ある日のひみつの森のなか

おさかな

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暗い夢

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 ずぷんっ!ぐちゃっ、ぐちゅ、ぬぢゅん……っ
 男はノエルに怪我をさせない程度に慣らした後、乱暴に性器を突き入れて好き勝手にアナルを犯し始めます。

「……ッく、うゔ……っ!ん、ぐ……ぅ、うう……ッ」
「あーー、お前のココだけは最高だよ」

 ノエルの意思などはまるで無視した性処理道具のような扱いのセックスで、ノエルが感じられるはずはありません。ノエルはこの酷い仕打ちに、何も考えない、何も感じないようにすることで身を守りました。

「おい、お前も本当は感じてるんだろ?」

 心を閉ざしてしまえば、まるで身勝手な行為と言葉に傷つくこともありませんでした。

 それでもノエルは何もかも諦めているわけではありませんでした。
 ある日、入浴と食事ができるタイミングで周りの監視の目が甘い日があったのです。ノエルはその瞬間を見逃さず、裸足のまま駆け出しました。
 ノエルに故郷に残すものなどありませんでした。何も持たず、一度たりとも振り返ることはせず走りました。後ろから追われている気配を感じても、小さな身体を活かして狭い道を潜り抜け、一心不乱に逃げたのです。

 そうしてノエルは同族の住む村を逃げ出して、一人ひっそりと森の奥深くで暮らし始めました。
 森での暮らしは静かなものでしたが、ノエルは今でも時折故郷での記憶を夢に見てしまうのです。

 暗くて湿った感情がすべて消え去るような苦しい夢です。


「……夢、ですよね。ずいぶん懐かしくて、忌々しい夢を……」

 目が覚めたノエルはそう呟きました。ひどい夢見のせいで眉間に深い皺が寄り、朝から不機嫌になってしまいます。

「あ、おはようノエル。ちゃんと眠れた? 少し魘されてたみたいだけど」
「……おはようございます。ジノさん」

 寝室の扉を開けると、先に起きていたジノが今日もにこにこと笑って挨拶をしてくれます。小屋の窓は大きくて、眩しいほどの朝日が降り注いでいました。その光景を見て、ノエルの心の中にかかった黒いもやもやはゆっくりと解けて晴れていきます。

「平気ですよ。昨日は少し暑くて、寝苦しかっただけです」
「そっか。そろそろ夏掛けに変えようか……って、ノエル?」

 起き抜けの少しまだ寝ぼけたノエルは、ふたりぶんのコーヒーを用意してくれているジノの背中にぎゅっと抱きつきます。そして顔をうずめて、ジノのあったかいおひさまの香りを胸いっぱいに吸い込みました。
 そうすると、さっきまで見ていた暗くてかび臭い部屋はもうノエルの頭の中から消えていきました。

 ノエルはジノを拾い助けたのですが、実のところノエルこそがジノに助けられているのです。ノエルにとっての静かで穏やかな、あたたかい生活の象徴。それがジノになっていたのです。

「えーっと……とりあえず、コーヒー飲む?」
「のみます、お砂糖はいれないでくださいね」
「もちろん、わかってるよ。砂糖は無しで、ミルクたっぷりの」

 大切なかわいいジノと、あたたかなミルクたっぷりのほろ苦いカフェオレ。
 それだけの朝が、何より愛おしいノエルでした。
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