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第1-3章 私は聖都に行きました

私は王子達と再会しました

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「まさか聖都でお会いするなんて思ってもいませんでした」
「それはこっちの台詞だって」

 最初は白昼夢でも見ているのかと考えて。だってこんな遠い街でチェーザレ達と再会するなんて夢にも思っていませんでしたから。ですが今私が見て、聞いて、感じる彼らが私の想像の範疇とはとても信じられません。
 次にどうして彼らはここにいるのかと思考を切り替えました。方や南方王国の王子、もう一方が南方王国有数の大貴族の子息。勝手気ままに聖都に赴ける筈がありません。観光目的にしては季節がずれていますし、外交に連れてこられたのでしょうか?

「キアラはどうして聖都に?」
「聖都で学んでいる妹に会いにこちらへ」
「あー、聖女候補者って教会から許可貰わないと会えないんだったっけ」
「僕達は部屋を探していたのさ」
「部屋、ですか? もしかして来年学院に通う為の?」
「ああ」

 成程。どうやら彼らも来年学院に進学するにあたって部屋を見て回っていたようですね。さすがにそこまでは思い至りませんでした。と言いますか、チェーザレとジョアッキーノが私と同い年だったとも今初めて気づきました。

「そちらの国の王家は聖都に別邸を構えているのですか?」
「そっちはアポリナーレが住むから俺は辞退した。だからジョアッキーノと部屋を巡ってたところだ」
「そう言えば弟君と年が離れていないんでしたっけ」

 乙女げーむで攻略対象者になっている王太子アポリナーレは確か作中だと学院二年生。悪役令嬢の姉も二年生でしたからそこからチェーザレ達の年齢を計算すればよろしいんでした。となると妹が入学する前から攻略対象者と顔を合わせる破目になるのですね。

「学院には聖都で部屋を借りられない一般市民の特待生や遠い国からの留学生も迎え入れる為に学生寮が備わっているとお聞きしましたが?」
「は? 何が悲しくて知らない奴と共同生活しなきゃいけないわけ?」
「俺は元から街での生活に慣れてるからそっち以外考えてなかったな」

 ちなみに学院寮はジョアッキーノが酷評する程でもありません。遠方の国からの留学生や国の宝となる優秀な留学生を迎え入れられるよう屋敷と呼んで差し支えない建物とお聞きしています。中には個々に風呂やお手洗いを設けてある部屋もあるんだとか。
 チェーザレやジョアッキーノでしたらそうした不便無い部屋だって選べたでしょうに。よほど集団生活、または私生活の範囲内でしょっちゅう学院生と顔を合わせる環境に身を置くのが嫌なのでしょう。息苦しい、辟易する、辺りでしょうか。

「奇遇ですね。私もつい先ほど部屋を見てきたところです」
「へえ、じゃあ今度どんなトコに住むようにしたのか案内してよ」
「客人として来ていただけるのでしたら歓迎いたします」

 トリルビィはジョアッキーノの馴れ馴れしい発言に少し気を悪くしたよう。私も少し大胆だなと思ったものですが、そう言えば私達は仮とはいえ婚約関係なんでした。これぐらい気さくに接する方が普通なのでしょう。

「しかし繁華街の近くともなれば夜も賑やかですからあまり住み心地は良くないのでは?」
「いや、もう部屋は選び終わった。折角だから名所でも見て回ろうって話になってな」
「そう言うキアラだって満喫してるじゃん。買い物だって楽しんでるみたいだし……」

 とジョアッキーノが荷物持ちをしていたトリルビィへと視線を移した途端、声が途切れました。彼女が抱える道具一式がとても貴族令嬢の買い物風景には見えなかったのでしょう。奇異なものを見る視線が突き刺さるトリルビィが縮こまります。

「あのさ、何やってんの?」
「随分と失礼ですね。ジョアッキーノが仰ったとおり買い物を楽しんでおります」
「いやどう考えたっておかしいだろ! 何だよそれ!? 聖都は街灯だってあるから松明なんて要らないじゃん!」
「まるで真夜中に街の外に行く準備をしてるみたいだな」
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