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第7話 恐怖の館

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 皆が次に向かったアトラクションは「恐怖の館」定番のお化け屋敷だ。
 海斗は林莉子に話しかけた。
「今まで居た、体格の良いスタッフジャンパーを着た人達が居なくなったね」
「そうね、もうすぐお昼だから交代したんだよ。きっと」
 海斗は首を傾げた。中山美咲に見付け話しかけた。
「中山さん、楽しんでいる?」
「ええ、こう言う所、あまり来ないから楽しいわ。伏見君も楽しそうだね、小野さんと一緒で!」
 海斗は驚いた。中山美咲の後ろには目が付いているのかと思った。
「中山さんこそ、京野と一緒で楽しそうだったね!」
 海斗は嫉妬から口が滑ってしまった。すると林莉子が間に入った。
「まあ、まあ、お二人さん。似たもの同士なんだから……楽しくやろうよ」
 二人は我に返った。
「ごめん中山さん、京野が居なくなったし、その分、楽しくなるよ、きっと」
「そうね、強引な人が居なくなったから、楽しめるよね、伏見君」

 お化け屋敷は二グループに別れて進むと事になった。一つ目のグループは、伏見海斗、中山美咲、林莉子。二つ目のグループは、松本蓮、鎌倉美月、小野梨沙となった。海斗と中山美咲をくっつけたのは、林莉子が仕組んだ、くじ引きだった。

 そして一つ目のグループが出発をした。海斗は所詮、子供騙しと高を括っていたため、驚かなかった。しかし女子は違った。中山美咲と林莉子は、恐がり海斗の腕に抱きついた。三人はお化けのトラップを進んだ。海斗は、まさに両手に華なのだ。

 しかし幸せな時間は、長くは続かなかった。海斗達の後方から悲鳴が聞こえた。
「ギャー!」
 それも男女混合の聞き覚えの有る声だった。ドンドン足音と声が大きくなった。後発の松本蓮のグループだった。松本蓮は同じく、両手に華にも関わらず、お化けが苦手だった。他の二人も作られた恐怖に耐えきれなかったのだ。一人一人の恐怖が共鳴して、集団パニックに陥ったのだ。せっかくの、おばけトラップも体験せずに走り逃げて暴走した、二つ目のグループは、一つ目のグループに接触して追い抜いた。

 海斗は第一走者の松本蓮に接触後転倒、仰向けに倒れた。第二走者の小野梨沙が林莉子に接触、前倒しに転倒した。第三走者の鎌倉美月が中山美咲を跳ね飛ばした。

 飛ばされた中山美咲は、お尻から床に落とされた。しかしその床には既に林莉子が倒れていたので慌ててかわしたが、そこには海斗の顔が有ったのだ。海斗は自分の顔に、中山美咲のお尻が迫って来のが分かった。一コマ、一コマ、スロー再生のように、その瞬間を覚えていた。中山美咲が転倒し、スカートが勢いよく舞い上がった。舞い上がったスカートからは、純白の下着が見えた。お宝ショットを脳裏に焼き付けたが、次のコマでお尻が迫ってきた。喜びも儚く、危機感を覚えた瞬間に、顔面に強い衝撃を受けたのだ。憧れの女の子のお尻が、純白の布一枚で接触していると言うのに、ときめくどころか、頭が割れる程に痛く気絶した。頭蓋骨に一時的な外圧が加わり脳が圧迫されたのだ。

 海斗はお化け屋敷外のベンチで横になっていた。松本蓮がお化け屋敷から運んだのだ。
 中山美咲は泣いていた。
「伏見君ごめんね、重かったよね、痛かったよね」
 ポタン、ポタン、中山美咲の頬から涙が流れ、海斗の顔に落ちた。
 海斗は気が付いた。温かいな~、何でココに居るんだろう。俺、何をしていたんだっけ? うっすら目を開けた。あれ、中山さんの顔が正面に見える。顔と体がこんなに近くに見える? もしかして膝枕? もうちょっと、こうしていいたいな、再び目を閉じた。
 ポタン、ポタン、中山さんが泣いている? 何で泣いているんだろう。飛ばされた時に、中山さんの下着を見ちゃったから怒っているのかも。起きなくちゃ、イテテテ! あれ? 体が動かない。
 中山美咲は心配をした。
「ねえ伏見君、起きて、伏見くーん」

 海斗はゆっくり目を開けた。中山美咲に小さな声で話しかけた。
「もう少しだけ、こうしていてもいいかな? とっても居心地が良いんだ~」
「良かった、目が覚めて。いいよ伏見君、特別だよ。ごめんね、重かったでしょ」
 暖かくて柔らかい彼女の膝枕は、女の子の良い香りがした。中山美咲は涙を拭いて微笑んだ。海斗はゆっくり体を起こしベンチに座った。

 皆は海斗の周りに集まり、様子をうかがった。海斗は皆を見回した。
「あ~、腹へったー! お昼、食べに行こうよ!」
 さっきまで心配をしていた仲間は笑らった。

 皆は東側のエリア(ワンダーアミューズゾーン)へ移動した。昼食を取り、午後から再び京野颯太が合流をした。
 京野颯太は後頭部を軽く叩き登場した。
「やあ~済みません、美咲さん。主役が抜けてしまい、寂しく有りませんでしたか?」
 中山美咲は苦笑で返し、海斗が代わりに答えた。
「寂しくなんか無いよ! さっきまでエスコートって言っていたくせに、今度は主役か!」

 再び、アトラクションに向かった。この東側のエリアは、ジェットコースターなど、絶叫モノのアトラクションが集まっていた。皆は立て続けに乗車した。
「ねえ林さん、京野が戻って着たら、また体格の良いスタッフジャンパーを着たスタッフが増えたね」
「あっ、伏見君も気が付いた? お昼休みから帰って来たんじゃないの」
 林莉子は遊園地に京野颯太と一緒に居られる事が楽しくて、スタッフの行動は気にもしていなかった。海斗はこれだけ機会が有っても、いつも小野梨紗と同乗するのは可笑しいと思い、疑いの目を京野颯太に向けるのであった。

 いよいよ最後の乗り物となった。ラストにふさわしいコスモクロック大観覧車だ。この観覧車は直径が百メートルあり、一五分で一週をする。側面には七色に光る照明と、デジタル時計が付いた大観覧車である。横浜港を代表する顔の一つでもある。
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