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Season 2 キャサリン・ランカスター
処刑まであと21日(後)
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「……ところで、もう一件の結果はどうだったでしょうか?」
「はい。それは王女殿下が危惧なさったとおりでした」
「案の定依存性があった、と。誰からの情報ですか?」
「ランカスター侯爵閣下からです。間違いないかと」
シャーロット本人の動向にやましい点が無かったのは認めざるを得ませんが、彼女が悪影響を及ぼしていることはまごうことなき事実。この国が破滅しないよう危機は回避しなければいけません。
シャーロットと直に会った者が何かしらの条件で彼女に心奪われる、とまでは分かってきました。次に、その感情の変化に持続性があるのか、そして想いは深刻化したのか、を探らせました。
と申しますのも、愚兄はシャーロットとの仲が深まるにつれてより彼女を深く愛するようになり、逆にキャサリン様を憎悪するようになった、と思えるのです。つまり、魅了だの洗脳だの何かしらを重ねがけしている、と推理したのです。そして、その歪められた愛に副作用があるのではないか、とも不安になりましたから。
「ランカスター家がキャサリン様を救出なさろうと野盗に扮した部隊を派遣したところ、第一王宮騎士団に阻まれたそうです。ランカスター家の騎士から襲撃の情報が漏れていたんだとか」
「なるほど。サイラスの手際だけではなかったのですか」
「密告者を牢屋に入れて尋問したところ、聖女への依存性がみられた、とのことでしたが……日が経つにつれて落ち着かなくなっていき、しまいには凶暴化してしまいました。その様子は昨日、私も遠くからこの目で見ております」
「禁断症状が現れましたか。まるで酒や煙草、薬物へ依存するようですね」
聖女に深くはまればはまるほど彼女なしではいられなくなる、ですか。やはり、あの聖女への愛は危険です。依存させて破滅させるなんて、まるで聖女ではなく悪魔ではないですか。
外道な劇物とシャーロットは無縁なのに、どうやって?
聖女の奇跡を悪用しているのか、それともわたくしも知らない手段があるのか。
何にせよ、シャーロットが中心にいるには違いありませんがね。
「しかし、王女殿下はどうしてそのような危険性に気付かれたのですか? これまでそのような症例は確認出来ていませんでしたが……」
「そうですね。あの方々は皆の前では取り繕っていますから」
依存性と禁断症状。聖女の虜になった者は心と体を蝕まれ、聖女のことばかり考えるようになり、やがて聖女が全てになる。体のいい聖女の奴隷、傀儡の出来上がりです。それが救済だなんて絶対に言わせない。
「っ……!? ま、まさか……!」
「何に思い至ったにせよ、口にしてはいけません。分かっていますね?」
そして、真っ先に禁断症状に陥るとしたら、シャーロットとあまり接触出来ない状況の者でしょうね。ランカスター侯が牢屋に入れている騎士然り、シャーロットが学生や聖女の立場でもおいそれと近寄れない身分の者もです。
そう、父や母、つまり国王王妃両陛下も含まれてしまっているのです。
既に父も母もどこか上の空で、政務に支障が出ています。さすがにベラの報告にあった騎士のように凶暴化する程ではありませんが、悪化するのか和らぐかは検討もつかないのが悩ましいですね。
どれもこれも愚兄が頻繁にあの娘を晩餐会に誘ったからです。どのように責任を取らせるかは真剣に考えなければなりませんね。最悪、愚兄から王太子の座を奪うばかりでなく――。
「わたくしはこれ以上あの方々とシャーロットを接近させないよう根回しします。ベラも、くれぐれも不要にあの者に近づきすぎないように」
「承知しました。ところで、一つ提案がございます」
「……何となく想像出来ます。言うべきではありませんよ。覚悟の上ですか?」
「はい。汚名を被ろうと、成し遂げるべきです」
わたくしはベラからの上申に即答しませんでした。
しかし決して独断で踏み切らないようには言い渡しておきます。
実行するからにはわたくしが決断するべきでしょうから。
「聖女シャーロットを暗殺するのは如何でしょうか?」
この最悪な最終手段は。
「はい。それは王女殿下が危惧なさったとおりでした」
「案の定依存性があった、と。誰からの情報ですか?」
「ランカスター侯爵閣下からです。間違いないかと」
シャーロット本人の動向にやましい点が無かったのは認めざるを得ませんが、彼女が悪影響を及ぼしていることはまごうことなき事実。この国が破滅しないよう危機は回避しなければいけません。
シャーロットと直に会った者が何かしらの条件で彼女に心奪われる、とまでは分かってきました。次に、その感情の変化に持続性があるのか、そして想いは深刻化したのか、を探らせました。
と申しますのも、愚兄はシャーロットとの仲が深まるにつれてより彼女を深く愛するようになり、逆にキャサリン様を憎悪するようになった、と思えるのです。つまり、魅了だの洗脳だの何かしらを重ねがけしている、と推理したのです。そして、その歪められた愛に副作用があるのではないか、とも不安になりましたから。
「ランカスター家がキャサリン様を救出なさろうと野盗に扮した部隊を派遣したところ、第一王宮騎士団に阻まれたそうです。ランカスター家の騎士から襲撃の情報が漏れていたんだとか」
「なるほど。サイラスの手際だけではなかったのですか」
「密告者を牢屋に入れて尋問したところ、聖女への依存性がみられた、とのことでしたが……日が経つにつれて落ち着かなくなっていき、しまいには凶暴化してしまいました。その様子は昨日、私も遠くからこの目で見ております」
「禁断症状が現れましたか。まるで酒や煙草、薬物へ依存するようですね」
聖女に深くはまればはまるほど彼女なしではいられなくなる、ですか。やはり、あの聖女への愛は危険です。依存させて破滅させるなんて、まるで聖女ではなく悪魔ではないですか。
外道な劇物とシャーロットは無縁なのに、どうやって?
聖女の奇跡を悪用しているのか、それともわたくしも知らない手段があるのか。
何にせよ、シャーロットが中心にいるには違いありませんがね。
「しかし、王女殿下はどうしてそのような危険性に気付かれたのですか? これまでそのような症例は確認出来ていませんでしたが……」
「そうですね。あの方々は皆の前では取り繕っていますから」
依存性と禁断症状。聖女の虜になった者は心と体を蝕まれ、聖女のことばかり考えるようになり、やがて聖女が全てになる。体のいい聖女の奴隷、傀儡の出来上がりです。それが救済だなんて絶対に言わせない。
「っ……!? ま、まさか……!」
「何に思い至ったにせよ、口にしてはいけません。分かっていますね?」
そして、真っ先に禁断症状に陥るとしたら、シャーロットとあまり接触出来ない状況の者でしょうね。ランカスター侯が牢屋に入れている騎士然り、シャーロットが学生や聖女の立場でもおいそれと近寄れない身分の者もです。
そう、父や母、つまり国王王妃両陛下も含まれてしまっているのです。
既に父も母もどこか上の空で、政務に支障が出ています。さすがにベラの報告にあった騎士のように凶暴化する程ではありませんが、悪化するのか和らぐかは検討もつかないのが悩ましいですね。
どれもこれも愚兄が頻繁にあの娘を晩餐会に誘ったからです。どのように責任を取らせるかは真剣に考えなければなりませんね。最悪、愚兄から王太子の座を奪うばかりでなく――。
「わたくしはこれ以上あの方々とシャーロットを接近させないよう根回しします。ベラも、くれぐれも不要にあの者に近づきすぎないように」
「承知しました。ところで、一つ提案がございます」
「……何となく想像出来ます。言うべきではありませんよ。覚悟の上ですか?」
「はい。汚名を被ろうと、成し遂げるべきです」
わたくしはベラからの上申に即答しませんでした。
しかし決して独断で踏み切らないようには言い渡しておきます。
実行するからにはわたくしが決断するべきでしょうから。
「聖女シャーロットを暗殺するのは如何でしょうか?」
この最悪な最終手段は。
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