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使ってみる?
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「……あの、メッセージとかって、よく来るの?」
榛名くんの話しやすい雰囲気に、つい俺は気になってたことを聞いてしまう。
「まあ、うん。結構来るかな」
やっぱりそうなのか。俺みたいに、メッセージのひとつも送れずにウジウジしている人ばかりではないようだ。
「来るけど、返したことはないよ」
「そうなの!?」
「うん。ただのイタズラみたいなのも多いし」
「そうなんだ……」
「……意外? オフで視聴者と会ったりしてると思ってた?」
聞きにくいことを榛名くんのほうから言われて、それでもどう返すのが正解かわからず、何も言えずにぐっと息を呑むしかできなかった。
それを見て、榛名くんはほんの少しだけ苦く笑う。
「僕もね、誰かとああいうことしてみたくて、それで動画投稿なんてし始めたんだ。メッセージくれた人と会ってエッチするとか、ああいうサイトではよく聞くでしょ」
「うん、そうだね」
「でも実際メッセージとか貰っても、やっぱり顔が見えない相手でどんな人なのかわからないし、怖くて返事できなかった。だから一回もそういうことはしてない」
「……そっか」
自分が勇気がなくてメッセージを送ることすら出来ていなかったのに、もしかしたらメッセージを送って榛名くんと実際に会ってエッチなことをしている人が居るのかもしれないと、身勝手で情けない嫉妬をしたことも、何度もある。
けれど今、彼の口からそれを否定されて、驚くほどホッとしている自分が居ることに気付く。その安堵を感じるほどに、自分の嫉妬の気持ちがいかに強かったのかを実感した。
それを自覚したなら、これ以上の情けない嫉妬や後悔なんかは重ねたくないと思った。俺はこれまで出せなかった分の勇気を振り絞って、榛名くんに本当のことを話す決意をした。
「あのさ、さっき、あのバイブとかで君もするのって聞いてたじゃん」
「ああ、そういえば聞いたね。自分でもするほうに興味があって動画見てたのかなって……」
「それ、違うんだ。俺自身は、ああいうの使ったことないし、使う相手もいない」
榛名くんはよくわからないというように、目を丸くする。
「俺があのお店の常連になるくらい、そういうグッズを買ってるのって……その、君に、使う妄想をしてたからなんだ」
「僕に?」
「自分でもどうかしてるって思うんだけど、俺本当に榛名くんのことばっかり考えてて。君のこと考えすぎて、どんな顔だろうとか、普通に喋るとどんな風かなとか、普段はどんな服装なのかなとか、ていうかなんて名前の子なんだろうとか、ずっと考えて、それだけじゃ足りなくて、君に使ってみてほしいおもちゃ探しに初めてアダルトショップなんて入って、色々買い集めて……君に使えるなんて、そもそも会えるなんて、あるわけないのにって」
話し出すと、もう止まらなかった。ひとりきりで抱え続けた分の気持ちが溢れてきて、榛名くんの顔もまともに見れないまま話した。
こんな話、きっとすごく気持ち悪いだろう。そう思うのに、榛名くんは、とても恥ずかしそうにしながらも……ほんのわずかに、微笑んでいた。
「……会えるなんてこと、あったね」
「……うん。会えちゃった」
「……僕の、だったんだ」
「…………そうです」
「………………ふふ、敬語でてる」
「……あ、」
「…………使ってみる?」
「………」
「………」
「………え!?」
榛名くんが何を言ったのか咄嗟に理解できなくて、長い沈黙を置いて、ものすごく遅れた反応をしてしまった。
驚いて改めて榛名くんの顔を見たら、湯気でもあがりそうなくらいに顔を赤くして、瞳は羞恥に滲んだ涙で潤んでいた。
……正直、その場で勃ってしまいそうなくらいに、エロいと思ってしまった。
「……さすがに恥ずかしいから、二回も言わせないでほしいんだけど……」
「ご、ごめん、聞こえてはいます! でも、え……!?」
焦りまくって狼狽えて、かっこ悪いとは思うのだけれど、会って話しているだけでも混乱している立場なのだから、許されたい。
それなのに彼は、ばくばくと心臓が飛び出そうなくらいに緊張している俺の手に、細いけれど熱い彼自身の手をするりと重ねてくる。
「……名前も顔も知らないのに、僕に気付いてくれたの、嬉しかった」
「……うん」
「僕のこと、すっごい考えててくれたんだなって、それだけでわかったよ」
「……うん、めちゃくちゃ考えてた」
「……そういう君なら、……いいよ」
耳元でそっと吹き込まれる甘い言葉に、やっぱり俺は夢でも見ているんじゃないかと、そう思った。
けれど、じっとりと汗をかいているお互いの手のひらの感触は、どうしようもないほどにリアルだった。
榛名くんの話しやすい雰囲気に、つい俺は気になってたことを聞いてしまう。
「まあ、うん。結構来るかな」
やっぱりそうなのか。俺みたいに、メッセージのひとつも送れずにウジウジしている人ばかりではないようだ。
「来るけど、返したことはないよ」
「そうなの!?」
「うん。ただのイタズラみたいなのも多いし」
「そうなんだ……」
「……意外? オフで視聴者と会ったりしてると思ってた?」
聞きにくいことを榛名くんのほうから言われて、それでもどう返すのが正解かわからず、何も言えずにぐっと息を呑むしかできなかった。
それを見て、榛名くんはほんの少しだけ苦く笑う。
「僕もね、誰かとああいうことしてみたくて、それで動画投稿なんてし始めたんだ。メッセージくれた人と会ってエッチするとか、ああいうサイトではよく聞くでしょ」
「うん、そうだね」
「でも実際メッセージとか貰っても、やっぱり顔が見えない相手でどんな人なのかわからないし、怖くて返事できなかった。だから一回もそういうことはしてない」
「……そっか」
自分が勇気がなくてメッセージを送ることすら出来ていなかったのに、もしかしたらメッセージを送って榛名くんと実際に会ってエッチなことをしている人が居るのかもしれないと、身勝手で情けない嫉妬をしたことも、何度もある。
けれど今、彼の口からそれを否定されて、驚くほどホッとしている自分が居ることに気付く。その安堵を感じるほどに、自分の嫉妬の気持ちがいかに強かったのかを実感した。
それを自覚したなら、これ以上の情けない嫉妬や後悔なんかは重ねたくないと思った。俺はこれまで出せなかった分の勇気を振り絞って、榛名くんに本当のことを話す決意をした。
「あのさ、さっき、あのバイブとかで君もするのって聞いてたじゃん」
「ああ、そういえば聞いたね。自分でもするほうに興味があって動画見てたのかなって……」
「それ、違うんだ。俺自身は、ああいうの使ったことないし、使う相手もいない」
榛名くんはよくわからないというように、目を丸くする。
「俺があのお店の常連になるくらい、そういうグッズを買ってるのって……その、君に、使う妄想をしてたからなんだ」
「僕に?」
「自分でもどうかしてるって思うんだけど、俺本当に榛名くんのことばっかり考えてて。君のこと考えすぎて、どんな顔だろうとか、普通に喋るとどんな風かなとか、普段はどんな服装なのかなとか、ていうかなんて名前の子なんだろうとか、ずっと考えて、それだけじゃ足りなくて、君に使ってみてほしいおもちゃ探しに初めてアダルトショップなんて入って、色々買い集めて……君に使えるなんて、そもそも会えるなんて、あるわけないのにって」
話し出すと、もう止まらなかった。ひとりきりで抱え続けた分の気持ちが溢れてきて、榛名くんの顔もまともに見れないまま話した。
こんな話、きっとすごく気持ち悪いだろう。そう思うのに、榛名くんは、とても恥ずかしそうにしながらも……ほんのわずかに、微笑んでいた。
「……会えるなんてこと、あったね」
「……うん。会えちゃった」
「……僕の、だったんだ」
「…………そうです」
「………………ふふ、敬語でてる」
「……あ、」
「…………使ってみる?」
「………」
「………」
「………え!?」
榛名くんが何を言ったのか咄嗟に理解できなくて、長い沈黙を置いて、ものすごく遅れた反応をしてしまった。
驚いて改めて榛名くんの顔を見たら、湯気でもあがりそうなくらいに顔を赤くして、瞳は羞恥に滲んだ涙で潤んでいた。
……正直、その場で勃ってしまいそうなくらいに、エロいと思ってしまった。
「……さすがに恥ずかしいから、二回も言わせないでほしいんだけど……」
「ご、ごめん、聞こえてはいます! でも、え……!?」
焦りまくって狼狽えて、かっこ悪いとは思うのだけれど、会って話しているだけでも混乱している立場なのだから、許されたい。
それなのに彼は、ばくばくと心臓が飛び出そうなくらいに緊張している俺の手に、細いけれど熱い彼自身の手をするりと重ねてくる。
「……名前も顔も知らないのに、僕に気付いてくれたの、嬉しかった」
「……うん」
「僕のこと、すっごい考えててくれたんだなって、それだけでわかったよ」
「……うん、めちゃくちゃ考えてた」
「……そういう君なら、……いいよ」
耳元でそっと吹き込まれる甘い言葉に、やっぱり俺は夢でも見ているんじゃないかと、そう思った。
けれど、じっとりと汗をかいているお互いの手のひらの感触は、どうしようもないほどにリアルだった。
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