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第四章 熾天魔王編
聖女魔王、戦鎚聖騎士に守られる
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「「オーレオラ・スプリームストリーム!」」
二人の聖女は相手めがけて光の奔流と解き放った。あまりに眩しすぎて目元を多いながらも何とか状況を見極めようと試みる。どうやら互いの発した膨大な光の激流は中間付近でぶつかり合い、揉まれ、それでも相手への流れは止まらなかった。
ミカエラが、ラファエラが、光に飲み込まれる。本来は魔王で悪魔なミカエラに聖女の極光を浴びさせるわけにはいかない。俺はとっさにミカエラの前で盾を掲げてフォースシールドを発動、更にミカエラを俺のそばに寄せるために抱きかかえた。
「動くなよミカエラ、じっとしてろよ……!」
「ニッコロさん!」
つっら! 辛いって! 河の濁流を盾一枚で防ぐのは多分こんな感じなんだろう。それでも腰に力を入れて脚を踏ん張る。盾が持っていかれそうになるのを歯を食いしばって持ち堪える。
やがて光は収まり、明るさが元に戻った。盾を前方に掲げたまま少し頭の角度を変えて前を覗き見ると、ラファエラが仰向けに倒れていた。どうやらミカエラの光の奔流をまともに食らったようだな。
オーレオラ・スプリームストリームは物理的な破壊現象は起こさない。悪意、邪気、瘴気といったこの世の害を払い、魔物や悪魔を退ける究極の光。聖女が行使出来る中でも至高の大奇跡だ。
「ありがとうございます、我が騎士。まさか聖女の極光からも守れるなんてさすがですね。アレをまともに受けていたら余もどうなっていたか分かりませんでした」
「次は発動前に妨害する戦法で行こうな。かなりしんどかったんでね」
「もちろんです。アレは一回堪能したら充分ですよ。次なんてありません」
「それにしても……どうしてラファエラがぶっ倒れてるんだ?」
その性質上悪い心を持つ盗賊や私腹を肥やす悪徳貴族ら悪人には効くけれど、聖女にまで上り詰めたラファエラには一切効果がない筈なんだが。むしろこの後シャイニングアローレイ辺りでも飛んでくるかと警戒してたぐらいだぞ。
考えられる可能性としてはラファエラにも邪悪な心が芽生えてしまっていたか、もしくは邪悪に蝕まれていたか、だな。ヴィットーリオを突き放したと聞いた時からおかしいと思ってたんだが、まさか彼女は……。
「ミカエラの見立てとしてはラファエラはどんな状況下だったんだ?」
「勇者のカリスマ性が変なふうに働いてますね。勇者らしくあればあるほど魅了されてしまうみたいです。勇者と共に歩むべき定めを持つ聖痕持ちの聖女や三聖達ならもろに影響を受けるでしょう」
「つまり、ラファエラ達は勇者にいいように操られてたのか?」
「そこまでの洗脳の効果はありませんよ。誘導された好意に乗ったのは紛れもなく彼女達の意思ですからね」
何にせよ勇者の存在がラファエラ達に悪影響を及ぼしているのは分かった。分かったからって別に憐れんだり情けをかけるつもりは無いけどな。勇者一行としてミカエラの前に現れたんだから、正気だろうが俺にとっては敵だ。
さあて、厄介だった取り巻きの聖女達が戦闘不能になったことで勇者は丸裸。既に両手は砕いているので煮るなり焼くなり好きに料理できるわけだ。人類の損失なんて知らんね。俺は俺の大切な存在を守るだけだ。
「さあて勇者さんよぉ、覚悟は良いよな?」
「ひっ、な、何が望みなんだ!? 金か? 名声か? お、女ならボクが紹介してやるよ。何ならコイツ等なんてどうだ? な、な?」
「もういいから黙れ。あの世でヴィットーリオにでも詫びてこい」
「や、やめろおおぉぉぉ!!」
俺が歩みを進めるとドナテッロは一目散に逃げ出しやがった。逃がすかと盾をぶん投げるが、ドナテッロに当たる瞬間に奴の足元に出現した魔法陣に取り込まれていってしまった。
まさか転移魔法か? と辺りを探ると、コルネリアが奴を魔法陣から引きずり出してるじゃないか。しかもラファエラ達も回収する抜け目の無さ。すかさず連中へと駆け出したが、勇者一行全員を囲って魔法陣が構築された。
「テレポーテーション!」
俺が戦鎚を振るった時にはもう遅く、ラファエラ達の姿はこの場から消えていた。
「くそっ、逃げられた……!」
「逃がしても構わないでしょう。もう人類圏で暴れる魔王軍はいませんから、彼らが強くなるきっかけはもうありませんよ」
ティーナは馬車籠の上で辺りを窺い、ダーリアも飛竜に乗って上空から見渡している。ティーナとダーリアから確認出来る範囲に勇者一行が転移した様子は無いらしい。どうやら連中、上手く逃げおおせたらしい。
しかしミカエラ曰く、転移魔法の発動を最優先にした結果転移先の指定が甘いらしく、連中がどこに飛ばされたのかは術者のコルネリアも分からないらしい。さすがに大地に埋もれたり上空はるか高くに放り出されることはないよう措置されてたが。
「別にラファエラ達が強くなってまた戦いを挑んでくるのなんて心配しちゃいない。それよりアイツ等が教会にミカエラの正体を報告したら不都合じゃないか?」
「可能性はありますが、楽観視していいと思いますよ」
「その根拠は?」
「勘といいますか歴史が証明してると言いますか、これまで溜めてきたツケは最も苦しい時に回ってくるものですからね」
ほう、なるほど。ならラファエラ達が転移した先が無人島だったり洞窟の奥底って可能性もあるわけだな。いやあ、もしそうなったら是非その時のサバイバル生活を語って聞かせてほしいものだ。
「その程度で済めば可愛いですけれど」
「随分と意味深に言うが、確信があるのか?」
「はい。一度勇者一行として転がり落ち始めたんです。もう立ち直れませんよ。ラファエラ達に訪れるのは栄光ではなく……」
――破滅です。
そう語って微笑を浮かべたミカエラは魔王らしくとても妖艶だった。
二人の聖女は相手めがけて光の奔流と解き放った。あまりに眩しすぎて目元を多いながらも何とか状況を見極めようと試みる。どうやら互いの発した膨大な光の激流は中間付近でぶつかり合い、揉まれ、それでも相手への流れは止まらなかった。
ミカエラが、ラファエラが、光に飲み込まれる。本来は魔王で悪魔なミカエラに聖女の極光を浴びさせるわけにはいかない。俺はとっさにミカエラの前で盾を掲げてフォースシールドを発動、更にミカエラを俺のそばに寄せるために抱きかかえた。
「動くなよミカエラ、じっとしてろよ……!」
「ニッコロさん!」
つっら! 辛いって! 河の濁流を盾一枚で防ぐのは多分こんな感じなんだろう。それでも腰に力を入れて脚を踏ん張る。盾が持っていかれそうになるのを歯を食いしばって持ち堪える。
やがて光は収まり、明るさが元に戻った。盾を前方に掲げたまま少し頭の角度を変えて前を覗き見ると、ラファエラが仰向けに倒れていた。どうやらミカエラの光の奔流をまともに食らったようだな。
オーレオラ・スプリームストリームは物理的な破壊現象は起こさない。悪意、邪気、瘴気といったこの世の害を払い、魔物や悪魔を退ける究極の光。聖女が行使出来る中でも至高の大奇跡だ。
「ありがとうございます、我が騎士。まさか聖女の極光からも守れるなんてさすがですね。アレをまともに受けていたら余もどうなっていたか分かりませんでした」
「次は発動前に妨害する戦法で行こうな。かなりしんどかったんでね」
「もちろんです。アレは一回堪能したら充分ですよ。次なんてありません」
「それにしても……どうしてラファエラがぶっ倒れてるんだ?」
その性質上悪い心を持つ盗賊や私腹を肥やす悪徳貴族ら悪人には効くけれど、聖女にまで上り詰めたラファエラには一切効果がない筈なんだが。むしろこの後シャイニングアローレイ辺りでも飛んでくるかと警戒してたぐらいだぞ。
考えられる可能性としてはラファエラにも邪悪な心が芽生えてしまっていたか、もしくは邪悪に蝕まれていたか、だな。ヴィットーリオを突き放したと聞いた時からおかしいと思ってたんだが、まさか彼女は……。
「ミカエラの見立てとしてはラファエラはどんな状況下だったんだ?」
「勇者のカリスマ性が変なふうに働いてますね。勇者らしくあればあるほど魅了されてしまうみたいです。勇者と共に歩むべき定めを持つ聖痕持ちの聖女や三聖達ならもろに影響を受けるでしょう」
「つまり、ラファエラ達は勇者にいいように操られてたのか?」
「そこまでの洗脳の効果はありませんよ。誘導された好意に乗ったのは紛れもなく彼女達の意思ですからね」
何にせよ勇者の存在がラファエラ達に悪影響を及ぼしているのは分かった。分かったからって別に憐れんだり情けをかけるつもりは無いけどな。勇者一行としてミカエラの前に現れたんだから、正気だろうが俺にとっては敵だ。
さあて、厄介だった取り巻きの聖女達が戦闘不能になったことで勇者は丸裸。既に両手は砕いているので煮るなり焼くなり好きに料理できるわけだ。人類の損失なんて知らんね。俺は俺の大切な存在を守るだけだ。
「さあて勇者さんよぉ、覚悟は良いよな?」
「ひっ、な、何が望みなんだ!? 金か? 名声か? お、女ならボクが紹介してやるよ。何ならコイツ等なんてどうだ? な、な?」
「もういいから黙れ。あの世でヴィットーリオにでも詫びてこい」
「や、やめろおおぉぉぉ!!」
俺が歩みを進めるとドナテッロは一目散に逃げ出しやがった。逃がすかと盾をぶん投げるが、ドナテッロに当たる瞬間に奴の足元に出現した魔法陣に取り込まれていってしまった。
まさか転移魔法か? と辺りを探ると、コルネリアが奴を魔法陣から引きずり出してるじゃないか。しかもラファエラ達も回収する抜け目の無さ。すかさず連中へと駆け出したが、勇者一行全員を囲って魔法陣が構築された。
「テレポーテーション!」
俺が戦鎚を振るった時にはもう遅く、ラファエラ達の姿はこの場から消えていた。
「くそっ、逃げられた……!」
「逃がしても構わないでしょう。もう人類圏で暴れる魔王軍はいませんから、彼らが強くなるきっかけはもうありませんよ」
ティーナは馬車籠の上で辺りを窺い、ダーリアも飛竜に乗って上空から見渡している。ティーナとダーリアから確認出来る範囲に勇者一行が転移した様子は無いらしい。どうやら連中、上手く逃げおおせたらしい。
しかしミカエラ曰く、転移魔法の発動を最優先にした結果転移先の指定が甘いらしく、連中がどこに飛ばされたのかは術者のコルネリアも分からないらしい。さすがに大地に埋もれたり上空はるか高くに放り出されることはないよう措置されてたが。
「別にラファエラ達が強くなってまた戦いを挑んでくるのなんて心配しちゃいない。それよりアイツ等が教会にミカエラの正体を報告したら不都合じゃないか?」
「可能性はありますが、楽観視していいと思いますよ」
「その根拠は?」
「勘といいますか歴史が証明してると言いますか、これまで溜めてきたツケは最も苦しい時に回ってくるものですからね」
ほう、なるほど。ならラファエラ達が転移した先が無人島だったり洞窟の奥底って可能性もあるわけだな。いやあ、もしそうなったら是非その時のサバイバル生活を語って聞かせてほしいものだ。
「その程度で済めば可愛いですけれど」
「随分と意味深に言うが、確信があるのか?」
「はい。一度勇者一行として転がり落ち始めたんです。もう立ち直れませんよ。ラファエラ達に訪れるのは栄光ではなく……」
――破滅です。
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