Close to you 可愛い女の子達は海斗を求めた

小鳥遊 正

文字の大きさ
上 下
16 / 40

第16話 課外活動

しおりを挟む
 放課後に、海斗、松本蓮、鎌倉美月、森幸乃は、写真部の部室に居た。
 松本蓮は課外活動を提案した。
「たまには写真部らしく、写真を撮りに行かないか?」
 鎌倉美月は答えた。
「そうね、お喋りの時間も楽しいけど写真部だしね、森さんも一緒ですよ。行きたい所は有りませんか?」

「う~ん、みなとみらいでお洒落な風景を撮るのも良いけど、出来れば自然なモノがいいかな。学校から近いし、山下公園はどうかな、松本君」
「そうだねー、景色は良いけど、この時期はお花や植物がイマイチかな。海斗はどう?」
「それじゃあ動物園はどうかな? 花は関係ないし、生き物も撮れるし」
 松本蓮はピント来た。
「それ良いね! じゃあ皆、野毛山動物園はどうかな? 森さんはどうかな?」
「うん良いよ。でも名前は聞いた事が有るけど、言ったことは無いわ……どんな所なの? 伏見君」
「日ノ出町駅から徒歩二十分位の所に有って、小さい動物園だけど、ライオンもキリンも居るんだよ」
「へー、近いし大きな動物が居るのね。行ってみたいな」
 松本蓮は皆の顔を見回した。
「それじゃあ、明日は天気も良いし、野毛山に課外活動に行こう!」
 皆は首を縦に振り賛同した。

 その日の夜、松本蓮はニュースを見て、明日の天気予報を確認していた。
「続いて横浜の天気は晴れ、所により突風が吹くでしょう……」
 松本蓮は晴れを確認し、安心をしてカメラの手入れをした。

 (放課後の課外活動)
  四人は野毛山動物園の直前の坂を登っていた。海斗は息を切らして鎌倉美月を見た。
「いつも思うけど、この坂道きついよね、きつすぎ!」
「うふ、だって野毛山だもん。坂じゃないのよ、山をしっかり登っているのよ。お楽しみが有るんだから、このぐらい登らないとね」

 皆は動物園の入り口に集まると、森幸乃は話し掛けた。
「へ~、こんな所にあるのね。しかも無料なのね! 今時、珍しいわ」
 入園すると可愛いライオンの形をした募金箱があった。
 鎌倉美月は森幸乃に説明をした。
「無料なんて珍しいから、少額だけど協力するの、継続してもらいたいからね」
 鎌倉美月は募金箱に小銭を入れると、続けて海斗、松本蓮、森幸乃も募金箱に小銭を入れた。

 歩き始めると、レッサーパンダが出迎えてくれた。森幸乃は駆け寄った。
「わー、可愛いー! レッサーパンダだよ」
 森幸乃はスマホを取り出し撮り始めた。松本蓮は話しかけた。
「そうだよ森さん、写真は興味をそそられるモノに被写体を合わせ、シャッターを切る。これが楽しいと思えると、写真を撮る事に興味が湧くんだよね。その調子で撮ってみてね」

 皆は無言で写真を撮り始めた。しばらくして松本蓮は、森幸乃の写真を見せて貰った。
「いっぱい撮れたね。今度は背景を意識して、撮るともっと良い写真になるよ。例えばレッサーパンダは中心に置いたまま、檻の外の木々や空の青が入るようにね。背景が殺風景な鉄小屋から自然に居るみたいに写すんだ。やってみるね、こっち来て」
 松本蓮は見本を見せた。

「本当だー! 背景のお陰で、活き活きしている様に見えるわ。松本君、凄い! 」
 鎌倉美月は焼き餅を焼いた。
「私の時には、あんなに優しく教えてくれなかったのに! ねえ、海斗どう思う?」
「そうかもね、美月、でも丁寧に教えて貰えば、きっと写真が好きになってくれるよ」
「そう言う事を言っているんじゃ無いの! 」
鎌倉美月は八つ当たりをした。

 森幸乃は首を傾げてた。
「なんでレッサーパンダって、小さいのにパンダって言うんだろうね?」
 海斗は学者のマネをして答えた。
「エッヘン! 森くんは既に答えを言っているんだよ! 元々はね、レッサーパンダをパンダって呼んでいたらしい。パンダは竹を食べる珍しい動物に名付けられたの。後で竹を食べる大きな白黒の動物が見つかって。それをジャイアントパンダと呼び、元々のパンダを小さいパンダ、レッサーパンダと呼んで区別するようになったのだよ。森くんは解ったかな。因みに動物学的には別の分類の生き物なんだよ」

 皆は海斗に拍手をし、森幸乃は答えた。
「伏見君、すごーい! 博学なのねー」
 海斗は照れた。
「松本君、今日は空いていて良かったね」
「森さん、平日を選んだ理由は、そこなんだよ。休みだと人が邪魔で写真が撮りにくいでしょ」
「流石、松本先生!」
 松本蓮も照れた。森幸乃は人を持ち上げるのが上手なのだ。次々と歩き、ライオン、虎、しま馬、キリンを撮ってまわった。

 松本蓮はキリンの柵の前で、鎌倉美月に撮影のアドバイスをしていた。
 海斗は森幸乃に話しかけた。
「森さん、今度は俺にも撮った写真を見せて欲しいな!」
 森幸乃は海斗に写真を見せると、海斗はアドバイスをした。
「良く撮れているね。キリンのような大きな動物を撮る時は、自分が移動するのは難しいよね。違う方法でアプローチするのも一つなんだよ。こう言う時はカメラを置き、構図探しからするといいかな。カメラマンがよくやるポーズ、トリミングポーズって言ってね、両腕を被写体に向けて伸ばし左右の指で、フレームを作るの。そのフレームを覗きながら手前に引くと広角、奥へ伸ばせば望遠。カメラマンがあのポーズを取っている時は、立ち位置から見える景色のどこを切り取ろうか考えているんだ。カメラを覗くと視界が狭くなるからね。対象を決めてからカメラを覗くんだ。
 それとキリンの場合、キリン全体を撮ると背景の比率が多くなるから、キリンを撮っているのか、キリン入りの景色を撮っているのか、写真を見た人には伝わりづらくなるよね。対象をキリンに絞ったら、敢えて肩から上のキリンを撮るの」

 海斗は自分の写真を見せた。
「伏見君、凄い! キリンの表情まで見えていいね。伏見君も写真に詳しいのね」
 森幸乃が誉めると海斗は赤くなった。
「見る人に何を伝えたいのか考えて撮るの。これも蓮の受け売りだよ」

 皆は次々と歩きながら沢山の動物を撮影した。海斗は松本蓮に体を向けた。
「なあ蓮、そろそろ休憩所が有ったよね、休もうよ!」
「うん、そうしよう」

 四人は休憩室に入り、お互いの写真を見せ合った。松本蓮は森幸乃に尋ねた。
「どうだった森さん、楽しめたかな? 嫌になってない?」
「丁寧に教えてくれるから、とっても楽しかったよ」
「なら良かった。また課外活動しようね。それと大事な事があるんだ。沢山写真を撮ったと思うけど。帰ったら選別しないとね。ピンボケや同じような写真とか要らない写真を削除した方がいいよ。一つ一つ見ていると結構時間を取られる作業だからね。これを怠ると収拾がつかなくなるし無駄にメモリーを占有しちゃうからね。最悪、スマホがフリーズする場合があるから気を付けてね」

「はい、分かりました。しっかり整理しないといけないのですね、松本先生!」
「やめてよ~、先生なんて恥ずかしいよ、森さん」
四人は休憩所を出て、出口に向かった。

 鎌倉美月は森幸乃とガールズトークで、盛り上がっていた。馬車道に新しく出来た行列の出来るスイーツ屋さんの話らしい。海斗と松本蓮は二人の後ろを歩いた。
「なあ海斗、こうして楽しく写真が撮れるのも、お前のお蔭だな。何か悪いな」
「俺のお陰じゃ無いよ。俺は楽しいよ、ほら前の二人を見てご覧よ。女子だって楽しんでいるだろ」

 皆は出口に向かい、階段を上がっていた。その時だった、強い風が吹いた。乙女のスカートが舞い上がったのだ。松本蓮と海斗は、今日一番のシャッターチャンスに遭遇したのだ。しかしカメラなど準備出来る訳も無かったが、松本蓮は肉眼で高速連続シャッターを切った。「カシャー、カシャー、カシャー」
 いつ、こんな能力が開花したのであろうか。一コマずつ映像は脳裏に焼き付けられた。海斗も過去の遊園地デートで、この能力を取得していた。「カシャー、カシャー、カシャー」
 彼女達の舞い上がったスカートと、露呈した乙女の下半身は夕陽を浴びて輝いていた。鎌倉美月は、ぽてっとした柔らかそうなお尻に純白な下着が映えた。森幸乃は小さくキュートなお尻に淡い水色の水玉模様の下着が映えたのだ。

 風が去ると、すぐに引力に従いスカートは舞い降りた。そして振り返る女子、海斗達も女子にシンクロするようにそっぽを向いた。更に松本蓮は口笛まで付けてとぼけた。いささか不自然だ。継続して凝視する女子。頃合いを見て海斗達は前方に顔を戻した。 
 だが未だ、凝視は続いていた。女子は海斗達の表情を見抜いた。残念な事に男子の顔は赤面し、緩みきっていたのだ。女子の表情は怒に変わった。
「蓮、見たでしょ?」
「美月、見てないよ!」
「伏見君は見たでしょ?」
「森さん、絶対に見ていません!」

 その後も、しばらく女子の追求が続いたが男達は口を割らなかった。そこから先は突風対策で海斗達が先頭を歩いた。それはそれで緩んだ顔を見られなくて都合がよかったのだ。鎌倉美月の追及は、解散するまで続くのであった。
  鎌倉美月は言った。
「だって、見たって顔に書いて有るじゃーん!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

処理中です...