処刑エンドからだけど何とか楽しんでやるー!

福留しゅん

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Season 2 キャサリン・ランカスター

処刑まであと22日(前)

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 ■Side ジョージ

「おおい、こっちだジョージ!」
「おー、リーヴァイ! まだ死んでなかったのか、元気そうじゃないか!」
「そりゃこっちの台詞だ! 元気にやってるみたいだな! ま、座れよ」
「とりあえず俺の分のエール頼んどいてくれ」

 王都のとある酒場。キャサリンの命を受けて戻ってきたジョージは早速学友と合う約束を取り付けた。集まった学友達はまず再会を祝って乾杯をし、酒で喉を潤す。そして運ばれる料理に舌鼓を打ちながら、近状を語り合った。

「それにしても、学校を卒業してからもうかれこれ何年経つんだ? もう遠い昔な気分がするぜ」
「俺も俺も。けどよ、段々と時間が過ぎるのが速くなってってねえか?」
「それ職場の先輩達も言ってたぜ。年取る度にそうなってくのかね」
「ははっ。んじゃ早いとこやりたいことをはやり切ってから天に召されようぜ」

 アルビオン王国では昔、エリザベス王妃の発案から国民全員に教育の義務を課した。これは国民全体の底上げを図ったものだ。農家や牧家や猛反発をいかに解決したかは王妃の類まれなる手腕として今も記録に残っている。

 これにより、王国の子供全員が十代前半までの日中、学校に通うこととなり、全国各地に学校が建てられた。ここで得た知識をもとに家業を継ぐ、村で別の職に就く、以外の選択肢が選べるようになったのだ。弊害をかの王妃がどのように解決したかは割愛しよう。

 ジョージもまた侯爵家に仕える片手間に地元の学校に通った。その時、侯爵家の領地から王都に出稼ぎに出るに同級生もおり、ジョージが真っ先に声をかけたリーヴァイもそのうちの一人だった。

「んで、珍しいな。ジョージがこっち来るなんて。そっちのお嬢様がこっちの王立学園に通うって時も地元に留まっただろ」
「お嬢様には姉貴が付いてたからいいんだよ。それに都会のごみごみした感じは好きじゃない」
「で、それを我慢してこっち来た理由は何だ? まさかマジでこっち来てた同級生と飲みたくなった、じゃあねえよな?」
「リーヴァイが就職した商会の御曹司について聞きたい、って文に書いたよな。で、どうなんだ?」

 リーヴァイは王都に出て王国でも有数の商会に務めることとなった。既に何年も経って仕事をこなしていたため、現在では小さな仕事なら任される程度に少し出世している。

 そして、立場を持つと商会内の内情も見えてくる。
 それは決して華々しい成功談だけでなく、その裏に隠れた汚く醜い部分も。
 キャサリンの同級生であった商会の御曹司の醜態だろうと。

「あー、あのドラ息子かぁー」

 酒場は多くの客で賑わっていた。そこかしこで会話が繰り広げられ、中には大声を張り上げる迷惑な輩もいた。加えて酒が進んで酔いが回ってくる。すると、普段は口を噤むような話も暴露されてくる。

 商会御曹司のウォルター。彼もまた王立学園に通い、王太子達と友人関係を築き、彼らと共に聖女への恋の沼に落ちた男だった。そして、例に漏れず、王太子達と結託してキャサリンを追い落とした輩でもある。

「いや、アイツがドラ息子になったのはつい最近だったわな。それまでは従業員目線でも将来有望な御曹司様、優秀な坊っちゃん、って感じだったし。現に会長の手伝いしてる時はキレッキレで仕事出来たんだぜ」
「へえ」
「貧富とか性別関係無しに従業員に接してたし、女性とか年配者へも気配り出来て優しかった、って商会内でも評判高くてよ。こりゃ俺は将来安泰だわ、って思ったもんだ。まさかああなっちまうとはな」
「あー、やっぱ聖女に現抜かしたのか」

 一年ほど前から学園に通い始めた少女、シャーロット。
 彼女の到来がウォルターの堕落の始まりだった。

「段々と聖女さんに夢中になってってな。商会での業務を他の従業員に割り振るようになったんだわ。ほっぽりださなかっただけまだマシなんだけどよ。けれどよ、御曹司にしか出来ない重要な仕事ってのもあるだろ。そこでヘマするようになっちまったんだ」
「そりゃあ大目玉食らっただろうな」
「もちろん。会長はあのドラ息子をはっ倒して、そこから大喧嘩だ。女にうつつを抜かすなんて娼婦に入れ込むのと同じ、商会を駄目にするロクデナシだ、って会長がキレて、じゃあ連れて来るからどれほど素晴らしい女性か確かめてくれ、ってドラ息子は反論したわけだ」
「で、そのドラ息子とやらは聖女を会長さんに紹介したわけだ。どうなった?」

 ジョージの質問にリーヴァイは一瞬口を閉ざし、一息置いて重苦しく呟いた。
 悪夢を見た、と。
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