カルトをもとめて三千里

ささそじ

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「マインドブローインッ!」

目の前の破間君がふざけて言った。今流行りのギャグらしい。ユーチューバーもだいぶ時代に馴染み、さほど稼げない中ギャグはまだ生き残っている。
「うまいぞ!昆虫。お前まだ慣れてないのか?」
「うーん、まだね。」
ギアラをビールで流し込んだ。
数年前のはやり病は無かったことのように外で呑むことができる現状をありがたく思う人間も少なくなってきてるだろう。
「いい職場が見つかってよかったよね。前から地方へ行きた言っていたし。」
「えっ!なんてっ?」
破間君は五杯目のハイボールを呑みながらなんの昆虫だかなんだかわからないがバリバリ咀嚼している。
「仕事はどう?」
「安定と充実の多好感に包まれている。」
そんな事言うタイプだったか?口調が変わって久々に驚くという感覚を味わった。

お金に関しては、ベーシックインカムがようやく与野党合意により(えっ?!)支給が始まり、東京一極集中は改善され事業は地方へ移行して行き、金が余っている分、怪しいコミュニティも出現し始めている噂を耳にするようになった。
「俺は変われた。社長のおかげで買われた。世間様にご奉仕できるぞ!」
まぁ聞いている分には面白い。が、なんか変だ…
「おう心治、今度うちに遊びにこいや。友達連れてきてもいいぞ。BBQだっ。どうせ金余ってるんだろう?」
その通りだ。僕は物欲無し人間だ。休みといえば、昔流行ったゲームと酒でほぼ終わる。
楽しくもなければ、つまらなくもない。よく、なんの為に生きてるのかを自問する機会が増えてきた。
「まぁ多少は。」
確かに、毎月政府から給付されて金銭的には楽になった。急にもらってもどう使おうか、オドオドする
おどおど症候群がワイドショーで話題だ。
年配の人口比率が増えに増えワイドショーは潤いを増している。

「それじゃ来月の最初の土か日にお前んちに迎えに行く。一周間前くらいに再度連絡するわ。」

氷をガリガリしながら、八杯目のハイボール終わらせた破間君は、目が半分座っていてスプラッター映画の悪人のようだ。
「ふふふ。ふふふふ。ふははははは!」
「どうしたの破間君?」
とその瞬間、お手洗い目がけて走り出した。
いってらっしゃい。いってらっしゃい破間君。君はマーライオンにも勝てる!
汚い話だが、便器から溢れるほど”マーー”
をしたらしく、周りの客からよろしく無いほうの目で僕は見られ一部柄の悪い連中がからんできて破間君の肩をこついた。
「正当防衛成立っ!」
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