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第36話 女難の相1 シンボルタワー
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松本蓮と鎌倉美月は、海斗を誘い横浜港シンボルタワーにやって来た。ここは横浜港の入り口、本牧埠頭側にある公園を兼ねた船の信号施設である。
海斗達は円周上の展望デッキに居た。この日もとても暑かったが、ココに吹く海風に当たり心地良く海を眺めていた。海斗は松本蓮に話しかけた。
「なあ蓮、今日は潮の臭いが強いな」
「うん、強いね。なんで臭いが強い時と弱い時があるんだろうね」
鎌倉美月は答えた。
「そうね、きっと海も生きているからだよ。だから人の感情の様に、毎日変わるのよ。なんちゃって!」
鎌倉美月は気取った事を言って照れた。海斗はうなずいた。
「本当にそうかもね、海って人に例えられる事が、多いもんね」
松本蓮は遠くの貨物船を撮っていた。しばらく三人は手摺に寄りかかり遠い視線の先にある貨物線を眺めた。
松本蓮は海斗に顔を向けた。
「天気の良い日に、海の写真を撮るのは気持ち良いよね。……なあ海斗、体の事で気になるから、まじめに聞くぞ」
松本蓮はカメラをしまった。
「何だよ、改まって」
「どこか体に悪い所は無いか?」
「いや、無いよ。至って健康だよ」
「睡眠は、良く取れているか?」
「うん、ちょっと睡眠時間が少なくなったけど、ぐっすり寝ているよ」
「中山さんとは、上手くいっているか?」
「この間、映画も行ったよ。それで蓮が心配してくれたように、葵の事も打ち明けたよ」
「……そうか、なら良いけど。海斗さあ、最近、痩せたろ?」
「えっ、何で分かるの? アルバイトもしたし、いろいろ出かけているからね。でも二、三キロだよ」
「箱根でプールに入った時、俺も美月も気が付いたんだ。だから心配しているんだよ」
海斗は気楽に答えた。
「蓮も美月も大げさだよ。最近は楽しい事ばかりで何にも心配なんて要らないよ!」
鎌倉美月は海斗の腕を引っぱり手相を見た。
「ほらー、未だ有るじゃん! これだよ、この線だって前にも言ったじゃん! ねえ海斗、女難の相、消えてないよ!」
三人はベンチに移動した。
「あのね、女の私だから言うけど、五月に手相を見てから、たった四ヶ月で海斗の周りには、あなたを好きな女の子は何人いるの?」
「えー、笑っちゃうね。俺を好きな女の子なんているのー?!」
「ホント、鈍感ね! 本当に気付いてないの?」
「うん」
「バカじゃないの! もー、バカ、バカ、バカ、バカイトね!」
鎌倉美月は海斗の前に立ち、指を折って説明をした。
「今から言うから、ちゃんと聞いてね。
一人目は誰がみても小野さんは海斗が好きよ。転校初日から会いたかったって、自分から宣言したしね。観覧車でキスもしたし、態度を見ていても良く分かるわ。
二人目、中山さんも海斗が好きよ。いつでも焼き餅を焼いているわ。好きでも無い男に焼き餅は焼かないし、ましてや自分の部屋に二人きりで勉強会なんてしないわ。
三人目、森さんも海斗の事が好きよ。クレーマー事件のお陰だけで写真部には入らないし、二人だけで港の見える丘公園にも行かないわ。いつも海斗と話す時は楽しいそうだもの。
四人目、葵ちゃんも海斗が好よ。毎日寝不足なのは、どうせ葵ちゃんとテレビゲームでもしているんでしょ。睡眠の時間を奪い、胃袋まで掴むなんてなかなかよ。同じ家に居るから一番対応が難しいの。未だ中学生だから良いけど来年は高校生でしょ。心だって体だって、ますます女らしくなるんだから、もっとも別れた事を考えたら同じ家に住めなくなるから止めた方が良いけどね。折角、出来た家族が崩壊しちゃうでしょ。ねえ海斗、分かってくれた?」
鎌倉美月はベンチに座った。
「なあ海斗、俺達心配しているんだよ。言われてみれば、そう思うだろ。今まで浮いた話が無かったお前に、たった四ヶ月でお前の事を好きな可愛い女の子が四人も現れたんだよ」
鎌倉美月も続いた。
「そうよ、可愛い女の子達は海斗のそばを求めているのよ」
海斗は手のひらを見ながら、二人の話を聞いて考えた。
「言われてみれば、確かにそうだよな。親し友達が増えただけじゃ無いかもね。いろいろ気を遣ってくれて有り難う。……でも今、楽しいんだよ。決断したら、みんな居なくなっちゃうよ。なあ蓮だって美月だって、この四ヶ月楽しかったよな。箱根だって、とっても充実していたじゃん! 決断すれば、この関係は終わっちゃうんだよ。……俺そんな事出来ないよ!」
「海斗、とっても迷うよな。俺がお前の立場だったら、同じ様に悩むよ」
「私も同じよ、とっても悩むと思う。でもね、体重が減ってきている事と心配している親友がいる事も理解をして欲しいの」
三人は、しばらく無口で海を眺めた。
松本蓮は海斗の前に立った。
「海斗、気分上げて行こうぜ! 今晩の稲荷神社のお祭りじゃん! 神社の入り口に六時でよかったよな! 今晩は楽しく行こうぜ」
「ああ、有り難う。……今の話、一人になったら良く考えてみるよ」
三人は横浜シンボルタワーを後にした。
(稲荷神社の入り口にて)
海斗と葵は、浴衣姿で稲荷神社の入り口で待っていた。小野梨紗が現れた。
「海斗、葵ちゃん、早いね!」
「小野さん、浴衣とっても似合っているよ」
「海斗、有り難う。海斗の浴衣も素敵だよ。葵ちゃんも似合っているね」
松本蓮と鎌倉美月がやって来た。
「おーい、海斗ー!」
中山美咲と林莉子、そしてもう一人女の子がやって来た。挨拶を交わすと中山美咲は紹介を始めた。
「みんなー、妹の陽菜です。ダメって言ったのに聞かなくてね。それで慌てて着替えさせて連れて来たの。みんな宜しくね」
海斗は微笑んだ、
「陽菜ちゃん、久しぶり! 俺の事、覚えているかな?」
中山春菜は腕を組み海斗に答えた。
「私の邪眼が覚えているわ。今宵は暗黒界へ降臨してやったのよ」
松本蓮が笑った。
「海斗、田中の言った通りだな。面白い女の子だ」
中山美咲は驚いた。
「えっ、なんで松本君が知っているの?」
「中山さん家に、うな重の出前で田中が行ったろ。それで聞いたんだよ」
「え~、ヤダー! きっとあの時ね」
中山美咲は知らない所で、妹が話題になっていて事に驚いた。
「あっ、そうだ! 陽菜、ちょっと来て」
中山美咲は葵を紹介した。
「葵ちゃんは、お姉ちゃんと同じ学校に通っている中学三年生よ。陽菜と同じ学年だよ。葵ちゃん、仲良くしてね」
葵は陽菜に微笑みかけた、
「初めまして陽菜さん、宜しくね」
葵は同学年と聞き、中山春菜に親近感が湧いた。人見知りの陽菜であったが、年上の中にいるので同級生の存在は有り難かったのだ。
「あ、あ、葵さん宜しく」
箱根旅行の様に、林莉子が皆を引き連れた。
「さあ皆、揃ったからお参りをして、屋台に行くわよ!」
小野梨紗は海斗の顔を見た。
「ねえ海斗、この神社はどんな御利益が有るの?」
「そうだね~、町中にある神社は氏神様って言って、広くお願いを聞いてくれるよ。五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、交通安全、合格祈願に、それに恋愛成就もね」
「便利な神様なんだね」
林莉子は言った。
「もー! 便利とは言わないわよ!」
皆は笑った。
皆はお参りを済ませ、屋台に向かった。
「ねえ美咲、修学旅行のトウモロコシを思いださない?」
「そうだね莉子、大通り公園で食べたトウモロコシは美味しかったね」
小野梨紗は、あの味を思い出した。
「私、食べたくなっちゃった! でも一本か~」
小野梨紗はひらめいた。
「海斗! 一緒に食べる?」
海斗は驚いた。中山美咲の前でも有るし、フル回転で考えた。
「えっ! 浴衣の時は止めた方が良いよ。折角の浴衣に醤油を垂らしたら、台無しになるよ」
「チェー、じゃあ、や~めた。海斗は気が回るね」
中山美咲はホッとした。海斗は上手くかわしたのだ。
皆は仲良く、たこ焼きと焼きそばをシェアして食べあった。松本蓮は出来たてのたこ焼きを持っていた。
「美月ちゃん、あ~ん」
鎌倉美月は祭りの気分に流された。
「あ~ん」
松本蓮は、たこ焼きを一つを串にさし、鎌倉美月の口に入れれと、彼女は真っ赤になった。
「あっちー! ハフッ、ハフッ!」
必死にハフハフするが、出来たてのたこ焼きは容赦無く熱いのだ。ようやく飲み込めた。
「バカ、バカ蓮! 火傷しただろ! 熱いモノはフーフーしてからでしょ!」
皆は大笑いをした。林莉子は笑った。
「まったく、面白いわ! 慣れない事やるんだから、ねえ美咲」
中山美咲も、笑いのツボに入ったらしく大笑いした。
「ププッ! いくら何でも出来たてを入れたら火傷するわよ」
林莉子の乙女心が揺れ動いた。
「あ~あ、京野君が居たら、私もあ~んして上げるのになあ! ……あー、居たー!」
京野颯太も、いつものメンバーを引き連れて歩いて来た。さり気なく遭遇をしたのだ。
「やあ美咲さん、偶然ですね~。とっても素敵な浴衣ですね、お似合いですよ。折角なので、一緒に廻りませんか?」
林莉子は喜んだ。
「ねえ美咲、浴衣姿の京野君、格好いいねー、一緒に廻ろうよ! お願い」
中山美咲は苦笑した。林莉子の為に断れなかったのだ。
「ではしばらく、皆で廻りましょう」
海斗は面白くなかった。
「おい京野、お前はいつでも湧いて出てくるな! 何なんだ?!」
「失礼だな、伏見君、偶然だよ」
一方で、田中拓海が中山春菜を見付けた。田中拓海は右手でVサインを作り、手の甲を右手に押し当てポーズを取った。
「やあ陽菜ちゃん、我が存在を覚えているかい?!」
陽菜は思い出せなかった。田中拓海は答えて貰いたかったのだ。
「ほら、白い割烹着で、うな重を出前した」
「んー、……知らない!」
あっさりと陽菜は否定した。葵は知らない男が声を掛けてきたと心配をした。
「陽菜さん、お母さんが知らない人と、話しちゃダメって言っていたよ。だからあっち行こう」
「うん」
気の毒に田中拓海は変態と勘違いされたのだ。葵は陽菜の手を取り離れた。
そして巨乳の浴衣美人が現れた、橋本七海だ。彼女はアップにした髪型を下から抑えた。
「あら伏見君、箱根以来ね。あなた達も来ていたのね」
「やあ、橋本さん。素敵な浴衣ですね、髪型もとても似合っているよ」
「あ~ら伏見君、上手になったのね。伏見君も素敵よ、ウフッ!」
隣に居た佐藤美優は、浴衣男子を撮影していた。
海斗達は円周上の展望デッキに居た。この日もとても暑かったが、ココに吹く海風に当たり心地良く海を眺めていた。海斗は松本蓮に話しかけた。
「なあ蓮、今日は潮の臭いが強いな」
「うん、強いね。なんで臭いが強い時と弱い時があるんだろうね」
鎌倉美月は答えた。
「そうね、きっと海も生きているからだよ。だから人の感情の様に、毎日変わるのよ。なんちゃって!」
鎌倉美月は気取った事を言って照れた。海斗はうなずいた。
「本当にそうかもね、海って人に例えられる事が、多いもんね」
松本蓮は遠くの貨物船を撮っていた。しばらく三人は手摺に寄りかかり遠い視線の先にある貨物線を眺めた。
松本蓮は海斗に顔を向けた。
「天気の良い日に、海の写真を撮るのは気持ち良いよね。……なあ海斗、体の事で気になるから、まじめに聞くぞ」
松本蓮はカメラをしまった。
「何だよ、改まって」
「どこか体に悪い所は無いか?」
「いや、無いよ。至って健康だよ」
「睡眠は、良く取れているか?」
「うん、ちょっと睡眠時間が少なくなったけど、ぐっすり寝ているよ」
「中山さんとは、上手くいっているか?」
「この間、映画も行ったよ。それで蓮が心配してくれたように、葵の事も打ち明けたよ」
「……そうか、なら良いけど。海斗さあ、最近、痩せたろ?」
「えっ、何で分かるの? アルバイトもしたし、いろいろ出かけているからね。でも二、三キロだよ」
「箱根でプールに入った時、俺も美月も気が付いたんだ。だから心配しているんだよ」
海斗は気楽に答えた。
「蓮も美月も大げさだよ。最近は楽しい事ばかりで何にも心配なんて要らないよ!」
鎌倉美月は海斗の腕を引っぱり手相を見た。
「ほらー、未だ有るじゃん! これだよ、この線だって前にも言ったじゃん! ねえ海斗、女難の相、消えてないよ!」
三人はベンチに移動した。
「あのね、女の私だから言うけど、五月に手相を見てから、たった四ヶ月で海斗の周りには、あなたを好きな女の子は何人いるの?」
「えー、笑っちゃうね。俺を好きな女の子なんているのー?!」
「ホント、鈍感ね! 本当に気付いてないの?」
「うん」
「バカじゃないの! もー、バカ、バカ、バカ、バカイトね!」
鎌倉美月は海斗の前に立ち、指を折って説明をした。
「今から言うから、ちゃんと聞いてね。
一人目は誰がみても小野さんは海斗が好きよ。転校初日から会いたかったって、自分から宣言したしね。観覧車でキスもしたし、態度を見ていても良く分かるわ。
二人目、中山さんも海斗が好きよ。いつでも焼き餅を焼いているわ。好きでも無い男に焼き餅は焼かないし、ましてや自分の部屋に二人きりで勉強会なんてしないわ。
三人目、森さんも海斗の事が好きよ。クレーマー事件のお陰だけで写真部には入らないし、二人だけで港の見える丘公園にも行かないわ。いつも海斗と話す時は楽しいそうだもの。
四人目、葵ちゃんも海斗が好よ。毎日寝不足なのは、どうせ葵ちゃんとテレビゲームでもしているんでしょ。睡眠の時間を奪い、胃袋まで掴むなんてなかなかよ。同じ家に居るから一番対応が難しいの。未だ中学生だから良いけど来年は高校生でしょ。心だって体だって、ますます女らしくなるんだから、もっとも別れた事を考えたら同じ家に住めなくなるから止めた方が良いけどね。折角、出来た家族が崩壊しちゃうでしょ。ねえ海斗、分かってくれた?」
鎌倉美月はベンチに座った。
「なあ海斗、俺達心配しているんだよ。言われてみれば、そう思うだろ。今まで浮いた話が無かったお前に、たった四ヶ月でお前の事を好きな可愛い女の子が四人も現れたんだよ」
鎌倉美月も続いた。
「そうよ、可愛い女の子達は海斗のそばを求めているのよ」
海斗は手のひらを見ながら、二人の話を聞いて考えた。
「言われてみれば、確かにそうだよな。親し友達が増えただけじゃ無いかもね。いろいろ気を遣ってくれて有り難う。……でも今、楽しいんだよ。決断したら、みんな居なくなっちゃうよ。なあ蓮だって美月だって、この四ヶ月楽しかったよな。箱根だって、とっても充実していたじゃん! 決断すれば、この関係は終わっちゃうんだよ。……俺そんな事出来ないよ!」
「海斗、とっても迷うよな。俺がお前の立場だったら、同じ様に悩むよ」
「私も同じよ、とっても悩むと思う。でもね、体重が減ってきている事と心配している親友がいる事も理解をして欲しいの」
三人は、しばらく無口で海を眺めた。
松本蓮は海斗の前に立った。
「海斗、気分上げて行こうぜ! 今晩の稲荷神社のお祭りじゃん! 神社の入り口に六時でよかったよな! 今晩は楽しく行こうぜ」
「ああ、有り難う。……今の話、一人になったら良く考えてみるよ」
三人は横浜シンボルタワーを後にした。
(稲荷神社の入り口にて)
海斗と葵は、浴衣姿で稲荷神社の入り口で待っていた。小野梨紗が現れた。
「海斗、葵ちゃん、早いね!」
「小野さん、浴衣とっても似合っているよ」
「海斗、有り難う。海斗の浴衣も素敵だよ。葵ちゃんも似合っているね」
松本蓮と鎌倉美月がやって来た。
「おーい、海斗ー!」
中山美咲と林莉子、そしてもう一人女の子がやって来た。挨拶を交わすと中山美咲は紹介を始めた。
「みんなー、妹の陽菜です。ダメって言ったのに聞かなくてね。それで慌てて着替えさせて連れて来たの。みんな宜しくね」
海斗は微笑んだ、
「陽菜ちゃん、久しぶり! 俺の事、覚えているかな?」
中山春菜は腕を組み海斗に答えた。
「私の邪眼が覚えているわ。今宵は暗黒界へ降臨してやったのよ」
松本蓮が笑った。
「海斗、田中の言った通りだな。面白い女の子だ」
中山美咲は驚いた。
「えっ、なんで松本君が知っているの?」
「中山さん家に、うな重の出前で田中が行ったろ。それで聞いたんだよ」
「え~、ヤダー! きっとあの時ね」
中山美咲は知らない所で、妹が話題になっていて事に驚いた。
「あっ、そうだ! 陽菜、ちょっと来て」
中山美咲は葵を紹介した。
「葵ちゃんは、お姉ちゃんと同じ学校に通っている中学三年生よ。陽菜と同じ学年だよ。葵ちゃん、仲良くしてね」
葵は陽菜に微笑みかけた、
「初めまして陽菜さん、宜しくね」
葵は同学年と聞き、中山春菜に親近感が湧いた。人見知りの陽菜であったが、年上の中にいるので同級生の存在は有り難かったのだ。
「あ、あ、葵さん宜しく」
箱根旅行の様に、林莉子が皆を引き連れた。
「さあ皆、揃ったからお参りをして、屋台に行くわよ!」
小野梨紗は海斗の顔を見た。
「ねえ海斗、この神社はどんな御利益が有るの?」
「そうだね~、町中にある神社は氏神様って言って、広くお願いを聞いてくれるよ。五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、交通安全、合格祈願に、それに恋愛成就もね」
「便利な神様なんだね」
林莉子は言った。
「もー! 便利とは言わないわよ!」
皆は笑った。
皆はお参りを済ませ、屋台に向かった。
「ねえ美咲、修学旅行のトウモロコシを思いださない?」
「そうだね莉子、大通り公園で食べたトウモロコシは美味しかったね」
小野梨紗は、あの味を思い出した。
「私、食べたくなっちゃった! でも一本か~」
小野梨紗はひらめいた。
「海斗! 一緒に食べる?」
海斗は驚いた。中山美咲の前でも有るし、フル回転で考えた。
「えっ! 浴衣の時は止めた方が良いよ。折角の浴衣に醤油を垂らしたら、台無しになるよ」
「チェー、じゃあ、や~めた。海斗は気が回るね」
中山美咲はホッとした。海斗は上手くかわしたのだ。
皆は仲良く、たこ焼きと焼きそばをシェアして食べあった。松本蓮は出来たてのたこ焼きを持っていた。
「美月ちゃん、あ~ん」
鎌倉美月は祭りの気分に流された。
「あ~ん」
松本蓮は、たこ焼きを一つを串にさし、鎌倉美月の口に入れれと、彼女は真っ赤になった。
「あっちー! ハフッ、ハフッ!」
必死にハフハフするが、出来たてのたこ焼きは容赦無く熱いのだ。ようやく飲み込めた。
「バカ、バカ蓮! 火傷しただろ! 熱いモノはフーフーしてからでしょ!」
皆は大笑いをした。林莉子は笑った。
「まったく、面白いわ! 慣れない事やるんだから、ねえ美咲」
中山美咲も、笑いのツボに入ったらしく大笑いした。
「ププッ! いくら何でも出来たてを入れたら火傷するわよ」
林莉子の乙女心が揺れ動いた。
「あ~あ、京野君が居たら、私もあ~んして上げるのになあ! ……あー、居たー!」
京野颯太も、いつものメンバーを引き連れて歩いて来た。さり気なく遭遇をしたのだ。
「やあ美咲さん、偶然ですね~。とっても素敵な浴衣ですね、お似合いですよ。折角なので、一緒に廻りませんか?」
林莉子は喜んだ。
「ねえ美咲、浴衣姿の京野君、格好いいねー、一緒に廻ろうよ! お願い」
中山美咲は苦笑した。林莉子の為に断れなかったのだ。
「ではしばらく、皆で廻りましょう」
海斗は面白くなかった。
「おい京野、お前はいつでも湧いて出てくるな! 何なんだ?!」
「失礼だな、伏見君、偶然だよ」
一方で、田中拓海が中山春菜を見付けた。田中拓海は右手でVサインを作り、手の甲を右手に押し当てポーズを取った。
「やあ陽菜ちゃん、我が存在を覚えているかい?!」
陽菜は思い出せなかった。田中拓海は答えて貰いたかったのだ。
「ほら、白い割烹着で、うな重を出前した」
「んー、……知らない!」
あっさりと陽菜は否定した。葵は知らない男が声を掛けてきたと心配をした。
「陽菜さん、お母さんが知らない人と、話しちゃダメって言っていたよ。だからあっち行こう」
「うん」
気の毒に田中拓海は変態と勘違いされたのだ。葵は陽菜の手を取り離れた。
そして巨乳の浴衣美人が現れた、橋本七海だ。彼女はアップにした髪型を下から抑えた。
「あら伏見君、箱根以来ね。あなた達も来ていたのね」
「やあ、橋本さん。素敵な浴衣ですね、髪型もとても似合っているよ」
「あ~ら伏見君、上手になったのね。伏見君も素敵よ、ウフッ!」
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