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満たされていく心と身体(*)

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「……いっ、ぁ……ぅ、ふっ、んんっ」
「健太、息を吸って下さい」

 流石に、指とは全然違う。
 痛みこそなかったが、内臓を押し潰される様な感覚に襲われ、思わず呼吸を忘れてしまう健太の髪を撫でながら、リロイがそれ以上の侵入を止めた。

 促されて、ようやく「ハッハッハッ」と短く呼吸を刻む健太の瞳には、生理的な涙が溜まっている。
 潤む瞳でリロイを見上げると、力の抜き方が分からない健太の中が狭いのか、リロイも少し苦しそうな表情をしていた。

 あまりに苦しそうな表情をしていたからか、リロイが一度中から出て行こうかと悩んでいるのが、見て取れる。
 健太は咄嗟にリロイの背中に両手を回し、ぎゅっと抱きついた。

「やだ、抜くな」
「……無理をして、するものではありませんから」
「無理じゃない。だいじょぶ、だから……」

 なんとか呼吸を整え、「続けて欲しい」と強請る。
 健太が初めてなのは宣言済みだったし、これから先も時間はたっぷりあるのだから、無理をする必要はどこにもない。

 今日最後までできなくても、焦らずゆっくり二人で進められてはそれで良いのだと、リロイが優しく伝えてくれようとしているのはわかっていた。
 だが、繋がりたいと思っているのは健太も同じである。
 いや、むしろ健太の気持ちの方が大きいかもしれない。

 苦しいだけで、痛いとか辛いとか怖いとか、そういう感情は一切湧き上がってこなかったから。
 ならば、リロイの愛情を、最後までちゃんと受け取りたかった。

 離すまいという気持ちで、ぎゅうぎゅうと抱きついていると、お互いの心臓の音が近く感じる。
 そしてそれは、まるでシンクロしている様に、同じ早さで刻まれていた。

 鼓動が高まっているのは、健太だけではないとわかったからだろうか。気持ちが少し、落ち着いてくる。
 楽に呼吸が出来る様になると、途端に中で脈打つリロイの興奮が、ダイレクトに伝わってきた。

 まだそれを気持ち良いとまで感じるのは難しそうだったし、リロイの質量はむしろ増すばかりで驚くばかりだ。
 だが、健太の気持ちに合わせて、動かず耐えてくれる気遣いを感じれば感じるほど、不思議と苦しさは和らいでいく。

「本当に、大丈夫なんですね?」

 そっと抱き返す手と、問いかける声は、健太を気遣うものでしかなかった。
 絶対に辛いはずなのに、リロイは自分本位に行動したりしない。

(優しく出来ないかもなんて言ってたのに、めちゃくちゃ優しいんだけど)

 優しすぎて、照れてしまう程である。
 感謝の気持ちを込めて、触れるだけのキスをして頷く。

「うん……来て」
「そのまま、力を抜いていて下さい」
「んんっ……っ、ぁ……ふっ、は……ん、っぁあ!」

 ゆっくりと、けれど確実に、奥までリロイが入り込んでくるのを感じる。
 今度は止まることなく、そのままリロイの熱が、健太の中を奥まで満たしていく。

 されるがままに身体を揺らしている内に、リロイが中のある箇所に触れる度に、大きく身体が反応する様になっていた。
 何故かその場所を擦られると、ぞわぞわと熱がせり上がってくる様な堪らない気持ちになる。

「ここ、気持ちよさそうですね」
「待っ……なんか、おかしい、っから」
「大丈夫、怖くありませんよ」
「や、っでも……んっ、ぁぅ……ひゃ、ぁん」

 リロイが「見つけた」と、意地悪そうな笑みを浮かべて呟きながら、同じ場所ばかりを狙って穿つ。
 その度に、健太は自分が自分でなくなっていく様な感覚に襲われて、必死にリロイにしがみつく事しか出来なくなった。

「健太……っ」

 身体を揺らされ、快楽の波に飲まれて、いっぱいいっぱいになっている健太の耳に、初めて聞くリロイの切羽詰まった声が響く。
 そっと目を開けると、パチリとリロイと視線が交差した。
 途端にリロイが幸せそうに笑うから、なんだか胸が苦しくなる。

「リロ、イ……」

 名前を呼んで、ふわりと笑みを返す。
 今の健太に出来る事はそれだけだったが、突然リロイの動きがたがが外れた様に激しくなる。
 そして二人の熱は、一気に高みへと駆け上っていった。

「っ、く……っ」
「ひぁ、ぁぁぁぁあっ!」

 まるで、リロイとの境目がなくなってしまった様な、一つに溶け合ってしまった様な、感覚に囚われる。
 そんな幸福感とともに、二人は同時に精を吐き出した。
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