Close to you 可愛い女の子達は海斗を求めた

小鳥遊 正

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第27話 海斗の部屋

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 お昼に近づきキッチンから美味しい香りがリビングに届いた。
 中山美咲は気が付いた。
「とっても良い香りがするね、これはスープの香りかしら」
 林莉子は首を傾げた。
「でも誰が? お母さんでも帰って来たのかな」
 小野梨紗も続いた。
「誰も帰って来てないよ」
 鎌倉美月は答えた。
「さっきまで葵ちゃんはテーブルに座っていたしね。でも作る人は彼女しかいないよね」
 海斗はにんまりしていると、中山美咲は海斗の顔を見抜いた。
「伏見君、何か隠しているでしょう?」
 松本蓮は微笑んだ。
「わ~、葵ちゃん可愛い! とっても似合うよ」
 その姿はまさに幼妻。可愛い幼妻が暖かいスープを用意してくれたのだ。
「良かったら、お昼にして下さい。サンドイッチのお供にスープを作りました」


 皆はダイニングテーブルに着いた。葵はテーブルに差し入れのサンドイッチとポタージュスープを並べた。
 小野梨紗は驚いた。
「すっごーい! このスープ、あの短い時間で作ったの?」
葵に感謝して昼食が始まった。葵のスープは絶賛だったのだ。
 普段から料理を作る中山美咲は感想を口にした。
「あの時間で、このクオリティーは料理が得意な女の子ね」
 林莉子も驚いた。
「この歳で料理が得意なんて、将来、男の胃袋を掴んじゃう女になるわね。もしかして伏見君、もう胃袋、掴まれちゃっているんじゃ無いの?」
 海斗は照れながら答えた。
「実は、掴まれちゃっているの! エプロン姿も可愛いでしょ。で、でも妹だからね!」
 料理の出来ない小野梨紗は、既に胃袋を掴まれた海斗と葵ちゃんが同じ家に居ることに落胆した。
 中山美咲は優しく睨んだ。
「伏見君は妹さんに、べったりなのね!」
中山美咲は、葵に焼き餅を焼いた。
「そう、自慢の妹なの。でも妹だからね……ハハ」

 松本蓮は鎌倉美月を見つめた。
「美月ちゃん美味しいね」
「そうね、貴方。美味しいわね」
 二人は、また並んで座っていた。林莉子は二人に水をさした。
「もうー、止めてよ! 見ているこっちが恥ずかしくなるでしょ-!」

 小野梨紗は、もぞもぞと鎌倉美月に口を開いた。
「ねえこの間、教えて貰えなかったけれど、いつから松本君の事が好きだったの?」
鎌倉美月に視線が集まった。
「実はね、幼稚園のプールで溺れかけた時に先生も友達も誰も気付いてくれなかったの。子供ながらに死んじゃうと思たの。苦しい私を助けてくれた人が蓮だったの。その時から少しずつ近くに居たいなって思ったの」
皆は歓声をあげた。その話を聞いて小野梨紗は好感を持った。
「長い片思いだったのねー、松本君は鈍感だからねー。海斗はもっと鈍感だよねー!」
女子は笑った。
 小野梨紗は小さな頃、迷子になって海斗が助けてくれた日の事を思い出していた。小さな頃の記憶を引きずって、この歳になるのは私だけじゃ無いのだと思った。

 昼食が終わり、葵と海斗は一緒にお皿を洗っていた。
「お兄ちゃんと二人で、キッチンに立つのは初めてだね。何か嬉しい」
「そうだね葵、最近まで何でも一人でやっていたのにね。助かるよ」
「お兄ちゃんのお友達、明るくて楽しい人達だね、しかも美人ばっかり。一緒に居て楽しかったよ」
「俺も良い友達だなって、思っているんだ」
海斗と葵は話に夢中になっていた。

 一方、小野梨紗は鎌倉美月から海斗の部屋を聞き出していた。小野梨紗は中山美咲を誘って海斗の部屋に忍び込んだのだ。

「すっごい、ドキドキするね、中山さん。私こんなにドキドキしたのは修学旅行以来よ」
「私もドキドキするよ。断りも無く人の部屋に入るなんて、見つからない内に戻ろうよ」
「へ~、海斗、部屋綺麗にしているじゃん」
「伏見君が、ここで生活しているのね、男の子の部屋ってこんな感じなのね」

 小野梨紗はベッドの周りを探っていた。海斗が隠していると思われる本を探していたのだ。そして遂に探し出した。
「あったー! やっぱり男ね~。こんな本を見ているなんて、わ! やらし」
「きゃー、ほんとだー、小野さん、きわどい写真ね」

 二人は海斗のベッドの上で膝を崩し座っていた。
 中山美咲は心の声が漏れた。
「伏見君、制服フェチなのかしら、次のページは体操着なのね、伏見君のエッチ!」
 小野梨紗は海斗の枕に顔を沈めた。
「わー、海斗の匂いがする」
 中山美咲もやってみた。もう変態が止まらないのだ。二人は海斗のベッドの上で、はしゃいでいた。

 キッチンに居た海斗は、二階の物音に気が付いた。リビングに行くと小野梨紗と中山美咲が居なかったのだ。海斗はハットした。慌てて自分の部屋に向かうと、二人はベッドの上で騒いでいた。

「な、な、何?! 何でここに居るの?」
小野梨紗は、慌ててエロ本を体の陰に隠した。海斗は隠した先を見ると隠していた本の角が見えた。

「えー! 見たの、見ちゃったの、それダメな、やつじゃん」

 海斗は声の大きさも気にせずに本当に驚いた。その大きな声を聞いて、皆は二階に駆け上がった。
海斗は廊下に体を向けて、何でも無い素振りをした。
「どうしたのかな? 皆、上がって来て?」

 海斗は入り口を塞ぐ様に立っていた。可笑しいと思った林莉子は海斗を突破し部室した。

 林莉子はすぐに本を見つけた。
「わー、やらしいー! 伏見君のすけべ! 変態! 信じられない」
 林莉子は中山美咲の腕をひっぱり、階段を下りて行った。
「伏見君、ご免なさい」
 跡を追うように小野梨紗も退室をした。
「海斗、健全な男子で宜しい!」
 葵も続いた。
「お兄ちゃんのエッチ!」
 葵も下りた。海斗は鎌倉美月を見た。
「美月は、嫌わないよな?」
「まあね、でも、ちゃんと隠しておきなよ!」
 鎌倉美月も下りていった。

 最後に残ったのは松本蓮だった。
「なあ蓮、ちゃんと隠してあったんだよ、ちゃんと。なんで見つかったのかな?」
「なあ海斗、俺は理解できるぞ。我が友よ、悲しい出来事だったな。一緒に下りよう」
肩を落とす海斗に同情する松本蓮だった。

 海斗と松本蓮がリビングに降りると、本の話題で持ちきりだった。小野梨紗はジェスチャー付きで説明をしていたのだ。葵まで輪に入り笑っていた。海斗はしばらく立ち直れなかった。勉強を再開したが、海斗が教える度に相手がクスクス笑って手に付かなかったのだ。

 三時になり再びティータイムとなった。葵はジュースとお菓子を並べると、皆は席に着き休憩に入った。
 小野梨紗は提案をした。
「ねえ、もう時期、夏休みだよね、皆で旅行に行こうよ! どうかな? 良かったら、葵ちゃんも一緒にね」
 皆は笑顔て賛成した。林莉子は皆に相談を始めた。
「一泊二日でいいかな」中山美咲も続いた。
「莉子は、計画する事が得意だから適任だよね」
「一泊二日なら近場で、伊豆、箱根、または東京を超えて千葉の房総半島は、どうかな」
 海斗は皆の意見を聞いた。
「誰か、行きたい所がある人?」
皆は顔を見合わせた。手を上げる人がいなかったのだ。

 するとソワソワした小野梨紗が手を上げた。
「箱根に行きたい! 地獄みたいな大涌谷を見たい。ヨネッサンに行っていろんなプールで遊びたい! 箱根神社でお参りして、芦ノ湖の海賊船に乗ってみたいなー」
 小野梨紗は、既に調べていたのだ。海斗は皆を見回した。
「皆、箱根でいいかな?」
 皆は笑顔で返事をした。海斗は鎌倉美月に聞いた。
「美月、良いのか? いつもなら日帰り旅行を自分から言い出すのに」
 鎌倉美月は松本蓮を見た。
「蓮と行けるなら、どこでもいいよ」
 松本蓮は赤面した。
「やっぱ美月、キャラ変わっているよ!」

 鎌倉美月は、今まで幼馴染みの男子に思考を合わせて生活を送っていたのだ。今は本来の優しい女の子でいられるようになったのだった。
 休憩の後に片付けをして夕方五時すぎに解散となった。海斗と葵は友達を見送った。

 その日の夕食は、葵がカレーライスを作った。葵の作る食事はとても美味しく、海斗はおかわりをした。葵は明子の様に手際よく家事をこなした。
 楽しかったが疲れた一日でもあり、海斗は早めに眠りたかった。部屋に戻るとベッドはぐちゃぐちゃのままだった。シーツを直し横になると、枕から女の子の匂いがした。小野梨紗と、中山美咲の匂いだ。女の子の匂いに包まれて眠りについた。

 夜中の二時を回る頃、海斗の部屋にノックが響いた。海斗は目を覚まし、そーっとドアを開けるとパジャマ姿の葵が立っていた。
「葵、葵どうしたの?」
「胸が苦しくて眠れないの」
「タクシーで桜木町の夜間病院へ連れて行こうか?」
「ううん、心配だから一緒に寝て欲しいの」
「うん、分かった。じゃあ葵が寝付くまで横に居てあげるよ」
「うーうん、お兄ちゃんのベッドで寝たいの、お兄ちゃんのそばに居させて」
「えっ! 俺、お兄ちゃんだけど男だよ」
「分かっているよ、何にもしない事も。……だからいいでしょ」

 海斗はベッドに戻り、葵は海斗のベッドに入って来た。シャンプーの良い香りがした。海斗は、すっかり目が覚めた。二人の呼吸はお互いに聞き取れる距離なのだ。海斗は仰向きの姿勢になり天井に顔を向け目を閉じた。一時間ぐらい過ぎた頃、首だけ回し葵の顔を見つめた。葵はこちらを向いて、すやすや寝むっていた。海斗は安心して寝むろうとした。

 その時だった、熟睡した葵の片足が海斗の足に乗って来たのだ。葵は無意識に海斗を抱き枕のようにして足を絡めた。

「しまった!」

 ここまで冷静にしていた海斗の息子が反応してしまったのだ。

 海斗は慌てて、自己暗示を掛けた。
「落ち着け俺、落ち着け俺」しかし葵の膝が容赦なく刺激する。他人に触られる事の無いデリケートゾーンが、可愛い女の子の膝でスリスリされているのだ。ここで葵が目を覚ませば、変態扱いされてお父さんは離婚させられてしまう。俺だって幸せな日々が泡となってしまう。泡と言えば、葵からシャンプーの良い香りがする。やばい、またシャンプーの存在を意識してしまった。
 この媚薬が女の子の存在を必要に意識させてしまうのだ。ベッドから出よとしても葵が邪魔して出られない。海斗の息子を沈める為に必死に耐えた。外が明るくなる頃、ようやく睡魔に襲われ寝むる事が出来たのだった。海斗の長い一日が終わった。

 葵は目覚めると、海斗を抱き枕のように抱いて寝ていたのた。葵は恥ずかしくなりゆっくり姿勢を戻した。昨晩は海斗の仲の良い女の子を見て、胸が苦しくなったのだ。海斗の横で寝る事で安心が生まれ、眠りに着けたのであった。葵は海斗を起こさないように、静かに自分の部屋に戻っていった。
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