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城の最上階まで一直線に
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リロイに手を引かれて、本来立ち向かうはずだった城内に、迎え入れられる。
そこには複数のモンスター達が、あくせくと働いていた。
「お帰りなさいませ」「今日は、いつもとお帰りの時間が違うのですね」「何か緊急事態でも?」「その人間は誰です?」と、口々に戸惑いながら問いかけて来るモンスター達を見事にスルーして、リロイは最上階まで一直線に向かっていく。
やはり言葉を解するモンスターが居たんだとか、結構規律正しく働いているものなのだとか、不安そうなモンスター達の言葉に答えてやった方が良いんじゃないかとか。
聞きたい事や言いたい事は沢山あったのだが、余裕のなさそうな表情で足を進めるリロイを、健太には止められそうにない。
辿り着いた城の最上階には、扉が一つだけ存在していた。
(リロイの部屋、かな?)
城の最上階にある部屋なら、魔王の私室である可能性は高い。
そう当たりを付けてはいたのだが、躊躇無く引き入れられたその部屋は、想像以上に広くて驚いてしまう。
一部屋が、健太が日本で暮らしていた部屋の、少なくとも十倍はある。
召喚された王国の城も大きくて腰が引けたものだが、それ以上だ。
「凄い」
一部屋がここまで広いと、もはや感嘆の声しか出ない。
ただ内装は結構シンプルで、ゲームやアニメのイメージから想像される魔王の部屋とは、全く違った。
変なオブジェもなければ、部屋一帯が黒に覆われて真っ暗、なんて事もない。
むしろ程よく窓から太陽の光が差し込んで、過ごしやすそうな明るさだ。
ここまで走り抜けるように通り過ぎてきた城全体の雰囲気も、かなり清潔感があった様に思ったし、魔王城という名称から想像される、おどろおどろしい感じは全くなかった。
リロイはごてごてした豪華さよりも、シンプルな物の方が好みなのかもしれない。
魔王であるにも関わらず、神官の振りをしていた位だ。リロイには、清潔感がある。
正直今でも、リロイの線が細く綺麗ですっきりとした容姿を見る限り、「魔王だ」と言われても全く納得感はない。
ただ、決して簡素とか質素という印象は受けないので、シンプル且つ高級品が取り揃えられているのだろう。
目を輝かせながら、興味深く部屋中を見回していたら、健太の身体が突然ふわりと浮く。
驚いて「ひぇっ」と変な声を出しながら顔を上げると、すぐ傍にリロイの真剣な表情があって、健太の身体はそのリロイによって横抱きにされていた。
所謂、お姫様だっこというやつである。
(な、何で!?)
足を怪我している訳でも、身体に状態異常の症状が出ている訳でもない。
ここまで普通に、リロイに手を引かれるがまま城内の早歩きに付き合ってきたのだ、歩くのを拒否した訳でもなかった。
突然の事に戸惑っていると、リロイが健太を抱きかかえたまま、広い部屋を駆け抜ける様な早さで、一直線にある場所へと進んで行く。
目指す先に見えたのは、寝室らしき部屋。
「部屋は後からいくらでも見て良いですし、城の中も後ほどゆっくり案内します。でも今は……」
その言葉と共に、ふわりと身体が降ろされた。
行動は性急なのに、健太を乱雑に扱ったりはしない所が、リロイらしい。
ふんわりと包み込まれるような心地良さのその場所は、成人男性が五人は余裕で眠れそうな、巨大なベッドの上。
ただ、優しい扱いとは裏腹に、今にも襲いかかってきそうな、獲物に狙いを定めた獰猛な瞳が、真っ直ぐに健太を見下ろしていた。
「リロイ?」
「今すぐ、健太を愛させて欲しい」
「あ、あの俺……実は初めてで……」
「大切にします」
経験が無いことを告白すると、リロイは食い気味で頷いた。
その言葉とは裏腹に、表情も視線も、健太を食い尽くしたいと言わんばかりである。
それでも健太の許可を求めて、ちゃんと動きを止めてくれたリロイの頬に、そろりと手を伸ばす。
慣れていない健太を、勝手に翻弄する事だって出来るのに、その優しさが愛おしい。
最後の理性を解放する様に、覚悟を決めて健太は上体を浮かし、リロイへと承諾のキスを贈った。
「いいよ……っ、っふ、んぅ」
許可の言葉はすぐさま、健太の仕掛けた触れるだけのものとは全く違う深さのキスで、塞がれる。
貪り尽くされ、呼吸さえどちらの物ともわからなくなる程、混じり合う。
まるで、二人の境目がなくなっていく様だ。
思い返せば、昨晩は抜き合いまでしたのに、唇へのキスはなかった。
それは健太が「好き」を自覚する前に、一方的に奪う事で有耶無耶にならない様に、リロイが配慮してくれていたのだと、今更ながらに気付く。
その優しさを有り難く思うと同時に、もう我慢はして欲しくないとも思う。
口内に入り込んで来たリロイの舌に、自身のそれをそろりと絡めると、ぎゅっと苦しい位に抱きしめられた。
そこには複数のモンスター達が、あくせくと働いていた。
「お帰りなさいませ」「今日は、いつもとお帰りの時間が違うのですね」「何か緊急事態でも?」「その人間は誰です?」と、口々に戸惑いながら問いかけて来るモンスター達を見事にスルーして、リロイは最上階まで一直線に向かっていく。
やはり言葉を解するモンスターが居たんだとか、結構規律正しく働いているものなのだとか、不安そうなモンスター達の言葉に答えてやった方が良いんじゃないかとか。
聞きたい事や言いたい事は沢山あったのだが、余裕のなさそうな表情で足を進めるリロイを、健太には止められそうにない。
辿り着いた城の最上階には、扉が一つだけ存在していた。
(リロイの部屋、かな?)
城の最上階にある部屋なら、魔王の私室である可能性は高い。
そう当たりを付けてはいたのだが、躊躇無く引き入れられたその部屋は、想像以上に広くて驚いてしまう。
一部屋が、健太が日本で暮らしていた部屋の、少なくとも十倍はある。
召喚された王国の城も大きくて腰が引けたものだが、それ以上だ。
「凄い」
一部屋がここまで広いと、もはや感嘆の声しか出ない。
ただ内装は結構シンプルで、ゲームやアニメのイメージから想像される魔王の部屋とは、全く違った。
変なオブジェもなければ、部屋一帯が黒に覆われて真っ暗、なんて事もない。
むしろ程よく窓から太陽の光が差し込んで、過ごしやすそうな明るさだ。
ここまで走り抜けるように通り過ぎてきた城全体の雰囲気も、かなり清潔感があった様に思ったし、魔王城という名称から想像される、おどろおどろしい感じは全くなかった。
リロイはごてごてした豪華さよりも、シンプルな物の方が好みなのかもしれない。
魔王であるにも関わらず、神官の振りをしていた位だ。リロイには、清潔感がある。
正直今でも、リロイの線が細く綺麗ですっきりとした容姿を見る限り、「魔王だ」と言われても全く納得感はない。
ただ、決して簡素とか質素という印象は受けないので、シンプル且つ高級品が取り揃えられているのだろう。
目を輝かせながら、興味深く部屋中を見回していたら、健太の身体が突然ふわりと浮く。
驚いて「ひぇっ」と変な声を出しながら顔を上げると、すぐ傍にリロイの真剣な表情があって、健太の身体はそのリロイによって横抱きにされていた。
所謂、お姫様だっこというやつである。
(な、何で!?)
足を怪我している訳でも、身体に状態異常の症状が出ている訳でもない。
ここまで普通に、リロイに手を引かれるがまま城内の早歩きに付き合ってきたのだ、歩くのを拒否した訳でもなかった。
突然の事に戸惑っていると、リロイが健太を抱きかかえたまま、広い部屋を駆け抜ける様な早さで、一直線にある場所へと進んで行く。
目指す先に見えたのは、寝室らしき部屋。
「部屋は後からいくらでも見て良いですし、城の中も後ほどゆっくり案内します。でも今は……」
その言葉と共に、ふわりと身体が降ろされた。
行動は性急なのに、健太を乱雑に扱ったりはしない所が、リロイらしい。
ふんわりと包み込まれるような心地良さのその場所は、成人男性が五人は余裕で眠れそうな、巨大なベッドの上。
ただ、優しい扱いとは裏腹に、今にも襲いかかってきそうな、獲物に狙いを定めた獰猛な瞳が、真っ直ぐに健太を見下ろしていた。
「リロイ?」
「今すぐ、健太を愛させて欲しい」
「あ、あの俺……実は初めてで……」
「大切にします」
経験が無いことを告白すると、リロイは食い気味で頷いた。
その言葉とは裏腹に、表情も視線も、健太を食い尽くしたいと言わんばかりである。
それでも健太の許可を求めて、ちゃんと動きを止めてくれたリロイの頬に、そろりと手を伸ばす。
慣れていない健太を、勝手に翻弄する事だって出来るのに、その優しさが愛おしい。
最後の理性を解放する様に、覚悟を決めて健太は上体を浮かし、リロイへと承諾のキスを贈った。
「いいよ……っ、っふ、んぅ」
許可の言葉はすぐさま、健太の仕掛けた触れるだけのものとは全く違う深さのキスで、塞がれる。
貪り尽くされ、呼吸さえどちらの物ともわからなくなる程、混じり合う。
まるで、二人の境目がなくなっていく様だ。
思い返せば、昨晩は抜き合いまでしたのに、唇へのキスはなかった。
それは健太が「好き」を自覚する前に、一方的に奪う事で有耶無耶にならない様に、リロイが配慮してくれていたのだと、今更ながらに気付く。
その優しさを有り難く思うと同時に、もう我慢はして欲しくないとも思う。
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