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第二章 焦熱魔王編
戦鎚聖騎士、本格的な強襲を受ける
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アデリーナと闇の邪精霊は完全に一体化して自我が混ざりきっている。だからどちらのことも一人称で語る。理性が決壊してアデリーナの負の感情が剥き出しになっているのもその影響か。
そんな変わりきったかつての妹分にティーナは物悲しげな眼差しを送る。手が震えていることから激情を抑えているのは明らか。それも分からず表面だけを見て取ったアデリーナが不愉快とばかりに地団駄を踏んだ。
「アデリーナ。最後に一つだけ問うぞ。貴女がこれまで導いてきた中心地のエルフ達はどうした?」
「あぁ、彼らだったら私と同じく貴女にお礼参りをしたいそうだぞ。ブラッドエルフなんぞに救われた歴史など認めてなるものか、となぁぁ」
アデリーナの後方から闇の蠢き現れた者達、それは俺達がこれまでも相対してきたコラプテッドエルフ共だったが、エルフとしての原型を残したままで肉質や顔が変貌しており、エルフよりはゴブリンの方が近い醜悪な有り様だった。
そんな堕ちた森の住人達がアデリーナの後ろに集結してきた。その数はもはや軍と表現する他ない。中には武装してない無防備の者もおり、里で生活する者達を丸ごと従軍させたとしか考えられないな。
昨日までいた筈のエルフの都が破滅した光景が目に浮かぶようだった。
「……そうか。残念だ。せめてもの慈悲だ、この森で眠れ!」
「さあティーナ、殺してやるぞ! お前の全てを踏みにじってやるわっ!」
ティーナとアデリーナはほぼ同時に横に跳んだ。そして互いに矢の応酬が始まる。炎と氷が飛び交う攻防はやがて邪魔者に介入されないためか、示し合わせたように森の奥へと消えていく。
残された俺達の前にはコラプテッドエルフの軍勢。一応俺はミカエラを伺ってみたが、彼女は表情を変えずに顔を横に振る。やはり彼女には手の施しようがないか。なら、魔物として彼らを倒す他無いのだろう。
「気乗りはしないが、運が悪かったと思って諦めてくれよ!」
俺とイレーネが飛び出したのはほぼ同時。それでもイレーネの方が早くに堕ちたエルフへと斬りかかった。俺もすぐ後に狂気に彩られた元エルフの脳天に戦鎚を振り下ろす。頭部を砕かれた死骸は力失いその場に倒れ……る前に蹴りを入れて飛びかかろうとしてきた別の敵にぶつけた。その間に得物を横薙ぎし、敵の腹を大きくひしゃげさせた。
どうやらコイツ等は堕ちてそう時間が経っていないようで、本能に身を任せて襲ってくるだけのようだ。技術も経験も伴ってない攻めなんて何も怖くない。一体一体冷静に確実に処理していけばいい。
「エンジェリックフェザー!」
「ストーンバレット!」
俺達が取り囲まれないようにミカエラとディアマンテが飛び道具で援護する。どうもディアマンテは手から石を高速で射出しているらしい。狙いは大雑把だけどこの入れ食い状態だとある程度適当でも効果有りか。
懸念していた遠距離から俺達を狙う射手はいなかった。風を読み、相手の息吹を感じ取り、土の匂いを嗅ぎ取り、一点集中で放つエルフの射撃は狂気に染まったばかりのコイツ等には無理な芸当、とはティーナ談だったか。
「ニッコロさん! 後方からトレント達が!」
「分かってるって!」
エルフ達が一方的に蹂躙される不利にしびれを切らしたのか、紫色したトレント達がおっかない顔をして俺達に向かってくる。幹から映えた根っこを触手みたいに動かして高速移動するのは見ていてとても不気味で気持ちが悪い。
そんな猪突猛進で来られても馬鹿正直に真正面から受け止めますかっての! 俺は一旦飛び退いてエルフ共から距離を置く。そして戦鎚を両手持ちに切り替え、大きく振りかぶり、思いっきり地面に叩きつけた。
「グランドクラック!」
闘気を伝達させた地面が揺れ、蠢き、亀裂が入り、やがて地割れを引き起こす。大地は前方に向けて裂け続け、やがてはエルフ達、そしてトレント共も飲み込んでいった。そして裂け目は役目を終えたように再び閉じていく。
あれ、これはあくまで地面をひび割れ隆起させ、相手がそれに蹴躓いて大規模に転倒する効果が見込める闘気術だった筈。こんな大きな裂け目に目標を落とすほどの効果は無い筈なんだが……。
「ミカエラ、何かやったか?」
「え、違います! ディアマンテが勝手に!」
「げぎゃ!? ぞれはあまりに酷ずぎまず!」
俺がジト目で振り返ると、ミカエラがわざとらしく慌てふためきながらディアマンテを突き出してきた。絶対面白がってるだろ。
「ミカエラが直々にやったにしろディアマンテに命じたにしろ、やるなら「援護する」の一言ぐらい言えって! 驚くだろ……!」
「ニッコロさんなら言わなくても分かってくると信じてました!」
しかしエルフ達を生き埋めには出来たがトレントの巨体を丸呑みとはいかなかったようだ。地割れ後に下半身(と一応表現しておく)が挟まれて身動きが取れず、何とか抜け出ようともがいていた。
無論、そんな無防備な敵を見逃すイレーネではない。彼女が疾風のごとく通り抜けるとトレント共の身体がブロック状にバラバラに斬られていった。更には土の中に沈んだ下半身を剣で突いて浄化の炎を流し込む徹底ぶりだ。
とまあ奮戦してるんだが、コラプテッドエルフとトレントはまだまだうじゃうじゃ沸いてくる。しばらくは戦いが続きそうだ。俺は気を引き締め直して敵に向かって突撃した。
そんな変わりきったかつての妹分にティーナは物悲しげな眼差しを送る。手が震えていることから激情を抑えているのは明らか。それも分からず表面だけを見て取ったアデリーナが不愉快とばかりに地団駄を踏んだ。
「アデリーナ。最後に一つだけ問うぞ。貴女がこれまで導いてきた中心地のエルフ達はどうした?」
「あぁ、彼らだったら私と同じく貴女にお礼参りをしたいそうだぞ。ブラッドエルフなんぞに救われた歴史など認めてなるものか、となぁぁ」
アデリーナの後方から闇の蠢き現れた者達、それは俺達がこれまでも相対してきたコラプテッドエルフ共だったが、エルフとしての原型を残したままで肉質や顔が変貌しており、エルフよりはゴブリンの方が近い醜悪な有り様だった。
そんな堕ちた森の住人達がアデリーナの後ろに集結してきた。その数はもはや軍と表現する他ない。中には武装してない無防備の者もおり、里で生活する者達を丸ごと従軍させたとしか考えられないな。
昨日までいた筈のエルフの都が破滅した光景が目に浮かぶようだった。
「……そうか。残念だ。せめてもの慈悲だ、この森で眠れ!」
「さあティーナ、殺してやるぞ! お前の全てを踏みにじってやるわっ!」
ティーナとアデリーナはほぼ同時に横に跳んだ。そして互いに矢の応酬が始まる。炎と氷が飛び交う攻防はやがて邪魔者に介入されないためか、示し合わせたように森の奥へと消えていく。
残された俺達の前にはコラプテッドエルフの軍勢。一応俺はミカエラを伺ってみたが、彼女は表情を変えずに顔を横に振る。やはり彼女には手の施しようがないか。なら、魔物として彼らを倒す他無いのだろう。
「気乗りはしないが、運が悪かったと思って諦めてくれよ!」
俺とイレーネが飛び出したのはほぼ同時。それでもイレーネの方が早くに堕ちたエルフへと斬りかかった。俺もすぐ後に狂気に彩られた元エルフの脳天に戦鎚を振り下ろす。頭部を砕かれた死骸は力失いその場に倒れ……る前に蹴りを入れて飛びかかろうとしてきた別の敵にぶつけた。その間に得物を横薙ぎし、敵の腹を大きくひしゃげさせた。
どうやらコイツ等は堕ちてそう時間が経っていないようで、本能に身を任せて襲ってくるだけのようだ。技術も経験も伴ってない攻めなんて何も怖くない。一体一体冷静に確実に処理していけばいい。
「エンジェリックフェザー!」
「ストーンバレット!」
俺達が取り囲まれないようにミカエラとディアマンテが飛び道具で援護する。どうもディアマンテは手から石を高速で射出しているらしい。狙いは大雑把だけどこの入れ食い状態だとある程度適当でも効果有りか。
懸念していた遠距離から俺達を狙う射手はいなかった。風を読み、相手の息吹を感じ取り、土の匂いを嗅ぎ取り、一点集中で放つエルフの射撃は狂気に染まったばかりのコイツ等には無理な芸当、とはティーナ談だったか。
「ニッコロさん! 後方からトレント達が!」
「分かってるって!」
エルフ達が一方的に蹂躙される不利にしびれを切らしたのか、紫色したトレント達がおっかない顔をして俺達に向かってくる。幹から映えた根っこを触手みたいに動かして高速移動するのは見ていてとても不気味で気持ちが悪い。
そんな猪突猛進で来られても馬鹿正直に真正面から受け止めますかっての! 俺は一旦飛び退いてエルフ共から距離を置く。そして戦鎚を両手持ちに切り替え、大きく振りかぶり、思いっきり地面に叩きつけた。
「グランドクラック!」
闘気を伝達させた地面が揺れ、蠢き、亀裂が入り、やがて地割れを引き起こす。大地は前方に向けて裂け続け、やがてはエルフ達、そしてトレント共も飲み込んでいった。そして裂け目は役目を終えたように再び閉じていく。
あれ、これはあくまで地面をひび割れ隆起させ、相手がそれに蹴躓いて大規模に転倒する効果が見込める闘気術だった筈。こんな大きな裂け目に目標を落とすほどの効果は無い筈なんだが……。
「ミカエラ、何かやったか?」
「え、違います! ディアマンテが勝手に!」
「げぎゃ!? ぞれはあまりに酷ずぎまず!」
俺がジト目で振り返ると、ミカエラがわざとらしく慌てふためきながらディアマンテを突き出してきた。絶対面白がってるだろ。
「ミカエラが直々にやったにしろディアマンテに命じたにしろ、やるなら「援護する」の一言ぐらい言えって! 驚くだろ……!」
「ニッコロさんなら言わなくても分かってくると信じてました!」
しかしエルフ達を生き埋めには出来たがトレントの巨体を丸呑みとはいかなかったようだ。地割れ後に下半身(と一応表現しておく)が挟まれて身動きが取れず、何とか抜け出ようともがいていた。
無論、そんな無防備な敵を見逃すイレーネではない。彼女が疾風のごとく通り抜けるとトレント共の身体がブロック状にバラバラに斬られていった。更には土の中に沈んだ下半身を剣で突いて浄化の炎を流し込む徹底ぶりだ。
とまあ奮戦してるんだが、コラプテッドエルフとトレントはまだまだうじゃうじゃ沸いてくる。しばらくは戦いが続きそうだ。俺は気を引き締め直して敵に向かって突撃した。
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