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17・・・早くも旅に出ます

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クコは自分の過去を話し終え俺の方をじっと見ていた


「強くなりたいうと言った理由はわかった。俺もクコには強くなってもらわないと困る、これからよろしくなクコ。」

(今クコには慰めも労りも必要ないだろう、だって一番やりたい事(復讐)がある。そして俺ならそれを手伝って叶えてやれる。だってクコはやる気(殺意)はちゃんと持っているんだから・・・本当に俺に似ている)

そうしてクコは深々と頭を下げた

「はい…よろしくお願いします…ご主人様…私は…ちゃんとした…奴隷になれるよう…頑張る…です」

「あーその事だけど。実は今日の奴隷契約をしなかったのは急いでいた、てのもあるけど他にも理由があるんだ。・・・俺は他人との契約が拒絶される体質だから俺専用の契約で縛る為ってのもあったんだ。覚悟は出来てるんだろ?」

そう言うとクコは納得したようにうなずいた

「…お願い、します…付いて行く…行けるとこまで…です」

(うん、一応脅しのつもりなんだが。どんな契約になるか分からないのに、どうしてそんなにやる気なんだ?)

「ああ契約は、クコの持っている知識を俺に教えること、俺への裏切り行為をしない事、だ。その代わり俺はお前を強くする。余裕で願いが叶うぐらいな。だが俺に関する情報を他に漏らせば。今度はクコは本当の意味で全てを奪われる。いいか?」

「…うん…いい…です」

そう言って契約書を作ると、中身も確認せずにサインしてしまった。

契約書

原則
相手の不利益になりうる情報を公開をしない。
相手に対する妨害、危害を加えない。

契約
相手へ持ちうる情報の開示
それに対する対価として妥当な報酬を徴収する権利を得る。

だが原則を犯した場合、持ちうる財産この全てを徴収。

                     署名 クコ

「な!もう書いたのか!」

「…心配ない…です」
(嫌、心配してほしいのはクコの方なのだが。)
「まあいい、じゃあ今日は、もう遅いから寝る。明日は、実験に付き合ってもらう予定だ。」

(全く、契約書を読まないとは、盲目にもほどがあるな・・・・せっかくの決め台詞が・・・)

そんな事を考えているといつのまにかクコは床の上で手を枕にして丸まって、眠ってしまっていた。
クコをベッドまで運び、ちょうどいいので自分の能力の実験に付き合ってもらう事にした。

まずは、
Q.先ほどの契約で報酬として自分のスキル、ステータスをクコに移すのは可能か。
A.可能。契約さえ結んでいれば強制徴収で俺の財産を移動させるのは自由の様だ。
ただしこの《強制徴収》は俺にしか使えないので、報酬額は俺の動かしたい分しか動かせない。

Q.眠っている相手に無理やりサインさせると契約できるか。
A.成立扱いにならなかっず。手に握らせたペンで名前を書こうとした瞬間、契約書がかき消えた。

Q.契約書がどの程度欠損すると破棄扱いになるのか。
A.文字の読み取りが一文字でも不可能になった時点で契約無効、契約書消失になる

Q.《契約書制作》で複製した契約書に新たに書き足す事は可能か。
A.不可能、書き足した瞬間、契約書が消滅、署名済みのものは契約破棄扱いになった。

Q.契約書をリュックに直接出せるか。
A.出来なかった契約書は自分の肌に触れている場所にしか出せない。

Q.リュックに入った契約書に《正当署名》は使えるのか。
A.出来なかった。これも自分の肌に触れている必要がある。

Q.《契約書制作》の複製は、使われる元の契約書が体から離れていても使いるのか。
A.使える。ただし体から1メートル以内の範囲でのみ。

Q.《契約書制作》で紙を出すとき、折り鶴の形で出せるか
結果
出せた。ただし自分が折り方を知っている物しか駄目だった。

・・・うんもう最後はどうでもいいや・・・

今現在ある契約書はさっき交わしたクコとギルド長の妨害工作の禁止。銀狼の牙と交わした、全財産徴収。ハーゲンと交わした契約が俺の命にかかわる事をしない、と一か月分の生活費(地味)となっている。

戦闘で使えるのは銀狼の牙の契約だが、出来るだけ他の奴もストックの一つとして残しておきたい。だけどこの契約書どうやっても《プール》で収納する事が出来ない。なので契約書の破棄対策としては今は冒険者のリュックに入れて保管するしかない。これはやっぱり早々に解決していかないといけないと思う。

そうやって自分のスキルの検証を終えた俺は、さっさと寝ることにした。
が、ベッドにはクコが眠っていた。さすがに一緒に寝るのは翌朝が怖い事になりそうなため壁に背をつけ床に座ったまま眠りについた。

この時の俺は翌朝、ベッドと床どっちを選んでも待っている惨事など知る由もなかった。

・・・・そして翌朝

「…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

「わかった、わかった、分かったから。今日は、旅用の買い物に行くんだからほら、支度して!」

そう言って綺麗な土下座のクコを立たせて早速買い物に向かった

(ふう、にしてもこの世界も土下座はあるんだな)

なんて考えながら

洋服屋で洋服を2人分4セットほど

商店街で大量の食料と大樽(水を汲んでおくための物)を何軒か回り集めて行く。もちろん人目に付かないところで《プール》していく。

ちなみにプールなのに水は直接じゃなく入れ物に入れないと収納できなかった・・・・。

道具屋ではテント、クコ用にリュック、料理用のフライパン、皿、調味料、火打石など。そしてなんと書類などを入れる用の箱、書箱という物も売っていた。もちろん購入。

そして最後は武器屋。俺は剣、クコは皮鎧と短剣を選んだ

「クコ、本当に短剣でいいのか?」

「…いい…長い剣はもう振りたくない…です」

クコはそう言って短剣を選んでいた。
本当のところは、きっと[剣術]スキルの【譲渡】のしすぎで、スキルがもう自分では習得も熟練度上げもできない事を気にしているんだろう

「そうか、わかった。他に必要なものはないか?」

「…コレで全部…旅は…基本現地調達…です」

「よし!それじゃあそろそろ行くか」

そう言って二人で城門の方へ歩いて行った。
まだ昼になる前だ本当はもう少しゆっくり買い物の予定だったのだが予想以上にクコに対する周りの目が気になる。とてもゆっくりする気にはならない。

普通の商人や街の人からかわいそうな、でも関わり合いになりたくないと言うような見る目、冒険者の男たちからはニヤニヤと嘲笑ってるような目、騎士や馬車に乗っている貴族などから蔑んだような汚いものを見るような眼を向けられる。
そのせいもあり速足で城門に向かった。

そしていつものように通り抜けようとすると

「待て!その獣人はお前の奴隷か?」

「はい、俺の奴隷ですが?」

「ふん、そうか。なら通れ」

と言って騎士は普通に通してくれた。通してくれたのだが、俺はしっかりと《正当署名》で騎士からの殺意を感じ取っていた。

「はー次の村に着いたらゆっくりするぞ!」

「??…でも…どこに行く?…です」

「あ!そうかまだ決めてなかったな。買い物に夢中だったからかな? ハハハ」
(まずこの王都から出ないとクコは真っ先に目を付けられそうだからな。それに行き先はもう決まっているしな。)

「…主人様…分かった…私が…頑張る…です」

そう言って俺たちは王都から出発した。

(俺は何にも考えていないと思われたか?)
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