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町へ行こう
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「そろそろまた町へ行こうかと思います」
ノエルはある日、ジノにそう言います。
「いいよ、いつ? 今日? 明日?」
「今回は少し量が多いので、今日は荷造りをして明日向かいたいです」
ノエルが町に行くのは、畑で栽培したものや森の薬草などを採取して作った薬を売りにいくためです。ノエルは植物オタクで薬づくりが得意でした。
町にはノエルの作った薬がよく効くと気に入って買ってくれる医者や店があるので、そこへ定期的に売りに行きノエルは生計を立てているのです。
「オッケー。荷造りも手伝うよ」
「ありがとうございます。助かります」
ノエルはいつも手伝ってくれるジノにきちんとお礼を言います。そのたびにジノは、ノエルの役に立てる自分が誇らしくなります。
次の日ふたりは朝早くから町へと出掛けます。町は色々な種族が入り混じって暮らしています。普段はひっそりと暮らしているノエルにとって人の多い場所は不慣れなものですし、小柄なノエルよりも体の大きな種族がほとんどですから、歩くのも一苦労です。
それに、多くの人が集まる町は善良な人ばかりではありません。本来強く逞しいはずの種族なのに小さく非力に生まれてしまったノエルはごろつきに絡まれやすいのです。
なので、町に行く日には必ず耳を隠すために深くフードを被って歩きます。町の女性たちの間で流行っている髪を守るための頭巾のような赤いフードは、かわいらしいノエルにぴったり似合っていました。
「……っ! いったぁ……」
「ああ? どこ見て歩いてんだぁガキ。舐めてんじゃねえぞ」
種族などは関係なく、小さなノエルの姿を見てわざとぶつかり、いちゃもんをつけてくる者もいます。
「おい、ぶつかってきたのはそっちだろ」
「……チッ、気をつけろよ」
すかさず後ろを歩いていたジノが睨みつけながら凄むと、ごろつきは怯んだ様子で去っていきます。
「大丈夫? ノエル。怪我してない?」
「これくらい平気です。しかし、オオカミというのは得ですね」
オオカミ種は特に身体能力に優れ、強い種族として知られています。そして狂暴であるという偏見を持たれていて、その目つきの鋭さが威圧感を与えるのです。ジノはまだ若く幼さが残る外見ですが、そんなジノでさえ敵意をむき出しにして睨みつけたなら、弱い者をいじめようとするような者の殆どはそのまま去っていくのです。
「あはは、そうだね。ノエルを守れるなら、オオカミでよかったと思うよ」
人懐っこい笑顔を浮かべるジノは、もちろん狂暴さとはかけ離れた青年です。争わずにノエルを守れるならば、他の者からの偏見など安いものだと思うジノなのでした。
ノエルはある日、ジノにそう言います。
「いいよ、いつ? 今日? 明日?」
「今回は少し量が多いので、今日は荷造りをして明日向かいたいです」
ノエルが町に行くのは、畑で栽培したものや森の薬草などを採取して作った薬を売りにいくためです。ノエルは植物オタクで薬づくりが得意でした。
町にはノエルの作った薬がよく効くと気に入って買ってくれる医者や店があるので、そこへ定期的に売りに行きノエルは生計を立てているのです。
「オッケー。荷造りも手伝うよ」
「ありがとうございます。助かります」
ノエルはいつも手伝ってくれるジノにきちんとお礼を言います。そのたびにジノは、ノエルの役に立てる自分が誇らしくなります。
次の日ふたりは朝早くから町へと出掛けます。町は色々な種族が入り混じって暮らしています。普段はひっそりと暮らしているノエルにとって人の多い場所は不慣れなものですし、小柄なノエルよりも体の大きな種族がほとんどですから、歩くのも一苦労です。
それに、多くの人が集まる町は善良な人ばかりではありません。本来強く逞しいはずの種族なのに小さく非力に生まれてしまったノエルはごろつきに絡まれやすいのです。
なので、町に行く日には必ず耳を隠すために深くフードを被って歩きます。町の女性たちの間で流行っている髪を守るための頭巾のような赤いフードは、かわいらしいノエルにぴったり似合っていました。
「……っ! いったぁ……」
「ああ? どこ見て歩いてんだぁガキ。舐めてんじゃねえぞ」
種族などは関係なく、小さなノエルの姿を見てわざとぶつかり、いちゃもんをつけてくる者もいます。
「おい、ぶつかってきたのはそっちだろ」
「……チッ、気をつけろよ」
すかさず後ろを歩いていたジノが睨みつけながら凄むと、ごろつきは怯んだ様子で去っていきます。
「大丈夫? ノエル。怪我してない?」
「これくらい平気です。しかし、オオカミというのは得ですね」
オオカミ種は特に身体能力に優れ、強い種族として知られています。そして狂暴であるという偏見を持たれていて、その目つきの鋭さが威圧感を与えるのです。ジノはまだ若く幼さが残る外見ですが、そんなジノでさえ敵意をむき出しにして睨みつけたなら、弱い者をいじめようとするような者の殆どはそのまま去っていくのです。
「あはは、そうだね。ノエルを守れるなら、オオカミでよかったと思うよ」
人懐っこい笑顔を浮かべるジノは、もちろん狂暴さとはかけ離れた青年です。争わずにノエルを守れるならば、他の者からの偏見など安いものだと思うジノなのでした。
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