処刑エンドからだけど何とか楽しんでやるー!

福留しゅん

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Season 2 キャサリン・ランカスター

処刑まであと30日(前)

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 私、キャサリン・ランカスターは侯爵令嬢である。
 そして王太子フィリップ殿下の婚約者でもある。

 ただはっきり言っておく。ランカスター家はこの婚約を全く望んでいなかった。

 だってねー。王家には前科があるしー。青春時代を王太子妃教育でぶっ潰されたのに土壇場になって覆されるなんてありえないしー。いくらその時は当時のご先祖様が機転を利かして大逆転してたけれど、それは運命が味方したって言って過言じゃないでしょう。

 王家との婚約を望む理由は王家に自分達の家の血を入れたいってのと、王宮内での権力を強めるため、辺りかしらね。外戚になれば優遇されるとも限らないのにそうなると思っている貴族のなんて多いことやら。

 ところが我が家は由緒正しい名門なのもあって充分な権威があるし、何回か王妃を輩出している。それに王女だって何度か嫁いできてるもの。今更王太子妃に固執しなくなって構わなかったってわけよ。

 なのにフィリップ様の婚約者を選ぶ夜会でどういうわけか私が目をつけられちゃって、婚約者にされてしまった。お父様もお母様も反対なさったのに陛下を始めとするやんごとなき方々がどうしてもと仰るから渋々首肯するしかなかったってこと。

 もちろん一度引き受けたからには真面目に頑張った。幸いにもそれなりに素質はあったようで、歴代の王子妃とも遜色ない成長度合いで教育をこなしていった。と同時に婚約者とも良好な関係を築けた、と自分では思ってる。

「それが覆ったのっていつだったっけなー。やっぱあの娘が現れてからかしらね」

 何かあまりに順調すぎて後で一波乱あるんじゃないかってかなり不安だった。それを口にする度にフィリップ様や王妃陛下は心配しすぎだと口を揃えてきた。異国には言霊って概念もあるらしいから、増していく心配はそれ以上面に出さなかった。

 で、案の定現れましたよ。私を破滅させる天からの試練って奴がさ。

 男爵令嬢シャーロット。彼女は私から見ても可愛かった。なんかこう庇護欲を掻き立てる野花のような雰囲気がいいのよね。こんなの貴族令嬢に向ける感想じゃないんだけど、どうもフィリップ様達は周りと全然違った彼女にイチコロだったらしい。

 いやー。正直私は泥棒猫が現れたら不愉快になるとか嫉妬するとか色々想像してたんだけど、いざ現実になったら全然だったわ。むしろ王家が望んだ婚約をぶっ壊す勢いのフィリップ様に呆れたものだったし。

 フィリップ様達に気に入られるシャーロットが気に食わない令嬢達が彼女に嫌がらせをするようになったのは知ってる。何なら現場に遭遇して問い質したこともあるけれど、私が蔑ろにされているのが許せない、的に言い訳していたっけな。

 一応シャーロットと他の令嬢の関係を改善しようとお茶会に誘ったりもしたんだ。それを蹴ったのはシャーロットの方。こいつこんなんで大丈夫か?みたいな感じに心配になったけれど、向こうがそういう考えならこっちも面倒見る気力は湧かんよ。

「正直、私はシャーロットがフィリップ様と仲良くなってもよかったんだけれどねー」

 あくまでフィリップ様とは長く付き合ってる友人的な感覚で、まあ彼とだったら一生付き合ってもいいかなーみたいななし崩し的な部分もあったしさ。もしフィリップ様が正直にシャーロットに恋したって言ってくれたら婚約解消しても良かったのよね。

 なのにフィリップ様はシャーロットとは仲良くするわ私との婚約関係は続けるわで全然誠実じゃなかった。だから何度も苦言を呈したわよ。別に心移りしようが構わないけれどそれなりの誠意があるでしょうよ、って。

「そしたら向こうは逆ギレしてくるんだもの。ホント、やってらんないわよ」
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