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第三章 幻獣魔王編
戦鎚聖騎士、地方都市防衛戦に巻き込まれる
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アレから俺達は幾つもの町を経て次の地方都市にやってきた。
旅の道中、二回ほどドラゴン部隊の襲来を受けた。いずれもそこまで被害が出ずに対処出来たんだが、その度に遅れてダーリア達の部隊がやってきた。彼女曰く、彼女達の担当空域は相当広いらしく、飛竜でも一日で移動出来ない範囲を任されてるらしい。
勿論大きな町に基地はあるのだが、彼らの任務は野生魔物の駆除や治安維持や国境警備。魔王軍に対処出来るほど熟練ではないそうだ。なのでダーリア達が遠出して攻め入った魔王軍のドラゴン共に対処してるんだとか。
「凄いな。ドワーフの竜騎士ってみんなそんななのか?」
「まさか! 凄いのは姫様だけですよ! 他の将軍は軒並みボンクラ揃いです!」
「おかげで俺達は無能共の尻拭いに駆り出される始末。ああ、くそ! もっと頻繁に酒が飲みたい!」
「魔王軍の侵略を他人事のように思ってるんだろうな。いっぺん痛い目見ないと分からないんだろ」
「ちょっと貴方達! 喋ってないで手を動かしなさいよ!」
もっとも、当のダーリア率いる竜騎士の皆さんは不満たらたらなようで。ちょっと質問しただけで大量の文句が帰ってきた。すぐさま隊長の雷が落ちてきたのは御愛嬌だ。俺まで被害被ったのは解せないけどな。
しかし、次の地方都市に移ったことで俺達はようやくダーリアの担当地域の外に出たわけだな。逆を言えば魔王軍に俺達が襲われて大苦戦したとして、ダーリア率いる竜騎士部隊が速やかに現場に現れて助けてくれる展開は望めないだろう。
「では予定通りこの都市で二泊します。今日は教会や冒険者ギルドへの報告、明日は買い出し、明後日の早朝には出発です」
「異議なし。じゃあ馬車はちょっとうちが使うぞ。ランドドラゴン共の素材を冒険者ギルドに納めてくる」
「僕は先に宿に行って荷物を運んでおくよ。部屋割りはいつものでいいよね」
「では余は我が騎士と共に教会へ向かいます。決めた夕食の時間になったら宿の前に集合しましょう」
地方都市に着いたのは昼と夕方ぐらいの時刻。ちょうど仕事終わりなようで工房からドワーフ達が次々と退勤している。ここの基地を拠点にする竜騎士部隊も哨戒を終えて帰還してくるのを上空に見た。
「あれ?」
ドヴェルグ首長国連邦に入ってからダーリア率いる竜騎士部隊としか出くわしていなかったので初めて別部隊を見ることになるんだが、隊列が乱れてるように見えるな。バラバラではないんだが揃ってもいない。
「なんつーか、だらしねえな」
「こっちがだらしないんじゃなくてダーリア達が抜きん出てるんじゃないですか?」
「国境沿いと内側の違いかー。こりゃあ確かに文句も出るわな」
「とは言え、確かに魔王軍が攻め込むなら真っ先に迎え撃つのは国境警備隊ですからね。アレぐらい呑気な方が防衛が安定してる証拠じゃないですか?」
こんな感じに好き放題感想を述べあって教会にこれまでの旅路を報告し、イレーネ達と一緒に外で飯を食った。なお、ドワーフの酒に手を伸ばす者は誰もいなかったことだけは述べておこう。
翌日、早速次の旅の準備を進める俺達だったが、何やら街中が騒然とし始めた。こういう場合一番早い情報は教会か冒険者ギルドで集めるのが常套手段だが、ドワーフ圏内のここなら冒険者ギルド一択だろう。
「で、何があったんだ?」
「おおっ、ティーナ殿!」
「ティーナ様、大変なことになりました……!」
「ちょっと待ってくれ。緊急事態なのは伝わったけれど、情報を詳しく聞きたい」
早速冒険者ギルドに向かった俺達、というか白金級冒険者のティーナは冒険者やギルド職員に盛大に出迎えられた。まるで焦がれた待ち人到来って感じに。圧が凄くてさすがのティーナも思わずたじろぐ。
「それが、魔王軍の先鋒隊が一直線にここに向かってきてるようなんです!」
「は? 国境を突破されたってことか?」
「それが、今度は全てソニックスカイドラゴンで構成されているようでして……」
ソニックスカイドラゴン。確か空に生息するドラゴンの中でも速度に特化した種類だったか。何でも空を高速で飛行するために空気抵抗を出来るだけ少なくした流線型の体型をしてる、と学院の授業で習った。
「警備の竜騎士部隊はどうしたんだ? ソニックスカイドラゴン程度なら竜騎士の駆る飛竜で追いつけなくもないだろ」
この理屈がよく分からなかったんだが、幻獣魔王率いる魔王軍への対抗策として竜騎士は様々な魔道具を準備し、襲来した敵の種類に応じて換装しているらしい。この前ダーリアの部隊が見せた一斉射撃も魔道具によるものなんだとか。無論ソニックスカイドラゴンへの対処法もあるがドワーフは開示していないらしい。
そしてティーナ曰く、たかがソニックスカイドラゴンだけで構成された部隊であればドワーフの竜騎士にとっては食材が自分の方から飛び込んでくるようなもの。歴代通りの空軍の練度であれば難なく対処出来るのだそうだ。
「それが……迎え撃った守備隊は全滅しました」
「は?」
「なので防衛線を突破したソニックスカイドラゴンはこちらに向かってなおも進軍中とのことなんです!」
おいおいなんてこったい。かなり危ない展開になってるじゃないか。
旅の道中、二回ほどドラゴン部隊の襲来を受けた。いずれもそこまで被害が出ずに対処出来たんだが、その度に遅れてダーリア達の部隊がやってきた。彼女曰く、彼女達の担当空域は相当広いらしく、飛竜でも一日で移動出来ない範囲を任されてるらしい。
勿論大きな町に基地はあるのだが、彼らの任務は野生魔物の駆除や治安維持や国境警備。魔王軍に対処出来るほど熟練ではないそうだ。なのでダーリア達が遠出して攻め入った魔王軍のドラゴン共に対処してるんだとか。
「凄いな。ドワーフの竜騎士ってみんなそんななのか?」
「まさか! 凄いのは姫様だけですよ! 他の将軍は軒並みボンクラ揃いです!」
「おかげで俺達は無能共の尻拭いに駆り出される始末。ああ、くそ! もっと頻繁に酒が飲みたい!」
「魔王軍の侵略を他人事のように思ってるんだろうな。いっぺん痛い目見ないと分からないんだろ」
「ちょっと貴方達! 喋ってないで手を動かしなさいよ!」
もっとも、当のダーリア率いる竜騎士の皆さんは不満たらたらなようで。ちょっと質問しただけで大量の文句が帰ってきた。すぐさま隊長の雷が落ちてきたのは御愛嬌だ。俺まで被害被ったのは解せないけどな。
しかし、次の地方都市に移ったことで俺達はようやくダーリアの担当地域の外に出たわけだな。逆を言えば魔王軍に俺達が襲われて大苦戦したとして、ダーリア率いる竜騎士部隊が速やかに現場に現れて助けてくれる展開は望めないだろう。
「では予定通りこの都市で二泊します。今日は教会や冒険者ギルドへの報告、明日は買い出し、明後日の早朝には出発です」
「異議なし。じゃあ馬車はちょっとうちが使うぞ。ランドドラゴン共の素材を冒険者ギルドに納めてくる」
「僕は先に宿に行って荷物を運んでおくよ。部屋割りはいつものでいいよね」
「では余は我が騎士と共に教会へ向かいます。決めた夕食の時間になったら宿の前に集合しましょう」
地方都市に着いたのは昼と夕方ぐらいの時刻。ちょうど仕事終わりなようで工房からドワーフ達が次々と退勤している。ここの基地を拠点にする竜騎士部隊も哨戒を終えて帰還してくるのを上空に見た。
「あれ?」
ドヴェルグ首長国連邦に入ってからダーリア率いる竜騎士部隊としか出くわしていなかったので初めて別部隊を見ることになるんだが、隊列が乱れてるように見えるな。バラバラではないんだが揃ってもいない。
「なんつーか、だらしねえな」
「こっちがだらしないんじゃなくてダーリア達が抜きん出てるんじゃないですか?」
「国境沿いと内側の違いかー。こりゃあ確かに文句も出るわな」
「とは言え、確かに魔王軍が攻め込むなら真っ先に迎え撃つのは国境警備隊ですからね。アレぐらい呑気な方が防衛が安定してる証拠じゃないですか?」
こんな感じに好き放題感想を述べあって教会にこれまでの旅路を報告し、イレーネ達と一緒に外で飯を食った。なお、ドワーフの酒に手を伸ばす者は誰もいなかったことだけは述べておこう。
翌日、早速次の旅の準備を進める俺達だったが、何やら街中が騒然とし始めた。こういう場合一番早い情報は教会か冒険者ギルドで集めるのが常套手段だが、ドワーフ圏内のここなら冒険者ギルド一択だろう。
「で、何があったんだ?」
「おおっ、ティーナ殿!」
「ティーナ様、大変なことになりました……!」
「ちょっと待ってくれ。緊急事態なのは伝わったけれど、情報を詳しく聞きたい」
早速冒険者ギルドに向かった俺達、というか白金級冒険者のティーナは冒険者やギルド職員に盛大に出迎えられた。まるで焦がれた待ち人到来って感じに。圧が凄くてさすがのティーナも思わずたじろぐ。
「それが、魔王軍の先鋒隊が一直線にここに向かってきてるようなんです!」
「は? 国境を突破されたってことか?」
「それが、今度は全てソニックスカイドラゴンで構成されているようでして……」
ソニックスカイドラゴン。確か空に生息するドラゴンの中でも速度に特化した種類だったか。何でも空を高速で飛行するために空気抵抗を出来るだけ少なくした流線型の体型をしてる、と学院の授業で習った。
「警備の竜騎士部隊はどうしたんだ? ソニックスカイドラゴン程度なら竜騎士の駆る飛竜で追いつけなくもないだろ」
この理屈がよく分からなかったんだが、幻獣魔王率いる魔王軍への対抗策として竜騎士は様々な魔道具を準備し、襲来した敵の種類に応じて換装しているらしい。この前ダーリアの部隊が見せた一斉射撃も魔道具によるものなんだとか。無論ソニックスカイドラゴンへの対処法もあるがドワーフは開示していないらしい。
そしてティーナ曰く、たかがソニックスカイドラゴンだけで構成された部隊であればドワーフの竜騎士にとっては食材が自分の方から飛び込んでくるようなもの。歴代通りの空軍の練度であれば難なく対処出来るのだそうだ。
「それが……迎え撃った守備隊は全滅しました」
「は?」
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