Close to you 可愛い女の子達は海斗を求めた

小鳥遊 正

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第19話 修学旅行2 札幌観光

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  海斗のグループは、最初の目的地「さっぽろ時計台」へ足を運んだ。
「なあ海斗、地図だとこの辺なんだけどな、ビルばっかりだ」
「蓮、有ったよ! さっぽろ時計台だ。赤い星印が可愛いね」
 小野梨紗は気が付いた。
「ねえ海斗、周辺のビルに比べて変な感じがするわね」
「ホントだね。ここだけ近代化に取り残された感じがするね」
 皆はうなずいた。松本蓮がカメラを用意した。
「ここは建て替える訳にいかないから、かもね。ねえ毎回、記念写真を撮ろうよ! もちろん三脚使を使ってね。それと俺が撮ったスナップ写真はSNSのグループに入れるから皆で見てよ!」
 皆は喜んび、林莉子は松本蓮を見た。
「い~わねー、松本君の高級カメラで撮ってくれるのね。良い記念写真になりそうね」
 まずは集合写真一枚目。皆はとびっきりの笑顔で写真に写った。

 次に「北海道庁赤レンガ庁舎」を巡り、「大通り公園」の中間付近にやって来た。先程までの狭い歩道を歩くのとは違い、横に広がって歩けるようになった。公園に入る前は、海斗は小野梨沙と、松本蓮は鎌倉美月と、中山美咲は林莉子と二人ずつ縦列して歩いていた。
 ここぞとばかりに林莉子が動いた。
「ねえ小野さん、小野さんは北海道に来た事あるの?」
 林莉子は中山美咲に合図を送った。中山美咲は照れながら海斗に歩み寄った。
「伏見君、色々見られて楽しいね、思ったより迷わずに歩けたね」
 海斗は振り向き中山美咲に答えた。
「中山さん、俺も楽しいよ。皆で旅行するって楽しいね。それにスマホの地図はホントに助かるね」
「ええ、知らない所でも伏見君が先に歩いてくれるから助かるわ」
 大通り公園とはいえ、海斗の取り巻きは松本蓮と鎌倉美月を外し、横並び四人で歩いた。まるでヒーロー戦隊が悪者に向かって歩く様だった。

 すると香ばしい香りが漂ってきたのだ。林莉子は大きなリアクションを取った。
「わー! 小野さん、何か香ばしくて美味しい香りがしない?」
「うん、良い香りがする」
 林莉子は小野梨沙の腕を引っ張り、焼きトウモロコシの屋台に向かった。遂に横四列が崩れた。中山美咲と海斗はペアとなったのだ。恐るべき女のチームワーク、恐るべし林莉子。

 海斗は笑い、中山美咲に話し掛けた。
「林さんは面白いね、食いしん坊なのかなー。でもこんな事を言っても俺も食べるけどね」
 海斗達も焼きトウモロコシの屋台に向かった。
「ねえ伏見君、折角だから私も食べてみたいな、でもお昼を食べたばかりだし……。伏見君、私、買うから半分食べてよ。私、食べるのが遅いから先に食べていいよ」
 中山美咲は妹と分けるような気持ちで軽く発言したが、大胆な自分に気付き赤くなった。
 海斗は気づかった。
「それじゃあ、冷めちゃうから交互に食べ合おうよ。良い考えじゃあない?」
 中山美咲は真っ赤になった。真っ赤な顔をした中山美咲を見て、海斗は現実に戻された。
「う、嘘、間違い! それじゃあ、新婚さんじゃないか! また余計な言葉を……。ついつい蓮と話しているように言ちゃった、ゴメン」

 海斗も赤面して黙り込み、二人はトウモロコシの屋台に着いた。売り場を見渡すと半分に割ってあるトウモロコシの値札が有った。観光客用に配慮されていたのだ。
「伏見君、心配しなくて良かったね」
「ホントだね、は、は、……あっ、ジャガバターもあるんだね。北海道らしいよね」

 海斗達はトウモロコシを半分ずつ食べられるように買い、ジャガバターは二つ買って、シェアして食べ合った。
 松本蓮は食べている様子の写真に納めていた。海斗は松本蓮からカメラを借りて松本蓮も入った写真を撮りあった。
 小野梨紗は夏祭りを思い出した。
「ねえ、鎌倉さん、なんだかお祭りみたいだね」
「そうだよね。お陰で美味しいものが食べられるね」

 林莉子はテレビ塔を指さした。
「今度は、あそこよ! あそこが今日の最終目的地よ」
 小野梨紗は疑問を持った。横浜のマリンタワーが浮かんだのだ。
「ねえ、海斗、横浜マリンタワーと、さっぽろテレビ塔は、どっちが高いの?」
「横浜が札幌に負ける訳無いじゃん! 多分横浜だよ。蓮はどう思う?」
「でも、こっちの方が高そうに見えるよ?」
 鎌倉美月がスマホで調べた。
「正解は、……さっぽろテレビ塔でした!」
 海斗は肩を落とした。
「チェー! 横浜が負けた……」

 海斗達は札幌テレビ塔に到着した。入場料を払い展望台へ上がると、小野梨沙は眺望の良さに興奮した。
「わー、凄い見晴らしねー。大通り公園が先の先まで見えるよ」
「ねえ莉子、札幌の街はホントに碁盤の目のように見えるのね」
「そうね、京都みたいね」

 松本蓮の姿が見えなかった。海斗は松本蓮を探した。
「ねえ、美月、蓮はどこに行ったの?」
「蓮は夢中で写真を撮っているわ。飛行機もそうだったけど、高い所から撮影する事が好きみたい。もしかして、どこか抜けているのかもね」
 林莉子は時計を見ながら皆に伝えた。
「私達も時間まで見て、観光バスに戻りましょう」
 海斗達は集合時間の十分前にバスに戻った。

 生徒の数を確認して観光バスは走り出した。長谷川先生はマイクを持ち注意を促した。
「はい、これからホテルに向かいます。いいですか、ホテルに着いたら、ふざけてホテルの備品を壊さないように。羽目を外した生徒の為に先生達が誤りに行く事になるから十分注意するように。貴重品は備え付けの金庫、または持ち歩く事。また部屋で男女が交流する事は、絶対に無いようにして下さい」

 このホテルでは、フロア別に男女が別れツインベッドの個室を生徒に割り振られていた。お風呂は部屋のユニットバスを使い、大会議室を学生専用の食堂に変え、ビュッフェ形式にて食事を取らせるスタイルである。
 海斗は松本蓮と、鎌倉美月は小野梨沙と、中山美咲は林莉子と部屋を共にした。生徒は入室し夕食まで一時間余りを部屋で過ごした。

 (海斗と松本蓮の部屋にて)
「なあ蓮、思ったより部屋が広いね、あ~疲れたー!」
 海斗はベッドに倒れ込むと、松本蓮もベッドに倒れた込んた。
「今日はさ、飛行機も楽しかったけど自由行動も面白かったな。お陰でいっぱい写真を撮っちゃった」
 二人は少しの間、話をすると電池が切れた様に目を閉じた。

 松本蓮のスマホが鳴った。鎌倉美月からだ。
「ちょっと、何時だと思っているの! 皆、集まっているわよ」
「う、うん。えー、もうそんな時間なの! ゴメン、うとうとしちゃって、すぐ向かう!」

 松本蓮は海斗を起こし、慌てて食事の会場に向かった。鎌倉美月は小野梨沙と座り、海斗達の席を確保していた。
「ねえ、こっち、こっち!」
 海斗達は慌てて席に座わり、スマホと鍵をテーブルに置いた。

 長谷川先生は生徒達を見回すと話し始めた。
「はい、これから夕食です。マナー良く頂くように。食べ終わったら自由解散です。部屋に戻って、ゆっくり休んで下さい。それでは食事を始めます。いただきます」
 生徒達も挨拶をして夕食を始めた。
「いただきます!」

 海斗は横のテーブルを見ると、中山美咲と林莉子が座っていた。
林莉子は軽蔑をした顔で海斗達を見た。
「伏見君、どこで油を売っていたのよ。まさか昼寝なんて言わないでよね? 明日の朝は時間守してよね!」
 松本蓮は海斗に耳打ちをした。
「なあ海斗、ああ言うところが、林さんって可愛くないよな!」
海斗はうなずいた。

 それぞれ好きなものをお皿に取り食べ始めた。このホテルの売りは夕食にカニを出しているのだ。カニは一番の長い列が出来ていた。

 食事の最中に松本蓮は、写真を見て笑っていた。
「なあ蓮、何の写真を見て笑っているの?」
 松本蓮は飛行機で窓をのぞき込む、鎌倉美月の顔写真を海斗に見せた。
「へ~、可愛く撮れているね。本物より良いよ」

 鎌倉美月はカニを夢中で食べていた。小野梨沙は鎌倉美月に話し掛けた。
「ねえ鎌倉さん、海斗達おかしいよ。何の写真を見て笑っているんだろうね?」
 鎌倉美月は海斗達を見つめた。
「海斗、何の写真を見ているの?」
 鎌倉美月は海斗達の態度が可笑しいと思い、カメラを取り上げて画面をの見つめた。そこには鎌倉美月のアップの横顔が写っていた。
「蓮! なんでこの写真見て、笑っているのよ?!」
「だって、可愛いんだもん、なあ海斗」
「うん、とっても可愛いよ。美月が女の子みたい。クク!」
 小野梨沙はカメラの画面を覘いた。
「本当に可愛いよ。いい写真なのに何で笑うの、海斗?」
「だってずっと性別なんか意識してこなかったのに、可愛い女の子の表情をするんだもん! 何だか可笑しいじゃん!」
 松本蓮は力説した。
「やっぱ写真ってすごいね、一瞬を切り抜くんだよね」
 海斗は笑った。
「いやいや、蓮の腕でしょう、ハ、ハ、ハ、ハ」
 松本蓮も続いた。
「ハ、ハ、ハ、ハ」

 鎌倉美月は女の子あつかいしない二人に怒った。カメラを削除のモードへ操作した。
慌てて松本蓮はカメラを取り上げた。
「ごめん、ごめん、可愛かったのは本当だよ。だから消さないで! あ~あ~、俺の大事なカメラがカニだらけじゃん!」
「知らないわよ、蓮が悪いんでしょ!」
 海斗は二人の間に入った。
「そんなに怒らないの。ゴメンね。笑って美月! ね、仲直り」
 海斗は鎌倉美月をなだめると小野梨紗は呟いた。
「三人は、やっぱり仲が良いのね」
小野梨沙は三人の仲の良さが羨ましかった。

 中山美咲と林莉子は食事を済ませると先に部屋に戻った。海斗達のテーブルはビュッフェの終わり時刻まで話をしていた。食事の会場を出ると、海斗と松本蓮はお土産コーナーに立ち寄った。海斗は葵とお母さんのお土産を探した。しばらく見回ったがピンと来るモノが見つからなかった。海斗は葵と面識のある小野梨紗に相談しようと思っい部屋に向かった。

 すると部屋の前には鎌倉美月と小野梨紗が立っていた。松本蓮は頭を抱えた。
「もー、さっき誤ったじゃん! 未だ怒っているのー?」
「バカねー、あなた達が部屋の鍵を間違えたから入れないのよ! 早く鍵を出しなさいよ」

 海斗は鍵を探した。その時だった、見回りをする先生の声が聞こえた。松本蓮は慌て出した。
「海斗、やばい、やばいよ! 男子のフロアに、女子が居たら怒られるよ」
海斗も慌てて、鍵が見付から無かった。
 鎌倉美月は言った。
「もう早く、早く! もう、ダメだよ。海斗たちの部屋に隠れようよ!」

 鎌倉美月は持っていた鍵でドアを開けると、なだれ込むように皆は部屋に入った。
海斗は思った、まずいなあ、こんな事。……想定外だよ。
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