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初デート
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付き合うことになった俺たちのことを自分のことみたいに喜んでくれたのは、勿論というべきか、アキさんだった。俺が榛名くんのことをずっと好きだったことも、二人が出会えたことも、全部知っているのはアキさんだけだからだ。
「告白成功したの!?よかったじゃない、おめでとう松嶋くん!」
満面の笑みでそう祝福してくれた。報告するのに、なんだか気恥ずかしくて、榛名くんは連れて行かなかった。
「ありがとうございます、アキさんのおかげです」
「ふふ、僕は大好きな恋バナ聞かせてもらって、ちょっとお節介しただけだよ」
たくさん相談に乗ってもらったのに、そういう風に言えるところは、アキさんは大人だ。
「……じゃあそのうち、ウチで買ったの使えるね♡」
無邪気にこういうことも言ってくるから、はっきりと大人だ、とは言えないのだけど。でも、恋の話もエッチなことも、包み隠さず素直に話す人だから、俺は誰にも言えなかった榛名くんへの気持ちをアキさんにだけは話せたのだから、全然嫌な気持ちになんてならない。
「ま、まあ、そのうち……」
あれだけ彼に使いたいからと買い込んでいたのを知られているのに、変に否定するのもおかしい気がして、俺はそう言った。
「レビュー待ってまーす」
それは、なんか嫌だ。俺はそうは言えず、曖昧に笑って店を後にした。帰り道に、その嫌だという感情が独占欲だと気付いてひとりで赤面した。
俺はそのうち、と言っていたけれど、榛名くんのために買い貯めてきたおもちゃたちは、俺が考えていたよりもずっとはやく出番がきた。
その日は付き合い始めてから最初のデートだった。付き合い始めてからというか、出会ってその日にエッチして、その次が告白した日だから、実際会うのは三回目ということになる。
それを言葉にしてしまうと、本当に今でも信じられない気持ちだ。俺のほうはずっと榛名くんの動画を見て、榛名くんのことを考えていたから、そんな短い間の出来事には思えないけれど、きっと榛名くんの立場からしたら、あっという間のことだろう。
「おはよ、夏生くん。早いね」
「うん、少し先に買い物してたから」
待ち合わせ場所に現れた榛名くんは、今日もかわいい。背丈も少し俺のほうが高いだけでだいたい同じくらいだし、声だって俺より低いくらいだ。服装も普通のおしゃれな男の子という感じで、別に女性的とか、中性的みたいな雰囲気があるわけではない。
それでも、俺がどうしても彼をかわいいと思ってしまうのは、彼の少し幼い顔立ちのせいなのか、それとも、ただの恋をしているゆえの盲目さなのか。きっと、そのどちらもだろう。
こんなにかわいい子とデートしてるんだ、俺は……と、自慢したい気持ちが半分と、緊張が半分ずつだった。
その日はベタに映画を見て、彼の服や俺の靴を買ったり、気になってたご飯屋さんに行ったり、ごくごく普通のデートを楽しんだ。
デートとは言っても、見た映画はアクションものだし、食事だってオシャレなカフェとかってわけでもないし、ロマンチックさも良いムードも特に考えてはいなかった。
それでも彼が時折ぎゅっと手を繋いでくれたりして、俺は終始ドキドキしっぱなしだった。こんなにドキドキしたデートは、初めての彼女とのとき以来だ。
「なに考えてるの?」
初めての彼女なんてつい思い出してしまった瞬間にそんなことを聞かれるものだから、ついぎくりとした。
それでも、昔の甘酸っぱい記憶よりももっときらきらときらめいて、世界一かわいいと思う榛名くんを前にすると、つい顔がゆるんでしまう。
「いや、幸せだなぁって」
「ほんとに~?」
「本当、本当。榛名くんが、一番かわいい」
「一番って、誰と比べてるのさ」
「世界中の人」
「あはは! 規模でっか」
榛名くんはよく笑う。白くてキレイに並んだ歯を見せて、屈託なく笑うのがかわいい。かわいいと言われると、少し恥ずかしそうにしつつも嬉しそうにしているのがかわいい。
俺の脳内を覗かれたら、きっと呆れるくらいの『好き』と『かわいい』で溢れてる。
「告白成功したの!?よかったじゃない、おめでとう松嶋くん!」
満面の笑みでそう祝福してくれた。報告するのに、なんだか気恥ずかしくて、榛名くんは連れて行かなかった。
「ありがとうございます、アキさんのおかげです」
「ふふ、僕は大好きな恋バナ聞かせてもらって、ちょっとお節介しただけだよ」
たくさん相談に乗ってもらったのに、そういう風に言えるところは、アキさんは大人だ。
「……じゃあそのうち、ウチで買ったの使えるね♡」
無邪気にこういうことも言ってくるから、はっきりと大人だ、とは言えないのだけど。でも、恋の話もエッチなことも、包み隠さず素直に話す人だから、俺は誰にも言えなかった榛名くんへの気持ちをアキさんにだけは話せたのだから、全然嫌な気持ちになんてならない。
「ま、まあ、そのうち……」
あれだけ彼に使いたいからと買い込んでいたのを知られているのに、変に否定するのもおかしい気がして、俺はそう言った。
「レビュー待ってまーす」
それは、なんか嫌だ。俺はそうは言えず、曖昧に笑って店を後にした。帰り道に、その嫌だという感情が独占欲だと気付いてひとりで赤面した。
俺はそのうち、と言っていたけれど、榛名くんのために買い貯めてきたおもちゃたちは、俺が考えていたよりもずっとはやく出番がきた。
その日は付き合い始めてから最初のデートだった。付き合い始めてからというか、出会ってその日にエッチして、その次が告白した日だから、実際会うのは三回目ということになる。
それを言葉にしてしまうと、本当に今でも信じられない気持ちだ。俺のほうはずっと榛名くんの動画を見て、榛名くんのことを考えていたから、そんな短い間の出来事には思えないけれど、きっと榛名くんの立場からしたら、あっという間のことだろう。
「おはよ、夏生くん。早いね」
「うん、少し先に買い物してたから」
待ち合わせ場所に現れた榛名くんは、今日もかわいい。背丈も少し俺のほうが高いだけでだいたい同じくらいだし、声だって俺より低いくらいだ。服装も普通のおしゃれな男の子という感じで、別に女性的とか、中性的みたいな雰囲気があるわけではない。
それでも、俺がどうしても彼をかわいいと思ってしまうのは、彼の少し幼い顔立ちのせいなのか、それとも、ただの恋をしているゆえの盲目さなのか。きっと、そのどちらもだろう。
こんなにかわいい子とデートしてるんだ、俺は……と、自慢したい気持ちが半分と、緊張が半分ずつだった。
その日はベタに映画を見て、彼の服や俺の靴を買ったり、気になってたご飯屋さんに行ったり、ごくごく普通のデートを楽しんだ。
デートとは言っても、見た映画はアクションものだし、食事だってオシャレなカフェとかってわけでもないし、ロマンチックさも良いムードも特に考えてはいなかった。
それでも彼が時折ぎゅっと手を繋いでくれたりして、俺は終始ドキドキしっぱなしだった。こんなにドキドキしたデートは、初めての彼女とのとき以来だ。
「なに考えてるの?」
初めての彼女なんてつい思い出してしまった瞬間にそんなことを聞かれるものだから、ついぎくりとした。
それでも、昔の甘酸っぱい記憶よりももっときらきらときらめいて、世界一かわいいと思う榛名くんを前にすると、つい顔がゆるんでしまう。
「いや、幸せだなぁって」
「ほんとに~?」
「本当、本当。榛名くんが、一番かわいい」
「一番って、誰と比べてるのさ」
「世界中の人」
「あはは! 規模でっか」
榛名くんはよく笑う。白くてキレイに並んだ歯を見せて、屈託なく笑うのがかわいい。かわいいと言われると、少し恥ずかしそうにしつつも嬉しそうにしているのがかわいい。
俺の脳内を覗かれたら、きっと呆れるくらいの『好き』と『かわいい』で溢れてる。
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