処刑エンドからだけど何とか楽しんでやるー!

福留しゅん

文字の大きさ
上 下
41 / 53
Season 2 キャサリン・ランカスター

処刑まであと21日(後)

しおりを挟む
「……ところで、もう一件の結果はどうだったでしょうか?」
「はい。それは王女殿下が危惧なさったとおりでした」
「案の定依存性があった、と。誰からの情報ですか?」
「ランカスター侯爵閣下からです。間違いないかと」

 シャーロット本人の動向にやましい点が無かったのは認めざるを得ませんが、彼女が悪影響を及ぼしていることはまごうことなき事実。この国が破滅しないよう危機は回避しなければいけません。

 シャーロットと直に会った者が何かしらの条件で彼女に心奪われる、とまでは分かってきました。次に、その感情の変化に持続性があるのか、そして想いは深刻化したのか、を探らせました。

 と申しますのも、愚兄はシャーロットとの仲が深まるにつれてより彼女を深く愛するようになり、逆にキャサリン様を憎悪するようになった、と思えるのです。つまり、魅了だの洗脳だの何かしらを重ねがけしている、と推理したのです。そして、その歪められた愛に副作用があるのではないか、とも不安になりましたから。

「ランカスター家がキャサリン様を救出なさろうと野盗に扮した部隊を派遣したところ、第一王宮騎士団に阻まれたそうです。ランカスター家の騎士から襲撃の情報が漏れていたんだとか」
「なるほど。サイラスの手際だけではなかったのですか」
「密告者を牢屋に入れて尋問したところ、聖女への依存性がみられた、とのことでしたが……日が経つにつれて落ち着かなくなっていき、しまいには凶暴化してしまいました。その様子は昨日、私も遠くからこの目で見ております」
「禁断症状が現れましたか。まるで酒や煙草、薬物へ依存するようですね」

 聖女に深くはまればはまるほど彼女なしではいられなくなる、ですか。やはり、あの聖女への愛は危険です。依存させて破滅させるなんて、まるで聖女ではなく悪魔ではないですか。

 外道な劇物とシャーロットは無縁なのに、どうやって?
 聖女の奇跡を悪用しているのか、それともわたくしも知らない手段があるのか。
 何にせよ、シャーロットが中心にいるには違いありませんがね。

「しかし、王女殿下はどうしてそのような危険性に気付かれたのですか? これまでそのような症例は確認出来ていませんでしたが……」
「そうですね。あの方々は皆の前では取り繕っていますから」

 依存性と禁断症状。聖女の虜になった者は心と体を蝕まれ、聖女のことばかり考えるようになり、やがて聖女が全てになる。体のいい聖女の奴隷、傀儡の出来上がりです。それが救済だなんて絶対に言わせない。

「っ……!? ま、まさか……!」
「何に思い至ったにせよ、口にしてはいけません。分かっていますね?」

 そして、真っ先に禁断症状に陥るとしたら、シャーロットとあまり接触出来ない状況の者でしょうね。ランカスター侯が牢屋に入れている騎士然り、シャーロットが学生や聖女の立場でもおいそれと近寄れない身分の者もです。

 そう、父や母、つまり国王王妃両陛下も含まれてしまっているのです。

 既に父も母もどこか上の空で、政務に支障が出ています。さすがにベラの報告にあった騎士のように凶暴化する程ではありませんが、悪化するのか和らぐかは検討もつかないのが悩ましいですね。

 どれもこれも愚兄が頻繁にあの娘を晩餐会に誘ったからです。どのように責任を取らせるかは真剣に考えなければなりませんね。最悪、愚兄から王太子の座を奪うばかりでなく――。

「わたくしはこれ以上あの方々とシャーロットを接近させないよう根回しします。ベラも、くれぐれも不要にあの者に近づきすぎないように」
「承知しました。ところで、一つ提案がございます」
「……何となく想像出来ます。言うべきではありませんよ。覚悟の上ですか?」
「はい。汚名を被ろうと、成し遂げるべきです」

 わたくしはベラからの上申に即答しませんでした。
 しかし決して独断で踏み切らないようには言い渡しておきます。
 実行するからにはわたくしが決断するべきでしょうから。

「聖女シャーロットを暗殺するのは如何でしょうか?」

 この最悪な最終手段は。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。