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第29話 うなぎ屋「遠藤」 後編
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海斗は遠藤駿を見つけ事情を聞いた。ウナ重の下にゴキブリが入っていたと言うのだ。
海斗は落ち込む遠藤駿を励ました。
「それは大変なことだな。遠藤、クレームはオヤジさんに任せてうなぎを焼かないと、他のお客さんに迷惑がかかるよ」
「でも、こんなに忙しい時間に、うなぎを焼いたこと無いし。一人じゃ捌ききれないよ」
「じゃあ、田中を使ってみれば、半年も働いているんだろ。きっと、お前の手元ぐらいはやれるんじゃないか。こんな時に頼りに出来るのは、息子だけだよ!」
「ああ、分かった。こんな時だからこそやってみるか! 頑張らないとな!」
遠藤駿は田中拓海を厨房に呼んで焼き始めた。海斗はこれで他のお客さんに迷惑がかからなくなると思い少し安心をした。二階に上がる前に怒っているお客さんを壁の端から覗き見た。
しばらく考えた、見覚えのある男だった。ハッとして二階に駆け上がった。松本蓮に一階の出来事を伝え相談をしたのだ。
二人は作戦を練り一階に下りた。海斗は頭を下げているオヤジさんにメモを渡した。
オヤジさんはメモを見て確信すると態度を変えた。
「あんた! この忙しい時に、こんなマネをしてただで済むと思っているんですか!」
男は店主の行動に驚いた。
「可笑しいと思っていたんだ! こんなに熱い厨房で忙しく焼いているのに、虫なんか出る訳がねえってな!」
海斗は勇ましく親父さんに続いた。
「クレーマーのおじさんだよね。俺、覚えているよ! 元町の喫茶店で俺が腕を掴んだよね!」
クレーマーは海斗の顔をじーと見た。松本蓮は力強く歩み寄った。
「おじさん! 変な事しないでね! 今、動画を撮っているからね」
クレーマーは海斗と松本蓮の顔を思い出した。キョロキョロと目が動いた。
「ははは、冗談だよ、冗談。あ~、お腹いっぱいになったから、そろそろ帰るよ」
客は急に席を立ち、代金をテーブルに叩き付けて出口に向かって走った。
クレーマーは慌てて出て行くと、オヤジさんは店先に出て言った。
「二度と来るんじゃねえよ!」
オヤジさんはホッとして振り返った。
「伏見君、松本君、有り難う。礼はするからね、こうしちゃいられねえ」
オヤジさんは厨房に走った。海斗も松本蓮もホッとして二階に戻って行った。
「蓮、上手くやったな!」
「海斗こそ、上手くやったよ! 動画は上手く撮れたかな?」
「ああ、ばっちりだよ! これも校長先生のお陰だな」
二人はハイタッチをした。まさか、あのクレーマーに二回も会うなんて思ってもいなかったのだ。
アルバイトを終えると、オヤジさんが海斗達の元にやって来た。
「今日は助かったよ、俺もどうしら良いか困っていたんだ。メモを見て合点したんだよ。虫なんか居る訳が無いってさあ。今日はお礼に馳走するよ。上ウナ重で良いかい?」
親父さんはニコッと笑った。海斗達は喜んだ。
「えーホント?! オヤジさん、そんな高級なものを……有り難う御座います」
「礼を言うのは、こっちの方だよ。あれだけのお客さんが居たんだ。悪い評判でも立ったら大変な事になるからね。それに駿を厨房に入らせたなんて俺はビックリしたよ! 息子がが居てくれて、頼りになったよ! ハハハハ」
その日の終わりに、海斗達は毎日運んでいるが食べた事の無い、上うな重を口にした。
「海斗、美味しいな! こんなご馳走を食べられるなんて夢にも思わなかったよ」
「俺もだよ。凄いよ蓮、ご飯の下に又うなぎが入っているよ!」
遠藤駿は海斗達のテーブルに着いた。
「伏見、松本、今日は本当に有り難う。オヤジがとっても喜んでいてさあ。俺、あんな事、初めてだから、ただたた驚いて。何も出来なかったよ」
「俺たちは二回目だもんな、海斗!」
「そう、一回目の時は俺も考えられなかったけど、色々反省して学んだんだ」
「あ~、知っているよ。学園中の噂になったクレーマー事件だろ、あれ本当だったんだな。凄いなお前達は、あいつ逮捕されたんだろ? 今回はお金も置いていったし、警察には相談出来ないよな。でも悔しいよな、あんな事されて。あいつに何も出来ないなんてさ……」
松本蓮はニヤリと笑いスマホを操作した。遠藤駿のスマホに動画を転送したのだ。
「今、遠藤宛にクレーマーの動画を送ったから、オヤジさんと相談して使ってくれ」
遠藤駿のスマホが鳴った。遠藤駿はまたまた驚いた。
「えー、何でこんな事まで、やっていたの!」
「だから反省して、学んだんだよ。なあ海斗」
海斗も松本蓮も、誇らしげに笑った。
後日、遠藤駿はオヤジさんと相談して、この動画を警察に提出した。クレーマーは逮捕まで行かなかったものの厳重注意を受けた。その後も海斗達はアルバイトを順調に勤め上げ、夏の旅行代金を稼いだ。
海斗は落ち込む遠藤駿を励ました。
「それは大変なことだな。遠藤、クレームはオヤジさんに任せてうなぎを焼かないと、他のお客さんに迷惑がかかるよ」
「でも、こんなに忙しい時間に、うなぎを焼いたこと無いし。一人じゃ捌ききれないよ」
「じゃあ、田中を使ってみれば、半年も働いているんだろ。きっと、お前の手元ぐらいはやれるんじゃないか。こんな時に頼りに出来るのは、息子だけだよ!」
「ああ、分かった。こんな時だからこそやってみるか! 頑張らないとな!」
遠藤駿は田中拓海を厨房に呼んで焼き始めた。海斗はこれで他のお客さんに迷惑がかからなくなると思い少し安心をした。二階に上がる前に怒っているお客さんを壁の端から覗き見た。
しばらく考えた、見覚えのある男だった。ハッとして二階に駆け上がった。松本蓮に一階の出来事を伝え相談をしたのだ。
二人は作戦を練り一階に下りた。海斗は頭を下げているオヤジさんにメモを渡した。
オヤジさんはメモを見て確信すると態度を変えた。
「あんた! この忙しい時に、こんなマネをしてただで済むと思っているんですか!」
男は店主の行動に驚いた。
「可笑しいと思っていたんだ! こんなに熱い厨房で忙しく焼いているのに、虫なんか出る訳がねえってな!」
海斗は勇ましく親父さんに続いた。
「クレーマーのおじさんだよね。俺、覚えているよ! 元町の喫茶店で俺が腕を掴んだよね!」
クレーマーは海斗の顔をじーと見た。松本蓮は力強く歩み寄った。
「おじさん! 変な事しないでね! 今、動画を撮っているからね」
クレーマーは海斗と松本蓮の顔を思い出した。キョロキョロと目が動いた。
「ははは、冗談だよ、冗談。あ~、お腹いっぱいになったから、そろそろ帰るよ」
客は急に席を立ち、代金をテーブルに叩き付けて出口に向かって走った。
クレーマーは慌てて出て行くと、オヤジさんは店先に出て言った。
「二度と来るんじゃねえよ!」
オヤジさんはホッとして振り返った。
「伏見君、松本君、有り難う。礼はするからね、こうしちゃいられねえ」
オヤジさんは厨房に走った。海斗も松本蓮もホッとして二階に戻って行った。
「蓮、上手くやったな!」
「海斗こそ、上手くやったよ! 動画は上手く撮れたかな?」
「ああ、ばっちりだよ! これも校長先生のお陰だな」
二人はハイタッチをした。まさか、あのクレーマーに二回も会うなんて思ってもいなかったのだ。
アルバイトを終えると、オヤジさんが海斗達の元にやって来た。
「今日は助かったよ、俺もどうしら良いか困っていたんだ。メモを見て合点したんだよ。虫なんか居る訳が無いってさあ。今日はお礼に馳走するよ。上ウナ重で良いかい?」
親父さんはニコッと笑った。海斗達は喜んだ。
「えーホント?! オヤジさん、そんな高級なものを……有り難う御座います」
「礼を言うのは、こっちの方だよ。あれだけのお客さんが居たんだ。悪い評判でも立ったら大変な事になるからね。それに駿を厨房に入らせたなんて俺はビックリしたよ! 息子がが居てくれて、頼りになったよ! ハハハハ」
その日の終わりに、海斗達は毎日運んでいるが食べた事の無い、上うな重を口にした。
「海斗、美味しいな! こんなご馳走を食べられるなんて夢にも思わなかったよ」
「俺もだよ。凄いよ蓮、ご飯の下に又うなぎが入っているよ!」
遠藤駿は海斗達のテーブルに着いた。
「伏見、松本、今日は本当に有り難う。オヤジがとっても喜んでいてさあ。俺、あんな事、初めてだから、ただたた驚いて。何も出来なかったよ」
「俺たちは二回目だもんな、海斗!」
「そう、一回目の時は俺も考えられなかったけど、色々反省して学んだんだ」
「あ~、知っているよ。学園中の噂になったクレーマー事件だろ、あれ本当だったんだな。凄いなお前達は、あいつ逮捕されたんだろ? 今回はお金も置いていったし、警察には相談出来ないよな。でも悔しいよな、あんな事されて。あいつに何も出来ないなんてさ……」
松本蓮はニヤリと笑いスマホを操作した。遠藤駿のスマホに動画を転送したのだ。
「今、遠藤宛にクレーマーの動画を送ったから、オヤジさんと相談して使ってくれ」
遠藤駿のスマホが鳴った。遠藤駿はまたまた驚いた。
「えー、何でこんな事まで、やっていたの!」
「だから反省して、学んだんだよ。なあ海斗」
海斗も松本蓮も、誇らしげに笑った。
後日、遠藤駿はオヤジさんと相談して、この動画を警察に提出した。クレーマーは逮捕まで行かなかったものの厳重注意を受けた。その後も海斗達はアルバイトを順調に勤め上げ、夏の旅行代金を稼いだ。
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