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第2-1章 私は学院に通い始めました

私達は下校しました

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 実を言いますと私はトリルビィにはもっと自由に羽ばたいてもらいたいのです。折角トリルビィに友人が出来たとしても主に付き添わねばいけないからと毎回断る未来だけは避けたいので。登校時は傍にいてもらいたいですが、放課後は各々の時間を過ごせればなと思います。

 その解決策として私も代わりに家の者を使う事ばかり考えていたので、チェーザレの申し出は目から鱗と言えましょう。
 どうやら私は自分が気が付かぬうちに驚きを露わにしていたらしく、それが可笑しかったのか彼は少し笑いました。何かそれが無性に悔しくて思わずチェーザレを睨んでしまいます。それも火に油を注ぐがごとく彼のお気に召したようです。

「いえ、問題ございません。既にチェーザレ様はお嬢様とご婚約されている御身。以前あったコンチェッタ様の一件で分かりましたがそれなりに護身は出来るようですし、信頼して任せられます」

 トリルビィは一旦立ち止まり、その場で恭しく一礼しました。大通りの一角にいながら華やかで優雅に見えます。周囲の通行人もまた視線を向けるぐらいに。

「どうかお嬢様をよろしくお願いいたします」
「ああ、勿論だ」

 チェーザレは自信に満ちた答えを返します。彼は手を伸ばして私の肩を抱きかかえようとしてきましたので私はその手を掴んで自制させます。いくらそんな雰囲気だからって公衆の面前なんですから節度を持っていただきたいですね。

「何だよ、傍に寄せるぐらいいいだろ」
「したいのでしたら身体を委ねたくなるぐらい私を惚れさせるのですね」
「言ったな? なら俺頑張るから」
「いえ、別に希望を述べているわけではなくてですね」

 ああもう、この話は早くも終了です。ジョアッキーノはにやにやしていますしトリルビィは微笑ましくこちらを見つめていますし。恥ずかしさで火が噴き出そうなぐらい顔が熱いです。どれもこれもチェーザレのせいですからね。

「それはそうとお二人はどちらにお住まいなんでしょうか? 私達と同じように王国所有の物件に滞在しているとか?」
「俺は王家の別邸があるからそこを使わせてもらってる。アポリナーレと一緒なんだけどまあ妥協かな」
「僕は自分で部屋を借りたよ。他の連中と一緒に寝泊まりするなんて勘弁して欲しいって」
「とか言ってるけど本当はコンチェッタを連れ込んで二人暮らししたいだけだからな」
「ちょ、チェーザレお前ばらすなよ!」

 ごまかすように話題を転換したらとんでもない所に火が付きました。ジョアッキーノが救い出したコンチェッタを南方王国で留守番させるか地獄を見た聖都に連れて行くかはどちらも在り得ると考えていましたが、後者でしたか。
 きっと仲睦まじく暮らしているのでしょうね。それ以上については深く想像しないようにしましょう。追求したら最後、きっかけは私が唆したからだと反論されかねません。いえ、コンチェッタに情熱的になるよう仕向けたのは彼女に希望を持ってもらいたかったからでしてね。

「まあ、今度遊びに来いよ。歓迎するからさ。コンチェッタったら可愛くてさ、最近色々と覚え始めたんだ。まだたどたどしいけど喋れるようにもなれたし」
「順調に回復しているようで何よりです。とても愛されているのですね」
「ま、まあね」

 ジョアッキーノは照れくさそうに頬を指で掻きました。惚気ですね分かります。

「それじゃあ俺等はここ真っ直ぐだから」
「はい。また明日お会いしましょう」
「ああ、また明日な」

 楽しい時間はあっという間でしてもう私達は別れてしまいました。それでも寂しくないのはまた明日があるんだと思えるからでしょう。こんな風に人を期待する日が来るなんて、果たして昔の私は想像出来たでしょうか?

 大通りから外れて少し脇道に入った私とトリルビィでしたが、先ほどの微笑ましさはどこかに消え失せ、少し真剣な顔つきをさせました。この違いはチェーザレ達がいるかいないかだとしたら、彼らには話せない報告があるのでしょう。

「お嬢様。先程友人は出来ていないと申しましたが、ヴァレンティーナ様と席が近かったので言葉を交わしました」

 ……しまった。トリルビィに攻略対象者とその身内にあまり近づくなと釘を刺すのを忘れていました。ヴァレンティーナと親しくなるとオネストにそれだけ接近してしまいますし。まあ既にアポリナーレとは接触していますし、今更悔やんだって後の祭りですか。

「ほんの挨拶と自己紹介、それから世間話ぐらいでしたけど……一つ気になる情報が」
「気になる、ですか?」

 トリルビィは一呼吸おいて、私が想像もしなかったことを口にしました。

「ここ最近、聖都では魔女崇拝が密かに盛り上がっているらしいのです」
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