処刑エンドからだけど何とか楽しんでやるー!

福留しゅん

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Season 2 キャサリン・ランカスター

処刑まであと23日(後)

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「王太子殿下の断罪は正気の沙汰とはとても思えません。確かにシャーロットが悪意に晒されたのは事実ですが、キャサリン様が関与していないことは少しでも調べれば判明する筈です」
「けれど現にキャサリンは罪を被ったままだ」
「王太子の発言を撤回出来るのは国王王妃両陛下のみ。懸命な判断をなさって撤回してくださると期待していたのですが……」
「結局今日に至ってもそのままなわけだ」
「確信致しました。両陛下は既にあの魔女めに骨抜きにされてしまったようです」
「と、なると非常にまずい。王命を覆すのは並大抵じゃない」

 現状を整理すればするほどキャサリンが処刑台へと上がる未来への道が補強されていく、そうジェーンは錯覚した。めまいを起こして頭がふらつき、額を押さえながらソファーにもたれかかって一息つく。

「じゃあ何とか陛下を説得してキャサリンの罪を晴らしてもらわないと。陛下が耳を傾ける相手といえば、まずは宰相か」
「残念ですが宰相閣下も既にシャーロットの餌食になっていますわ」
「ん? 宰相に会って確かめたのかい?」
「ええ。王太子殿下と一緒にシャーロットの取り巻きをなさっているオリバーさんにについて一言申し上げようと思いまして」

 宰相嫡男オリバー。王太子フィリップや王宮騎士団長嫡男ジェイコブと同じく、シャーロットに心奪われた男子の一人。学園では彼ら三人が率先してシャーロットを愛し、守り、同じ時間を過ごし、そしてキャサリンを目の敵にしてきた。

 オリバーについて苦言を呈そうとジェーンは宰相の屋敷を訪問し、会話した。しかし、本題に切り出す前の世間話で分かった。分かってしまった。既に宰相とその一家はシャーロットを受け入れてしまっている、と。

「シャーロットにうつつを抜かすオリバーさんを再教育してくださいませ、などと発言していたら、おそらくわたくしは無事に帰れてはいなかったでしょう……」
「宰相とシャーロットは夜会で接触があったとは確認出来ている。その時に何かやられたに違いない」
「宰相閣下があの魔女めの味方をしていますし、次に期待するとしたら、国王陛下の側近であらせられる王弟殿下になりますが……」
「彼も言うまでもなく敵だろう。残念ながら」

 王弟エルンスト。彼は王太子フィリップが学園に通うにあたり、王立学園の非常勤講師を務めている。年はどちらかと言えば国王よりフィリップの方が近いため、まだ若い。そのため女子生徒に少なからず人気がある。

 エルンストは王族でありながら弱い者の味方だった。貴族たるもの市民を守るためにあるべし、と公言しており、学園内でも爵位の低い家の子や市民階級の特待生の心強い味方だった。

 そんなエルネストもまた、いつしかシャーロットに夢中になってしまっていた。

「一度心を奪われたらずっとそのままなのか、それとも一定期間あの魔女めに会わなければ次第に治るのか。分かりませんわ」
「なら裏世界の者を雇って彼女をさらってみるか。いくら王太子といえども国外に連れ去られたら手のうちようもないだろうし」
「シャーロット本人の排除は最終手段にしましょう。それでは王太子殿下が仰るように本当に悪人になってしまいます」
「そんな悠長な台詞を口に出来る状況かな?」

 結局、ジェーンとフレデリックの打ち合わせは情報の整理だけに終わり、打開策は見いだせないままとなった。
 しかし、ジェーンの所感では、どうもフレデリックは何かを隠しており、こちらに理解を促すよう誘導されているようだった。

 確かにフレデリックはキャサリンを助けようとしている。それが決して打算からではないとも感じられる。しかし、かと言って全てを明かしていない現状、信じるのは総計。今は手を組んだ協力者に留まるべきだろう。

「フレデリック殿下……。貴方様は一体何を隠しておいでなのですか?」

 ジェーンは帰っていくフレデリックの背を見つめながら、改めてキャサリンを救うのは自分だと決意を固めた。
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