放った闇そのものは昼間の聖都を飛んでいって聖域の奇跡に激突。たちまちに漆黒の闇が奇跡を飲み込んでいく。やがて闇は奇跡から染み出して城壁にも降り注がれ、警備兵や待機する騎士達が姿を消していった。
「ユニエラもエルネストもよく見てますか? 軍を構成する魔物の種類が違うでしょう。アンデッドの軍勢、冥法軍はこれまで誰とも戦ってませんよね?」
映像に映る魔王軍はゾンビやスケルトンを主力に数多のアンデッド系の魔物で半分以上占められている。もう何割かはリビングアーマーやゴーレムやガーゴイルといったすぐさま補充が効く魔影軍。所々に邪神と思われる個体が配置されている。
突如襲来した魔王軍。その脅威が聖地まで伝達されるにはしばらく時間がかかるだろう。俺達のいる丘近くを除けば聖地やその周囲はいつもの平穏な様子を保っていた。まるでミカエラが見せつける映像の方が嘘のようだな。
「更に言えばラファエラ達が相手した魔影軍は半壊しただけ。これならいくらでも立て直し出来ますよ。邪神も軍長に従った何名かは残ってますし。残念でしたね」
「ミカエラ……! この聖都を戦場にするつもりなのか!?」
「先に喧嘩を売ってきたのはそっちでしょう。非難される謂れはありませんね」
「ぐ……!」
魔王刻印持ちのルシエラがいる以上、一般聖女や並の聖騎士では太刀打ち出来まい。数の暴力で押し切るか勇者が討伐に繰り出す他無いだろう。ミカエラかルシエラか。エルネスト先輩達はどちらを優先させるか究極の選択を迫られてしまった。
それでもやがて意を決したようで、先輩達は戦闘態勢に入った。この場から離れずにそのままミカエラに専念するつもりか。そっちがその気なら……と戦鎚と盾を持つ手に力がこもったが、ミカエラはそんな俺の手に自分の手を添えた。
「威勢がいいのは結構ですけど、ユニエラ達の相手をしてあげられるほど暇じゃないんですよね」
「何を……!」
「ですがせっかくご足労したんです。遊び相手を用意してあげましょう!」
ミカエラが権杖を天高く掲げたと同時に上空に巨大な魔法陣が構築されていく。それは先程ルシエラが見せたのとまるっきり同じもの。その効果も自ずと分かるというものだ。悟ったのは相手側も同じで明らかに警戒を強めている。
「デモンズゲート!」
ミカエラの力ある言葉と共に魔法陣が漆黒に輝き、直後に滑り落ちるように続々と魔物が出現しだした。そして聖地の裏手に開けた平野に続々と集結していく。その数は見る見るうちに増えていき、群れが集団に、集団が軍勢へと変化していった。
半数近くがゴブリンやトロールやオーガなどで構成された妖魔地上軍、そしてハーピィやサキュバス、ヴァンパイア等で構成された妖魔空中軍。残りの何割かが地水火風の邪精霊達や多種多様なドラゴンのようだ。
「妖魔軍、邪精霊軍、そして超竜軍の残存勢力を結集させました。さあ人造勇者と人造聖女達。果たしてこの脅威から聖都を守れますか?」
ミカエラが権杖で教会総本山の方を指し示したのを合図として魔王軍の第二陣が容赦なく襲いかかる。聖都を守る防壁や結界も郊外までは伸びていない。言わばこの一帯は完全に無防備な状態。このままでは蹂躙されるしかないだろう。
ユニエラ先輩は歯ぎしりし、ミカエラを射殺さんばかりに睨みつける。しかしミカエラはどこ吹く風。今にも口笛でも吹きそうなぐらい余裕綽々だった。更には後方を指し示して「放っておいていいんですか?」と挑発する始末だ。
「覚えていてよ……! 魔王軍を退けたら次は貴女の番なんだから!」
「それが遺言ですね。三日ぐらいは覚えておきますよ」
ユニエラ先輩は憎々しげに吐き捨てて丘を駆け下りていく。人造聖女や人造勇者達も彼女に従って聖地から去っていった。残された俺達を阻む者は誰もいなくなった。いくら魔王軍が脅威とは言え肝心の魔王を放置していいのか、と思わなくもない。
「さて、それじゃあ行きましょうか」
「行くって、どこに?」
ミカエラはユニエラ先輩達を最後まで見届けずに丘を降りていく。勿論魔王軍と合流するためではなく来た道を戻る方向、つまり教会総本山へと。念のため聞いたんだがミカエラは愚問だとばかりに「ニッコロさんは馬鹿ですねー」とか言ってきた。
「決まってるじゃないですか。ルシエラの身体を取り戻しにですよ」
こうして教会総本山へのお礼参りが決定したのだった。
□□□
聖地のある郊外から教会総本山に戻ってくるにあたり問題が一つあった。
それは聖域の奇跡ホーリーサンクチュアリが張り巡らされた境界をまた超える必要がある点だ。
しかも聖女という肩書が物を言った先ほどとは異なり、今度は魔王として対処する気満々なようだった。まだ城壁までは遠いのに教国軍が待ち受け準備を慌ただしくする様子が見て取れる。
聖都の街はようやく魔王軍の到来が伝わったらしく、避難場所や自分の家に戻ろうとする人で混乱した様子だった。行きと帰りで全く異なる情景にやはり魔王軍とはそれほど人々の平穏を脅かす存在なのだと改めて思い知った。
「それで、あの城壁は強行突破するの?」
「聖域の奇跡を飛び越えての転移は出来ませんから、そうするしかないですね。隕石魔法メテオストライクあたりで物理的に潰しますか」
「あー、そんな仰々しい真似するぐらいならうちが対処するさー。要するに聖域の奇跡と城壁を無力化すればいいんだろー?」
そんな街を貫く街道のど真ん中でティーナは背負っていた魔王弓の封印を解いた。相変わらず一切光らない漆黒の弓を携え、矢をつがえて引き絞る。心なしかティーナの周辺も光が失われているような気がした。
「ダークネスエターナル」
ティーナが放った闇そのものは昼間の聖都を飛んでいって聖域の奇跡に激突。たちまちに漆黒の闇が奇跡を飲み込んでいく。やがて闇は奇跡から染み出して城壁にも降り注がれ、警備兵や待機する騎士達が姿を消していった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる