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第一章 勇者魔王編
【過去話】戦鎚聖騎士、無事聖騎士になる(前)
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学院生活も最上級生になると同級生の数は目に見えて減っていた。早々と見切りをつけて中退や転校をする者、もう一年修業して再起を図る落第生、神官や女神官など別の聖職者への配属が決まった早期卒業生など、理由は多岐に渡る。
この頃になればもう足を引っ張れば評価されやすくなる、なんて線は超えている。そういった輩は早々にふるいにかけられて厳重注意を受けている。いかに能力が高く、いかに献身的で、いかに人々を愛しているか、につきてくるのだ。
俺は常にミカエラと組んで課題に取り組んでいたが、ラファエラ達と協力する回数は減った。特に実技は二人だけで挑んでばっかだったな。これは彼女達と一緒だとあまりに楽勝すぎて自分のためにならないからだ。
「スクラップフィストぉっ!」
俺が振るった戦鎚がストーンゴーレムを粉砕し、ガラクタへと変えた。
「セイクリッドエッジ!」
ミカエラの放った光の刃がストーンゴーレムを両断、ただの石と岩になって崩れた。
「ふう、これで全滅かな」
「ちょっと待ってくださいね。……はい、確かに瘴気や魔力で動く物体はもう無いですから、全滅と考えていいでしょう」
「お疲れさん。いつもながら援護助かる」
「我が騎士もお疲れ様でした! あ、余のことはもっと褒めて下さい」
荒野を後にした俺達は近くの町に帰還、討伐達成報告を行った。
「ありがとうございます、未来の聖女様!」
「これでわたし達も安心して生活出来ます」
「ありがとう、お姉ちゃんたち!」
現役聖女の人数は指で数えられる程度。当然人類の生活圏どころか教国連合内の諸都市にも常駐させられない。派遣するにも限度があるし、かと言っていちいち魔物が発生したからと軍や騎士団を出動させるのも追いつかないのが現状だ。
なので傭兵や自警団、冒険者の出番になるわけだが、強力な個体に対処できる実力者はそう多くない。自然と依頼料や報酬は跳ね上がるわけで、このように明日食べるものに困るような貧しい村は何とか貯蓄から捻出するなど、苦労を強いられる。
聖女候補者の実技課題になる魔物の討伐は、そうした者達への救済でもあった。
「結構戦って厳しい相手が増えてきたなぁ」
「でも正直言っちゃうと、どんな魔物相手でも戦えなくもないんですよね。課題として割り振る学院の調整が上手いって言いますかー」
「災害級の強大な魔物は本物の聖女が対処するんだろうな。俺達は俺達のやることをこなすまでさ」
「帰りがてらに別の討伐課題をこなせばもっと経験を積めますね」
俺達はこんな感じに歯応えのある魔物の討伐を数多くこなすことで点数を稼いだ。命をかけた死闘、みたいなのは無かったけれど、それでも油断や慢心が命取りになる危険な状況下での戦いからは多くを学べた。
たまにちょっと背伸びして大型の魔物を討伐しないかってミカエラを誘ったことがあったんだが、拒否された。彼女曰く、奇跡を使う回数があまり変わらないから苦労するだけで割に合わない、だそうだ。
そんな俺達が敬遠する難題をも引き受ける奴らがいた。
言わずもがな、ラファエラとヴィットーリオのコンビだった。
「おい、ラファエラとヴィットーリオ、今度はレッドドラゴンを討伐したらしいぜ」
「本当か!? 一度現れたら三つか四つ町が焼き払われるって言われる、あの?」
「さすがに冒険者の力も借りたらしいけれどな。俺ちょっと見たことあるけど、どの娘も可愛かったぜ」
「はぁ? 男はヴィットーリオだけかよ。アイツもげねぇかなぁ」
そんなしょうもない話が学院の中でされていたことについてはさておき、さすがのラファエラ達も二人だけで災害級の魔物を討伐するのは無理。なので彼女達は度々冒険者の力を借りたわけだが……毎度同じ面子だったのだ。
この頃になればもう足を引っ張れば評価されやすくなる、なんて線は超えている。そういった輩は早々にふるいにかけられて厳重注意を受けている。いかに能力が高く、いかに献身的で、いかに人々を愛しているか、につきてくるのだ。
俺は常にミカエラと組んで課題に取り組んでいたが、ラファエラ達と協力する回数は減った。特に実技は二人だけで挑んでばっかだったな。これは彼女達と一緒だとあまりに楽勝すぎて自分のためにならないからだ。
「スクラップフィストぉっ!」
俺が振るった戦鎚がストーンゴーレムを粉砕し、ガラクタへと変えた。
「セイクリッドエッジ!」
ミカエラの放った光の刃がストーンゴーレムを両断、ただの石と岩になって崩れた。
「ふう、これで全滅かな」
「ちょっと待ってくださいね。……はい、確かに瘴気や魔力で動く物体はもう無いですから、全滅と考えていいでしょう」
「お疲れさん。いつもながら援護助かる」
「我が騎士もお疲れ様でした! あ、余のことはもっと褒めて下さい」
荒野を後にした俺達は近くの町に帰還、討伐達成報告を行った。
「ありがとうございます、未来の聖女様!」
「これでわたし達も安心して生活出来ます」
「ありがとう、お姉ちゃんたち!」
現役聖女の人数は指で数えられる程度。当然人類の生活圏どころか教国連合内の諸都市にも常駐させられない。派遣するにも限度があるし、かと言っていちいち魔物が発生したからと軍や騎士団を出動させるのも追いつかないのが現状だ。
なので傭兵や自警団、冒険者の出番になるわけだが、強力な個体に対処できる実力者はそう多くない。自然と依頼料や報酬は跳ね上がるわけで、このように明日食べるものに困るような貧しい村は何とか貯蓄から捻出するなど、苦労を強いられる。
聖女候補者の実技課題になる魔物の討伐は、そうした者達への救済でもあった。
「結構戦って厳しい相手が増えてきたなぁ」
「でも正直言っちゃうと、どんな魔物相手でも戦えなくもないんですよね。課題として割り振る学院の調整が上手いって言いますかー」
「災害級の強大な魔物は本物の聖女が対処するんだろうな。俺達は俺達のやることをこなすまでさ」
「帰りがてらに別の討伐課題をこなせばもっと経験を積めますね」
俺達はこんな感じに歯応えのある魔物の討伐を数多くこなすことで点数を稼いだ。命をかけた死闘、みたいなのは無かったけれど、それでも油断や慢心が命取りになる危険な状況下での戦いからは多くを学べた。
たまにちょっと背伸びして大型の魔物を討伐しないかってミカエラを誘ったことがあったんだが、拒否された。彼女曰く、奇跡を使う回数があまり変わらないから苦労するだけで割に合わない、だそうだ。
そんな俺達が敬遠する難題をも引き受ける奴らがいた。
言わずもがな、ラファエラとヴィットーリオのコンビだった。
「おい、ラファエラとヴィットーリオ、今度はレッドドラゴンを討伐したらしいぜ」
「本当か!? 一度現れたら三つか四つ町が焼き払われるって言われる、あの?」
「さすがに冒険者の力も借りたらしいけれどな。俺ちょっと見たことあるけど、どの娘も可愛かったぜ」
「はぁ? 男はヴィットーリオだけかよ。アイツもげねぇかなぁ」
そんなしょうもない話が学院の中でされていたことについてはさておき、さすがのラファエラ達も二人だけで災害級の魔物を討伐するのは無理。なので彼女達は度々冒険者の力を借りたわけだが……毎度同じ面子だったのだ。
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