処刑エンドからだけど何とか楽しんでやるー!

福留しゅん

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Season 2 キャサリン・ランカスター

処刑まであと18日(後)

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 それからフレデリックはキャサリンと積極的に交流を持つようになった。もちろん婚約者のいる令嬢との不貞を疑われないよう、節度を持って。そして慎重に。おかげで親しい友人になるまで関係を深め、その維持に努めた。

 そのうえで『白き島2』の展開次第で起こるキャサリン処刑を何としてでも回避すべく動いた。『白き島2』の本編が始まるまでにキャサリンに悪い評判が立たないように、入念に。

 そうして迎えた『白き島2』の本編開始時期。
 転入してきた主人公こと男爵令嬢シャーロットは、そこまでフレデリックの予想からずれてはいなかった。プレイヤーの分身である主人公は元々各媒体で様々に描写されてきたので、多少の差異は問題にしていなかったのもあった。

(……違う。何かが違う)

 違和感はあった。けれどそれを上手く言い表せなかった。

 キャサリンは決して悪役令嬢として悪意を振りまこうとしなかった。さりとてシャーロットがヒロインとして各攻略対象者を攻略する、ということもなかった。
 にも拘わらず、『白き島2』の物語をなぞるように進んでいった。

(意味が分からない。どうしてフィリップ達攻略対象者の好感度がいつの間に上がってってるんだ? シャーロットはそんなにイベントこなしたっけ?)

 美貌と教養と身分を全面に出すキャサリンに対するシャーロットの魅力は何と言っても純粋さと素直さ、そして健気さだ。普通の女の子が一生懸命頑張った先にやんごとなき男性と添い遂げる、そんなサクセスストーリーが『白き島2』の売りだから。

 しかし、現実のシャーロットはどうだ? まるで真夜中に松明の火へと群がる蛾のように周囲の者達が集まっていくではないか。この世界の常識と照らし合わせてもその光景は異常と言う他ないだろう。

 フレデリックは決してシャーロットと疎遠だったわけではない。むしろ関係は良好と言っても良かった。シャーロットが友人関係だったフィリップ達と仲が良かったのもあったが、不思議と、そして恐ろしいことに、フレデリック自身もシャーロットのことを悪く思っていないからだ。

 段々と周囲の者達がシャーロットに魅了されていく中、警戒心を抱くフレデリックに対し、シャーロットは何度か親睦を深めようと試みた。そのほとんどが『白き島2』のイベントを彷彿とさせる青春の一コマだったが、
 
「そう怖がることないじゃないですか。わたし達、お友達でしょう?」

 そう耳元で囁かれた時のことを決して忘れない。
 歓喜、そして甘美。
 その瞬間だけは彼も全てをかなぐり捨ててシャーロットを愛しく思ったのだ。

 誰だ、彼女は。決して自分の知る男爵令嬢シャーロットではない。『白き島2』の主人公でもないし、ましてや決して逆ハーレムを目論むような転生ヒロインなんかではない。全く別、得体のしれない恐怖を抱かせる何かなのは間違いない。

 今日に至り、シャーロットは攻略対象者やその家族を掌握し、キャサリンの処刑は覆せなくなりつつある。先日もフレデリックはアルビオン国王に謁見し、キャサリンは不当に罪を被せられたと直訴したのだが……、

「余は王太子の判断を支持する。変更は無い」

 と、取り付く島もなかった。

 国王ばかりではない。謁見の間にいた王妃、近衛兵も国王の判断を全く疑っている様子はなかった。王妃に至ってはシャーロットを害していたキャサリンへの憎しみすら抱いているような言葉も発した。

 キャサリンが諸悪の根源だ、などとは王太子フィリップの主張であり何の根拠もない。にも拘わらず国王は誤った判断を覆すつもりが無いのだ。シャーロットを信じて愛するフィリップが正しい、と頑なな有り様は、狂気すら感じられた。

 どんな媒体でもここまでシャーロットは賛同されていなかった。自分が知る『白き島2』と全く違った展開になった理由は何だ? そして、シャーロットがここまでする動機とは?

(駄目だ。もうここは『白き島2』とは似て非なる世界だって考えるしかない)

 キャサリンはおそらく自分と同じ『転生者』だろう、とは先日の面会で確信した。彼女もまた処刑エンドを回避しようと目立たぬよう過ごしていたのだろう。それでも彼女の瞳は力強く、まだ諦めていなかったことがフレデリックにとっても嬉しかった。

 一方のシャーロット。彼女とこれ以上関われば王太子達のように恋の虜になりかねない。何しろフレデリックもまた『白き島2』の攻略対象者。ヒロインとして本領を発揮されたらどう心が動くかなんて未知数だから。

 なので、どんな手段でシャーロットが王太子達を籠絡したか、を探るため、彼女のルーツが『白き島2』の通りなのかを調べることにした。そのためにフレデリックは数日をかけて彼女の生まれ故郷を訪ねたのだが……、

「な、んだよ、これ……?」

 シャーロットの生まれ故郷は……壊滅していた。
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