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聖戦⑦・魔王は勇者を目覚めさせる
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「皆の者、狼藉者を囲むのだ!」
ルードヴィヒと漆黒の魔剣の決闘は前者が劣勢に追い込まれていた。敵将軍の側近を沈黙させたアーデルハイドは勿論これ以上に一対一をさせるつもりなど無い。幕僚を切り伏せられ司令官不在となった現状、兵士達はアーデルハイドの命に従って仇を取り囲んでいく。
「一斉攻撃!」
そしてアーデルハイドの合図と共に一斉に槍を突き出した。一糸乱れぬその連携は漆黒の魔剣を串刺しに……出来なかった。敵が魔剣、即ち己自身を旋回させると槍の柄から次々と切り落としていったから。
「狼狽えるでない! 直ちに腰の剣に持ち替えよ!」
アーデルハイドが次の指示を送っている間に敵はルードヴィヒから間合いを離すよう飛び退く。彼女が降り立った先は担い手のいなくなった魔剣二振りのもと。彼女は両方の側近を足に引っかけると放り上げて掴んでいく。
「何だ? 曲芸でも見せてくれんのか?」
「まさか我の両腕が敗れるとはな。たかが人間と侮るべきではなかったな」
「反省したのならソレを持って帰るが良い。こちらに群がってくる配下の兵共々な」
「調子に乗るでない。優秀な手駒を失うのは痛いが……まあこれもまた一興よ」
将軍が三本の魔剣を器用に両手持ちした直後だった。魔剣が柔らかくなっていき互いに混ざり合っていく。蒼と朱と黒の魔剣が融合し、歪ながらも調和を感じさせる一振りの魔剣へと生まれ変わっていく。
アーデルハイドは己の迂闊さを呪った。魔剣は意識の弱い者が手にすればたちまちに操られてしまう。故に物言わなくなった魔剣はひとまず放置して将軍の対処を優先させた。まさか側近を己に取り込むとまでは想定していなかったから。
「こうしてしまったからにはそち達には万が一にも勝ち目は無い」
それは無骨な大剣だった。担い手の身の丈にも迫る長さに加え胴よりも太い。これならまだ側近達の魔剣の方が禍々しさを感じさせる。包囲する兵士の中にも今の変貌を弱体化と解釈して安堵の表情を浮かべる者がいた。
――生死の明暗を分けたのは油断と注意の差だった。
大剣が一振りされた途端に起こった現象、それは包囲していた兵士達に理解を超えるものだった。あまりにも異質な光景で思考が停止してしまった兵士達は次々と血の血を奪われていく。それは大剣だった筈の物体が幾つも枝分かれして無数の刃と化すものだった。
アーデルハイドはいち早く間合いの外へと退いて難を逃れた。遠間にいたルードヴィヒは剣でかろうじて弾く。他にも盾を構えた者は防御ごと弾かれて倒れ伏す程度で済んだり運の良かった者は致命傷には至らなかったものの、辺りは死屍累々の地獄と化した。
「見たところ貧弱な人間の女なようだが、如何に我の攻撃を見破った?」
「……さてな。勘が働いたのかもしれぬ」
しかしアーデルハイドが無傷で対応したのは意外だったようで、棟梁の将軍は警戒感を露わに彼女へと剣を向ける。将軍は剣を震わせながらゆっくりと振り上げ、素早く振り下ろした。すると今度は刀身が幾重にも分かれて令嬢へと襲い掛かる。
させじとゾフィーが盾を構えて立ちはだかるも勢いは殺しきれなかった。盾は切り裂かれて籠手を装備した腕に刃がめり込んでいく。そして盾でも腕で防御しきれなかった刃が肩へと突き刺さっていく。
「む、両断するつもりの一撃だったのだがな」
悲鳴を噛み殺しながらゾフィーは激痛のあまりに膝をついた。その間に将軍はアーデルハイドとの間合いを詰めていく。アーデルハイドは迫りくる恐怖を軽く睨みつけ、臨戦態勢を取る。戦う意思を示されたのは意外だったが将軍はそんな疑念を振り払って剣を突き出し……、
「させるかよ!」
ルードヴィヒに割り込まれて未遂に終わった。捨て身の攻勢にはさしもの将軍も怯んだものの、それもあまり長くは保たなかった。先程まで単体でも敵わなかった上に今は側近まで吸収して飛躍的に能力を向上させてきているから。
「早く逃げろアデル! 俺がコイツを抑えているうちに!」
「無茶だルードヴィヒよ! そなたが殺されては余はどうすればよいのだ!?」
「俺がそう簡単に殺されるかよ! 早くしろ、あまり長くは……!」
「その想定は甘いな。我が逃すと思うか?」
将軍の剣撃を抑えきれなくなったルードヴィヒの身体が大きく弾かれた。傍へと駆け寄るアーデルハイドだったが彼女を庇うようにルードヴィヒは将軍の前に立ちはだかる。既に彼の身体は無数に傷ついており、息もあがっている。限界は近かった。
「最後まで守ってやるさ。俺が愛した女なんだ、必ずな」
「……莫迦ここに極まれり、だな」
アーデルハイドは決死の覚悟を見せるルードヴィヒへと笑いかけた。しかしそれは決して死地へと飛び込もうとする者を見届ける為ではない。婚約相手への気休めでもない。アーデルハイドはこの状況下で一つの選択をする決意を抱いたから。
「ルードヴィヒよ」
「何だ?」
「そなたに力を」
それはルードヴィヒからすれば不意打ちだった。アーデルハイドは背中を見せる皇太子へと抱き付き、顔に手をやって自分の方へと向けると、口付けをしたのだ。それも唇と唇が触れ合う軽いものではなかった。
ルードヴィヒに変化が現れたのはアーデルハイドから何かが押し込まれてからだった。身体中が活性化して溢れるように力が湧き上がる。満身創痍だった筈なのに羽のように軽く、無数の裂傷はいつの間にか癒えていた。
本来、予言の書においては魔王軍に追い詰められた皇太子がヒロインとの愛で勇者に目覚める王道的展開となる。しかし皇太子達との接点が希薄なヒロインが戦場に現れる事は無い。故に本来であれば皇太子が使命を授けられる事態にはならない……筈だった。
ではどうやって人は勇者に目覚めるのか? 神からの啓示があって? 眠る力を呼び覚ます切っ掛けがあって? まさか人を救うべく奇蹟が起こった? 否、結果が現れるなら必ず要因がある。勇者覚醒へと確実に結びつく過程、手段が。
(故に余がルードヴィヒに魔法を流し込んで叩き起こしたわけだ)
(えっと……魔王さんがですか?)
(仕方が無かろう。こうでもせぬと彼奴は棟梁めに殺されただろうからな)
(いえ、そうではなくて……。魔王が勇者を誕生させられるんですか?)
(余は天才だからな! ふふん、褒めても良いのだぞ)
(その一言に説得力があるのはさすがなんですけれど……)
アーデルハイドには分からない。魔王は理解していない。それがいかに異常であるかは。
神の使者は神や神の使徒たる天使からの啓示で目覚める存在。光の担い手たるヒロインならまだしもただの公爵令嬢、ましてや勇者が討伐する相手である魔王では到底不可能な筈だった。しかし実際にはルードヴィヒは覚醒出来ている。
即ち、魔王は――、
「力が漲ってくるぜ。今だったらどんなすげえ事も出来ちまいそうだな」
「これで魔王軍の将軍程度ならもはやそなたの敵ではない。存分に戦うがよい」
「……ああ」
ルードヴィヒは自信に満ちた笑いを浮かべながら再び棟梁の将軍と相対する。これまで淡々と戦っていた彼女は表情を引き締め直して剣を構え、次にはこれまでにない程の速度で新たに誕生した勇者との間合いを詰めていく。咆哮と共に枝分かれさせた剣を振るった。
「遅ぇよ」
だが、ルードヴィヒは一歩踏み出すと枝分かれした剣の間に己の剣を刺し入れ、腕と手首を捻らせる。すると大剣を成していた魔剣がルードヴィヒの剣に絡め取られ、担い手から引き剥がされる。
糸が切れた人形のように倒れる担い手。独りでに蠢く魔剣。
ルードヴィヒは触手のように伸びてくる刃が届く前に剣を振り上げて魔剣を上空へと放った。もはや魔剣は剣の形を成していない。異形を晒すただの魔物であった。
「じゃあな」
ルードヴィヒが振るった剣は光り輝いていた。それこそ古より伝わりし闇と魔を払う勇者の一撃。光の一閃によって放たれた奔流は棟梁の将軍を瞬く間に飲み込む。そして多くの剣士を傀儡として己を振るわせた魔剣は塵ひとつ残らずに消滅した。
こうしてこの世界に再び勇者が誕生した。
ルードヴィヒと漆黒の魔剣の決闘は前者が劣勢に追い込まれていた。敵将軍の側近を沈黙させたアーデルハイドは勿論これ以上に一対一をさせるつもりなど無い。幕僚を切り伏せられ司令官不在となった現状、兵士達はアーデルハイドの命に従って仇を取り囲んでいく。
「一斉攻撃!」
そしてアーデルハイドの合図と共に一斉に槍を突き出した。一糸乱れぬその連携は漆黒の魔剣を串刺しに……出来なかった。敵が魔剣、即ち己自身を旋回させると槍の柄から次々と切り落としていったから。
「狼狽えるでない! 直ちに腰の剣に持ち替えよ!」
アーデルハイドが次の指示を送っている間に敵はルードヴィヒから間合いを離すよう飛び退く。彼女が降り立った先は担い手のいなくなった魔剣二振りのもと。彼女は両方の側近を足に引っかけると放り上げて掴んでいく。
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将軍が三本の魔剣を器用に両手持ちした直後だった。魔剣が柔らかくなっていき互いに混ざり合っていく。蒼と朱と黒の魔剣が融合し、歪ながらも調和を感じさせる一振りの魔剣へと生まれ変わっていく。
アーデルハイドは己の迂闊さを呪った。魔剣は意識の弱い者が手にすればたちまちに操られてしまう。故に物言わなくなった魔剣はひとまず放置して将軍の対処を優先させた。まさか側近を己に取り込むとまでは想定していなかったから。
「こうしてしまったからにはそち達には万が一にも勝ち目は無い」
それは無骨な大剣だった。担い手の身の丈にも迫る長さに加え胴よりも太い。これならまだ側近達の魔剣の方が禍々しさを感じさせる。包囲する兵士の中にも今の変貌を弱体化と解釈して安堵の表情を浮かべる者がいた。
――生死の明暗を分けたのは油断と注意の差だった。
大剣が一振りされた途端に起こった現象、それは包囲していた兵士達に理解を超えるものだった。あまりにも異質な光景で思考が停止してしまった兵士達は次々と血の血を奪われていく。それは大剣だった筈の物体が幾つも枝分かれして無数の刃と化すものだった。
アーデルハイドはいち早く間合いの外へと退いて難を逃れた。遠間にいたルードヴィヒは剣でかろうじて弾く。他にも盾を構えた者は防御ごと弾かれて倒れ伏す程度で済んだり運の良かった者は致命傷には至らなかったものの、辺りは死屍累々の地獄と化した。
「見たところ貧弱な人間の女なようだが、如何に我の攻撃を見破った?」
「……さてな。勘が働いたのかもしれぬ」
しかしアーデルハイドが無傷で対応したのは意外だったようで、棟梁の将軍は警戒感を露わに彼女へと剣を向ける。将軍は剣を震わせながらゆっくりと振り上げ、素早く振り下ろした。すると今度は刀身が幾重にも分かれて令嬢へと襲い掛かる。
させじとゾフィーが盾を構えて立ちはだかるも勢いは殺しきれなかった。盾は切り裂かれて籠手を装備した腕に刃がめり込んでいく。そして盾でも腕で防御しきれなかった刃が肩へと突き刺さっていく。
「む、両断するつもりの一撃だったのだがな」
悲鳴を噛み殺しながらゾフィーは激痛のあまりに膝をついた。その間に将軍はアーデルハイドとの間合いを詰めていく。アーデルハイドは迫りくる恐怖を軽く睨みつけ、臨戦態勢を取る。戦う意思を示されたのは意外だったが将軍はそんな疑念を振り払って剣を突き出し……、
「させるかよ!」
ルードヴィヒに割り込まれて未遂に終わった。捨て身の攻勢にはさしもの将軍も怯んだものの、それもあまり長くは保たなかった。先程まで単体でも敵わなかった上に今は側近まで吸収して飛躍的に能力を向上させてきているから。
「早く逃げろアデル! 俺がコイツを抑えているうちに!」
「無茶だルードヴィヒよ! そなたが殺されては余はどうすればよいのだ!?」
「俺がそう簡単に殺されるかよ! 早くしろ、あまり長くは……!」
「その想定は甘いな。我が逃すと思うか?」
将軍の剣撃を抑えきれなくなったルードヴィヒの身体が大きく弾かれた。傍へと駆け寄るアーデルハイドだったが彼女を庇うようにルードヴィヒは将軍の前に立ちはだかる。既に彼の身体は無数に傷ついており、息もあがっている。限界は近かった。
「最後まで守ってやるさ。俺が愛した女なんだ、必ずな」
「……莫迦ここに極まれり、だな」
アーデルハイドは決死の覚悟を見せるルードヴィヒへと笑いかけた。しかしそれは決して死地へと飛び込もうとする者を見届ける為ではない。婚約相手への気休めでもない。アーデルハイドはこの状況下で一つの選択をする決意を抱いたから。
「ルードヴィヒよ」
「何だ?」
「そなたに力を」
それはルードヴィヒからすれば不意打ちだった。アーデルハイドは背中を見せる皇太子へと抱き付き、顔に手をやって自分の方へと向けると、口付けをしたのだ。それも唇と唇が触れ合う軽いものではなかった。
ルードヴィヒに変化が現れたのはアーデルハイドから何かが押し込まれてからだった。身体中が活性化して溢れるように力が湧き上がる。満身創痍だった筈なのに羽のように軽く、無数の裂傷はいつの間にか癒えていた。
本来、予言の書においては魔王軍に追い詰められた皇太子がヒロインとの愛で勇者に目覚める王道的展開となる。しかし皇太子達との接点が希薄なヒロインが戦場に現れる事は無い。故に本来であれば皇太子が使命を授けられる事態にはならない……筈だった。
ではどうやって人は勇者に目覚めるのか? 神からの啓示があって? 眠る力を呼び覚ます切っ掛けがあって? まさか人を救うべく奇蹟が起こった? 否、結果が現れるなら必ず要因がある。勇者覚醒へと確実に結びつく過程、手段が。
(故に余がルードヴィヒに魔法を流し込んで叩き起こしたわけだ)
(えっと……魔王さんがですか?)
(仕方が無かろう。こうでもせぬと彼奴は棟梁めに殺されただろうからな)
(いえ、そうではなくて……。魔王が勇者を誕生させられるんですか?)
(余は天才だからな! ふふん、褒めても良いのだぞ)
(その一言に説得力があるのはさすがなんですけれど……)
アーデルハイドには分からない。魔王は理解していない。それがいかに異常であるかは。
神の使者は神や神の使徒たる天使からの啓示で目覚める存在。光の担い手たるヒロインならまだしもただの公爵令嬢、ましてや勇者が討伐する相手である魔王では到底不可能な筈だった。しかし実際にはルードヴィヒは覚醒出来ている。
即ち、魔王は――、
「力が漲ってくるぜ。今だったらどんなすげえ事も出来ちまいそうだな」
「これで魔王軍の将軍程度ならもはやそなたの敵ではない。存分に戦うがよい」
「……ああ」
ルードヴィヒは自信に満ちた笑いを浮かべながら再び棟梁の将軍と相対する。これまで淡々と戦っていた彼女は表情を引き締め直して剣を構え、次にはこれまでにない程の速度で新たに誕生した勇者との間合いを詰めていく。咆哮と共に枝分かれさせた剣を振るった。
「遅ぇよ」
だが、ルードヴィヒは一歩踏み出すと枝分かれした剣の間に己の剣を刺し入れ、腕と手首を捻らせる。すると大剣を成していた魔剣がルードヴィヒの剣に絡め取られ、担い手から引き剥がされる。
糸が切れた人形のように倒れる担い手。独りでに蠢く魔剣。
ルードヴィヒは触手のように伸びてくる刃が届く前に剣を振り上げて魔剣を上空へと放った。もはや魔剣は剣の形を成していない。異形を晒すただの魔物であった。
「じゃあな」
ルードヴィヒが振るった剣は光り輝いていた。それこそ古より伝わりし闇と魔を払う勇者の一撃。光の一閃によって放たれた奔流は棟梁の将軍を瞬く間に飲み込む。そして多くの剣士を傀儡として己を振るわせた魔剣は塵ひとつ残らずに消滅した。
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