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Season 2 キャサリン・ランカスター
処刑まであと16日(後)
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「おい、分かっただろ? 帰ろうぜ。アイツには近づかねえ方がいいって」
「……いや、もうちょっと接近してみる」
「正気か? 正気だよな? 止めた方がいいのか?」
「この程度の情報でお嬢様の助けにはならねえよ。もっと踏み込まねえとな」
「っておい! ちょっと待てって! あーもう、知らねえからな!」
意を決してジョージは炊き出しの列に並ぶ。リーヴァーは何人か挟んだ後ろに並んだ。魅了、なのかも分かっていないが、の発動条件が分からない以上、まずは時間差や距離が関係しているのでは、と考えたからだ。
シャーロット以外にも教会のシスター達が炊き出しに従事しており、誰に配ってほしいか市民は選べないようだ。その他のシスターに配られた者はあからさまにがっかりしており、シャーロットに手渡しされた者は歓喜に打ち震えているようだ。
ジョージの番が回ってきた。幸か不幸か、ジョージはシャーロットに配られることとなり、彼女の前に足を運ぶ。黒パンと少し肉と野菜入り塩スープを準備し、シャーロットはジョージと目を合わせた。
「あら?」
意外な反応が返ってきた。他の者達には「神様からの恵みです。主のお導きがあらんことを」などと一言送ってきていた。しかしジョージを目にしたシャーロットは少し考えこみ、やがて微笑んできた。
「ジョージさんですね。お勤めご苦労さまです」
「ッ――!?」
口から心臓が飛び出るほどに驚愕した。
大声で叫ばなかった自分を褒めたいぐらいだった。
それだけジョージにとっては衝撃だった。
名乗った覚えはない。それどころか顔を合わせたことすら無かった。そして主のキャサリンを初めとしてジョージについて話題に出たことも無かったはずだ。なのにどうして目の前の娘は自分を知っているのか?
「キャサリン様はお元気ですか? あの方にはきっと慈悲があることでしょう」
バレている。自分の正体がバレてる。
恐怖で足がすくんで動かなくなったジョージの手をシャーロットは取った。そして黒パンと塩スープの器を渡す。シャーロットの手は奉仕活動のためか思っていたより荒れていて、しかし柔らかかった。
シャーロットの目がジョージに向けられて離さない。その瞳を見つめると自分が吸い込まれそうに錯覚してしまう。高鳴る心臓の鼓動が耳にまで聞こえてきてうるさい。いつの間にか息遣いも乱れている。
「食事はあちらで取ってください。器は壊さないようにそちらの桶に戻してくださいね。この後の活動ですけど、今日は道の清掃ですから、協力お願いします」
いつの間にかシャーロットは起立の姿勢に戻っていた。そして手の仕草でさり気なくどくように促してくる。ジョージは逃げるようにしてシャーロットの側から離れ、彼女の視界に映らない位置まで移動した。
配給品を地面に置き、自分の身に降り掛かった異変を整理する。
「全部だ……。視線とか声みたいに特定の何かじゃねえ」
そして一つの確信に至った。
シャーロットは存在そのものが人を魅了している。
彼女を認識すればするほど彼女から離れられなくなる。
そして、いつの間にか彼女に身も心も全て捧げたくなる、虜になるのだ。
じゃあ自分が魅了されるより先に恐怖したのは何故だろうか?
無条件に心奪われるわけではなく、かかり具合が違うのか?
あるいは、先入観が勝ったのだろうか?
「おい、大丈夫か!?」
「あ、ああ……。なんとかな」
「まさかジョージまであの聖女を好きになってたりしないよな?」
「それは多分大丈夫だ……。リーヴァイはどうだったんだ?」
「いや、俺は別のシスターから受け取ったからな。なるべく聖女と顔を合わせないようにしてたから、問題なかったっぽい」
「そうか……」
あの一瞬だけでこうまで心揺さぶられたのだ。学園生活を共にした王太子達はイチコロだっただろう。少しばかり骨抜きにされた男子共に同情し、しかしキャサリンに無実の罪をかぶせたことへの怒りで打ち消す。
その後、二人はきちんと清掃活動に取り組んだ。一刻も早くその場から逃げたかったものの、同調圧力が酷く、逃げる隙がなかったためだ。可能な限り聖女と接触しまいと心がけたためか、これ以上のことは何も起こらなかった。
そんな二人……いや、ジョージだけにシャーロットは一度視線を向けたものの、
「彼は……別にいっか。私の目的とは関係無いもの」
それ以上近づいたり声をかけることはなかった。
「……いや、もうちょっと接近してみる」
「正気か? 正気だよな? 止めた方がいいのか?」
「この程度の情報でお嬢様の助けにはならねえよ。もっと踏み込まねえとな」
「っておい! ちょっと待てって! あーもう、知らねえからな!」
意を決してジョージは炊き出しの列に並ぶ。リーヴァーは何人か挟んだ後ろに並んだ。魅了、なのかも分かっていないが、の発動条件が分からない以上、まずは時間差や距離が関係しているのでは、と考えたからだ。
シャーロット以外にも教会のシスター達が炊き出しに従事しており、誰に配ってほしいか市民は選べないようだ。その他のシスターに配られた者はあからさまにがっかりしており、シャーロットに手渡しされた者は歓喜に打ち震えているようだ。
ジョージの番が回ってきた。幸か不幸か、ジョージはシャーロットに配られることとなり、彼女の前に足を運ぶ。黒パンと少し肉と野菜入り塩スープを準備し、シャーロットはジョージと目を合わせた。
「あら?」
意外な反応が返ってきた。他の者達には「神様からの恵みです。主のお導きがあらんことを」などと一言送ってきていた。しかしジョージを目にしたシャーロットは少し考えこみ、やがて微笑んできた。
「ジョージさんですね。お勤めご苦労さまです」
「ッ――!?」
口から心臓が飛び出るほどに驚愕した。
大声で叫ばなかった自分を褒めたいぐらいだった。
それだけジョージにとっては衝撃だった。
名乗った覚えはない。それどころか顔を合わせたことすら無かった。そして主のキャサリンを初めとしてジョージについて話題に出たことも無かったはずだ。なのにどうして目の前の娘は自分を知っているのか?
「キャサリン様はお元気ですか? あの方にはきっと慈悲があることでしょう」
バレている。自分の正体がバレてる。
恐怖で足がすくんで動かなくなったジョージの手をシャーロットは取った。そして黒パンと塩スープの器を渡す。シャーロットの手は奉仕活動のためか思っていたより荒れていて、しかし柔らかかった。
シャーロットの目がジョージに向けられて離さない。その瞳を見つめると自分が吸い込まれそうに錯覚してしまう。高鳴る心臓の鼓動が耳にまで聞こえてきてうるさい。いつの間にか息遣いも乱れている。
「食事はあちらで取ってください。器は壊さないようにそちらの桶に戻してくださいね。この後の活動ですけど、今日は道の清掃ですから、協力お願いします」
いつの間にかシャーロットは起立の姿勢に戻っていた。そして手の仕草でさり気なくどくように促してくる。ジョージは逃げるようにしてシャーロットの側から離れ、彼女の視界に映らない位置まで移動した。
配給品を地面に置き、自分の身に降り掛かった異変を整理する。
「全部だ……。視線とか声みたいに特定の何かじゃねえ」
そして一つの確信に至った。
シャーロットは存在そのものが人を魅了している。
彼女を認識すればするほど彼女から離れられなくなる。
そして、いつの間にか彼女に身も心も全て捧げたくなる、虜になるのだ。
じゃあ自分が魅了されるより先に恐怖したのは何故だろうか?
無条件に心奪われるわけではなく、かかり具合が違うのか?
あるいは、先入観が勝ったのだろうか?
「おい、大丈夫か!?」
「あ、ああ……。なんとかな」
「まさかジョージまであの聖女を好きになってたりしないよな?」
「それは多分大丈夫だ……。リーヴァイはどうだったんだ?」
「いや、俺は別のシスターから受け取ったからな。なるべく聖女と顔を合わせないようにしてたから、問題なかったっぽい」
「そうか……」
あの一瞬だけでこうまで心揺さぶられたのだ。学園生活を共にした王太子達はイチコロだっただろう。少しばかり骨抜きにされた男子共に同情し、しかしキャサリンに無実の罪をかぶせたことへの怒りで打ち消す。
その後、二人はきちんと清掃活動に取り組んだ。一刻も早くその場から逃げたかったものの、同調圧力が酷く、逃げる隙がなかったためだ。可能な限り聖女と接触しまいと心がけたためか、これ以上のことは何も起こらなかった。
そんな二人……いや、ジョージだけにシャーロットは一度視線を向けたものの、
「彼は……別にいっか。私の目的とは関係無いもの」
それ以上近づいたり声をかけることはなかった。
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