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Season 2 キャサリン・ランカスター
処刑まであと31日 その③
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■Side エリザベス
会場内がざわめきます。有力な公爵家のご令嬢、しかも王太子の婚約者であったキャサリン様が死を命ぜられるなんて大事ですものね。その采配が正しいか間違っているか、で紛糾している様子です。
愚兄達は正義は我らに有りと疑っておらず、皆に静まるよう命じました。そして送別会を続けるように各々に促したのです。各々は思う所がありながらも愚兄の言葉に乗って一年に一度の祝を再び楽しみ始めるのでした。
「どうしたエリザベス。随分とおとなしいな」
「……いえ、別に」
キャサリン様の断罪を成し遂げた愚兄は思い出したかのようにわたくしに語りかけてきました。その間も愛おしそうにシャーロット様と抱き合っていますし、熱烈に見つめ合っています。それが悍ましくて気持ち悪く、我慢した自分を褒めてやりたいです。
「あの女の事は随分と慕っていたようだが、奴は悪女だ。さっさと忘れろ」
「……そうおっしゃる兄上は逆に目の敵にしていたようですが、過剰だったのでは?」
「まだ言うのか……。聖女を虐げた罪は万死に値する! それだけの話だ」
「その罪とやらも皆が都合よくキャサリン様に押し付けただけで……!」
「黙れ! これ以上あの女の肩を持つというなら妹だろうと容赦はしないぞ」
「っ……。申し訳ありません、出過ぎた真似をしました」
わたくしは幾度となく愚兄に進言しましたが、全く聞き入れられませんでした。
キャサリン様を悪だと決めつけているため、結論もあの方が悪いに収束するばかりで、とても話になりませんでした。
それどころか父や母すら愚兄の肩を持つ始末! 聖女が傷つけられたのは許しがたい、いくら愚兄の婚約者だろうと許されない、と平然と語る父や母を目の当たりにした晩餐は恐怖そのもので、今も思い出す度に背筋が震えます。
一体、どうしてこうなってしまったのでしょうか?
少なくともシャーロットが現れるまでキャサリン様と兄は仲睦まじい間柄でしたのに。
互いに相手を思い合い、共に国を支えていこうと誓っていたではありませんか。
まるで愚兄を始めとして多くの者達がシャーロットに魅了されたようで……。
しかしシャーロットが聖女であることは間違いありませんでした。王国や国教会も認めていますし、人の傷を癒やし、病気を治し、不浄を祓う奇跡はわたくしもこの目ではっきりと見ましたもの。
それからシャーロットが愚兄達を誑かしてキャサリン様を陥れた、というわけでもないようです。暗部には逐次シャーロットの言動を報告させましたが、あくまで彼女は庇護欲をそそる世間知らずなか弱い娘でしかありませんでした。
であれば、人を惹き付けるのもまた聖女としての奇跡なのでしょうか? しかしそうであれば彼女は別け隔てなく愛されていた筈です。実際には愚兄達を始めとするごく一部しかシャーロットの味方ではないので、その線も除外出来ます。
「王女殿下……。由々しき事態になりましたね」
「ええ。ですが兄上の裁定を覆すことは難しいでしょう」
不安を抱いたのはわたくしだけではありません。そのうちの一人、ステュアート公爵家の令嬢であるジェーンがわたくしに語りかけてきました。彼女は満足げに友人達と宴を楽しんでいる愚兄を見つめ、冷や汗を流しました。
「お母様方から教わった昔話を思い出しました。これではまるであの悪夢の再現です」
「その危機は偉大なる先人達の機転で乗り越えましたが……」
思い出すのは幼少の頃から父や母から聞かされた、過去の出来事。
男爵家の娘に惚れ込んだ当時の王太子は婚約者の令嬢に罪を着せて処刑に追い込もうとしました。その令嬢は監獄の中で幽閉された王族方と絆を結び、処刑日にその王太子を逆に断罪なさったんだとか。
会場内がざわめきます。有力な公爵家のご令嬢、しかも王太子の婚約者であったキャサリン様が死を命ぜられるなんて大事ですものね。その采配が正しいか間違っているか、で紛糾している様子です。
愚兄達は正義は我らに有りと疑っておらず、皆に静まるよう命じました。そして送別会を続けるように各々に促したのです。各々は思う所がありながらも愚兄の言葉に乗って一年に一度の祝を再び楽しみ始めるのでした。
「どうしたエリザベス。随分とおとなしいな」
「……いえ、別に」
キャサリン様の断罪を成し遂げた愚兄は思い出したかのようにわたくしに語りかけてきました。その間も愛おしそうにシャーロット様と抱き合っていますし、熱烈に見つめ合っています。それが悍ましくて気持ち悪く、我慢した自分を褒めてやりたいです。
「あの女の事は随分と慕っていたようだが、奴は悪女だ。さっさと忘れろ」
「……そうおっしゃる兄上は逆に目の敵にしていたようですが、過剰だったのでは?」
「まだ言うのか……。聖女を虐げた罪は万死に値する! それだけの話だ」
「その罪とやらも皆が都合よくキャサリン様に押し付けただけで……!」
「黙れ! これ以上あの女の肩を持つというなら妹だろうと容赦はしないぞ」
「っ……。申し訳ありません、出過ぎた真似をしました」
わたくしは幾度となく愚兄に進言しましたが、全く聞き入れられませんでした。
キャサリン様を悪だと決めつけているため、結論もあの方が悪いに収束するばかりで、とても話になりませんでした。
それどころか父や母すら愚兄の肩を持つ始末! 聖女が傷つけられたのは許しがたい、いくら愚兄の婚約者だろうと許されない、と平然と語る父や母を目の当たりにした晩餐は恐怖そのもので、今も思い出す度に背筋が震えます。
一体、どうしてこうなってしまったのでしょうか?
少なくともシャーロットが現れるまでキャサリン様と兄は仲睦まじい間柄でしたのに。
互いに相手を思い合い、共に国を支えていこうと誓っていたではありませんか。
まるで愚兄を始めとして多くの者達がシャーロットに魅了されたようで……。
しかしシャーロットが聖女であることは間違いありませんでした。王国や国教会も認めていますし、人の傷を癒やし、病気を治し、不浄を祓う奇跡はわたくしもこの目ではっきりと見ましたもの。
それからシャーロットが愚兄達を誑かしてキャサリン様を陥れた、というわけでもないようです。暗部には逐次シャーロットの言動を報告させましたが、あくまで彼女は庇護欲をそそる世間知らずなか弱い娘でしかありませんでした。
であれば、人を惹き付けるのもまた聖女としての奇跡なのでしょうか? しかしそうであれば彼女は別け隔てなく愛されていた筈です。実際には愚兄達を始めとするごく一部しかシャーロットの味方ではないので、その線も除外出来ます。
「王女殿下……。由々しき事態になりましたね」
「ええ。ですが兄上の裁定を覆すことは難しいでしょう」
不安を抱いたのはわたくしだけではありません。そのうちの一人、ステュアート公爵家の令嬢であるジェーンがわたくしに語りかけてきました。彼女は満足げに友人達と宴を楽しんでいる愚兄を見つめ、冷や汗を流しました。
「お母様方から教わった昔話を思い出しました。これではまるであの悪夢の再現です」
「その危機は偉大なる先人達の機転で乗り越えましたが……」
思い出すのは幼少の頃から父や母から聞かされた、過去の出来事。
男爵家の娘に惚れ込んだ当時の王太子は婚約者の令嬢に罪を着せて処刑に追い込もうとしました。その令嬢は監獄の中で幽閉された王族方と絆を結び、処刑日にその王太子を逆に断罪なさったんだとか。
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