41 / 209
第一章 勇者魔王編
戦鎚聖騎士、妖魔を仕留める
しおりを挟む
「お前達はここでグリセルダ達を抑えておけ! その間に私は本懐を成す! 何人かは私に続け!」
「「「お任せください、ヴェロニカ様」」」
クィーンラミアの姿になったヴェロニカは店の奥へとその身体を滑り込ませた。逃がすまいとグリセルダ達が向かおうとするも、他のラミア達に阻まれて足を止めた。さすがに襲わないのはラミア達にとってグリセルダも一応上司だからか。
「貴女達。こんな騒動を起こしてただで済むと思っているのですか?」
「残念ですよ。軍長は魔王様と昔から親しかったですから、いつかはこうなると思っていました」
「つまり、退くつもりは無いのね?」
「くどい! 正統なる後継者こそが我々の主に相応しい! 何故軍長はそれが分からないのですか……!」
グリセルダの呼びかけはおそらく最後通告か。しかしラミア達はヴェロニカと同じく今の魔王を魔王と認めないようだ。話は平行線、説得は無駄だと判断したグリセルダの目が据わった。
「そう、なら仕方がないわね。ここでわたくし共が――」
「あー駄目です駄目駄目! こんな町中で騒ぎ起こさないでくださいよ!」
妖魔同士の戦いが始まろうとする間際、成り行きを見守っていたミカエラが大声を張り上げた。グリセルダは驚いた様子で慌てて頭を垂れ、ラミア共は完全に見くびった感じに鼻で笑ってきた。
「何だ人間。邪魔をするならお前から食らってやろうか?」
「いいですかグリセルダ。聖地で暴れた魔物は退治しなきゃいけません。絶対に正体は現しちゃ駄目ですからね」
「成程……畏まりました、我が主」
侮るラミア達を完全に無視したミカエラの呼びかけに、グリセルダは慇懃に優雅に、そして上品にお辞儀をした。メイド達、多分グリセルダが従えた妖魔なんだろう、は困惑したようだが、グリセルダに続いてミカエラに頭を下げた。
「き、貴様、一体何者だ……!?」
「通りすがりの聖女です!」
ただ事ならないと感じ取ったラミアが狼狽えながら発した問いかけに、ミカエラは待ってましたとばかりに言い放つ。
「フォトンアームド!」
ミカエラは権杖を上へと掲げる。すると権杖から光の粒子が溢れ出てミカエラ、そして側にいた俺を包みこんでいく。俺達が来ていた市民服は光となって消え、代わりに聖女の祭服、聖騎士の全身鎧が形作られていった。
無力な一般庶民として生活する勇者が暴力を行使する敵の前に立ちはだかって、光の武具を身に纏う変身、格好良く名乗りを上げる。そんな子供向けの芝居に感銘を受けたミカエラは武装の奇跡を頑張って習得した。
それがフォトンアームド。別の場所にしまっていた武具と今来ている服を入れ替える効果があるらしい。街の中で面倒事に巻き込まれてもこれで対処できる、とミカエラは自慢気に説明してくれたっけ。
おかげで万全の状態で戦える。
「聖女ミカエラ、参上ー!」
「その護衛聖騎士ニッコロ、推参!」
だからってこの名乗りは必要ないんじゃないかなぁ、と思わなくもない。
ふ、決まった。とドヤ顔なミカエラが可愛いから付き合ってるけれど。
で、名乗り口上を終えてすぐに俺は敵に突撃する。完全に不意をついたからかラミアの反応は遅く、とっさに回避行動を取ろうとする頃には俺は大蛇になった下半身へ戦鎚を振り下ろしていた。
肉を骨ごと粉砕する生々しい感触と共に鮮血が飛び散った。絶叫をあげるラミアにとどめを刺そうと戦鎚を振り上げようとするが、その前にラミアへと背後から次々に矢が突き刺さる。
「マジックアロー」
それがグリセルダ達が放った魔法の矢だと気付いた頃にはラミアは息絶え、その巨体を床へと沈めていく。
他のラミアやスキュラ、スピンクスといった妖魔達は仲間の敵討ちとばかりに殺意を漲らせて俺へと襲いかかってくる。ラミアが俺に巻き付こうと素早く動くがここは屋内。障害物を上手く使ってかいくぐる。直後にスピンクスが俺を蹴り殺そうと襲いかかるが、盾でいなしてラミアの方へ投げてやった。
俺が妖魔共と正面から戦っている間もグリセルダ達が攻撃魔法を仕掛ける。魔法の矢を放つマジックアロー、氷の弾を放つフリーズブリット、風の刃を放つウィンドカッターなど。全てが初級魔法ながらも複数名が精度良く連射するならそれは弾幕と化す。次々と妖魔達は仕留められていった。
「おのれ、小癪な……!」
ラミアの一体がミカエラへと飛びかかるが、そんなのさせるわけねえだろ!
一気に踏み込んだ俺はラミアの背中を足場に上半身に向けて疾走、奴が振り落とそうと身体を震わせる直前に跳躍した。そして全身のバネを最大限活用して渾身の一撃をラミアの頭に叩き込んでやった。
「さすがです、我が騎士」
「ま、これぐらいなら騒ぐほどでもねえな」
仕留めたラミアの飛び散る血肉を避けたミカエラは歯を見せて笑ってきた。俺も手を振って答え、次の獲物に向かっていった。
「「「お任せください、ヴェロニカ様」」」
クィーンラミアの姿になったヴェロニカは店の奥へとその身体を滑り込ませた。逃がすまいとグリセルダ達が向かおうとするも、他のラミア達に阻まれて足を止めた。さすがに襲わないのはラミア達にとってグリセルダも一応上司だからか。
「貴女達。こんな騒動を起こしてただで済むと思っているのですか?」
「残念ですよ。軍長は魔王様と昔から親しかったですから、いつかはこうなると思っていました」
「つまり、退くつもりは無いのね?」
「くどい! 正統なる後継者こそが我々の主に相応しい! 何故軍長はそれが分からないのですか……!」
グリセルダの呼びかけはおそらく最後通告か。しかしラミア達はヴェロニカと同じく今の魔王を魔王と認めないようだ。話は平行線、説得は無駄だと判断したグリセルダの目が据わった。
「そう、なら仕方がないわね。ここでわたくし共が――」
「あー駄目です駄目駄目! こんな町中で騒ぎ起こさないでくださいよ!」
妖魔同士の戦いが始まろうとする間際、成り行きを見守っていたミカエラが大声を張り上げた。グリセルダは驚いた様子で慌てて頭を垂れ、ラミア共は完全に見くびった感じに鼻で笑ってきた。
「何だ人間。邪魔をするならお前から食らってやろうか?」
「いいですかグリセルダ。聖地で暴れた魔物は退治しなきゃいけません。絶対に正体は現しちゃ駄目ですからね」
「成程……畏まりました、我が主」
侮るラミア達を完全に無視したミカエラの呼びかけに、グリセルダは慇懃に優雅に、そして上品にお辞儀をした。メイド達、多分グリセルダが従えた妖魔なんだろう、は困惑したようだが、グリセルダに続いてミカエラに頭を下げた。
「き、貴様、一体何者だ……!?」
「通りすがりの聖女です!」
ただ事ならないと感じ取ったラミアが狼狽えながら発した問いかけに、ミカエラは待ってましたとばかりに言い放つ。
「フォトンアームド!」
ミカエラは権杖を上へと掲げる。すると権杖から光の粒子が溢れ出てミカエラ、そして側にいた俺を包みこんでいく。俺達が来ていた市民服は光となって消え、代わりに聖女の祭服、聖騎士の全身鎧が形作られていった。
無力な一般庶民として生活する勇者が暴力を行使する敵の前に立ちはだかって、光の武具を身に纏う変身、格好良く名乗りを上げる。そんな子供向けの芝居に感銘を受けたミカエラは武装の奇跡を頑張って習得した。
それがフォトンアームド。別の場所にしまっていた武具と今来ている服を入れ替える効果があるらしい。街の中で面倒事に巻き込まれてもこれで対処できる、とミカエラは自慢気に説明してくれたっけ。
おかげで万全の状態で戦える。
「聖女ミカエラ、参上ー!」
「その護衛聖騎士ニッコロ、推参!」
だからってこの名乗りは必要ないんじゃないかなぁ、と思わなくもない。
ふ、決まった。とドヤ顔なミカエラが可愛いから付き合ってるけれど。
で、名乗り口上を終えてすぐに俺は敵に突撃する。完全に不意をついたからかラミアの反応は遅く、とっさに回避行動を取ろうとする頃には俺は大蛇になった下半身へ戦鎚を振り下ろしていた。
肉を骨ごと粉砕する生々しい感触と共に鮮血が飛び散った。絶叫をあげるラミアにとどめを刺そうと戦鎚を振り上げようとするが、その前にラミアへと背後から次々に矢が突き刺さる。
「マジックアロー」
それがグリセルダ達が放った魔法の矢だと気付いた頃にはラミアは息絶え、その巨体を床へと沈めていく。
他のラミアやスキュラ、スピンクスといった妖魔達は仲間の敵討ちとばかりに殺意を漲らせて俺へと襲いかかってくる。ラミアが俺に巻き付こうと素早く動くがここは屋内。障害物を上手く使ってかいくぐる。直後にスピンクスが俺を蹴り殺そうと襲いかかるが、盾でいなしてラミアの方へ投げてやった。
俺が妖魔共と正面から戦っている間もグリセルダ達が攻撃魔法を仕掛ける。魔法の矢を放つマジックアロー、氷の弾を放つフリーズブリット、風の刃を放つウィンドカッターなど。全てが初級魔法ながらも複数名が精度良く連射するならそれは弾幕と化す。次々と妖魔達は仕留められていった。
「おのれ、小癪な……!」
ラミアの一体がミカエラへと飛びかかるが、そんなのさせるわけねえだろ!
一気に踏み込んだ俺はラミアの背中を足場に上半身に向けて疾走、奴が振り落とそうと身体を震わせる直前に跳躍した。そして全身のバネを最大限活用して渾身の一撃をラミアの頭に叩き込んでやった。
「さすがです、我が騎士」
「ま、これぐらいなら騒ぐほどでもねえな」
仕留めたラミアの飛び散る血肉を避けたミカエラは歯を見せて笑ってきた。俺も手を振って答え、次の獲物に向かっていった。
22
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる