Close to you 可愛い女の子達は海斗を求めた

小鳥遊 正

文字の大きさ
上 下
6 / 40

第6話 コスモワールド

しおりを挟む
 見えて来たのは、松本蓮と鎌倉美月だった。松本蓮が手を挙げた。
「なあ海斗! 早いね、中山さんもお早うー」
「俺も中山さんも、今来たところだよ。蓮も美月も仲がいいねー」
 鎌倉美月は赤くなって答えた。
「海斗が一人で行くって、言ったからじゃん!」
「あ、そうだったね、ハハハ」中山美咲は三人を見た。
「三人とも仲が良いのね」
 次に到着したのは、林莉子だった。
「間に合って良かった。皆、もういるのね。京野君から電話が有ってね、車の都合で遊園地の入口で待っているから、だって」
 海斗は思った。金持ちは違うね、話題のリムジンで来るのだろうね。林さんも何で京野に電話番号を教えるんだよ。

 最後に小野梨沙が十五分遅れて現れた。小野梨沙はまるでファッション雑誌から飛び出したモデルの様に可憐に輝き、周囲は彼女に目を奪われた。
「おはよう、もう皆、揃っているのね! やっぱり日本人は時間に正確よね」

 海斗は思った、小野さんも半分日本人だろ、遅れるのも、遅れて謝らないのもアメリカ式なのか、厳しい事を思いつつも小野梨沙の可愛さに驚いていた。皆も、あまりの可愛さに遅刻の事など忘れ、先に来ていた友達も絶賛したのだ。

 小野梨沙は伏見海斗の左脇に立った。
「ねえ海斗、私、可愛い? ドキドキした? 私ね、海斗の為にお洒落していて、遅くなっちゃったの。ごめんねー」
 海斗の顔が緩んだ。小野梨沙は見惚れている海斗と腕を組むと、周りの友達は驚いた。そして海斗も驚いた。な、なんだ? 組まれた肘に柔らかい胸が当たっていたのだ。こんな可愛い女の子の胸が……いかん、いかん! 海斗は中山美咲の顔を見た。スッゲー怒っている! ホッペなんか、ふぐみたいに、パンパンになっていた。
「待って、待って違うの。小野さんが勝手に組んで来たの!」

 林莉子は、強い口調で言った。
「言い訳をする前に、伏見君、早く離れなさいよ!」
海斗はスッと小野梨沙から腕を抜いた。松本蓮は皆を見回した。
「じゃあ、揃ったから、そろそろ行こうか、きっと京野も首を長くして待っているよ」
松本蓮は皆を待ち合わせ場所に引き連れた。

 先に訪れていた京野颯太は、十名のスタッフを園内に配置していた。作戦は密かに始まっていたのだ。京野颯太の楽しい一日の始まりだった。

 京野颯太は大きく手を振った。
「お~い、美咲さ~ん、待っていたよー!」林莉子が応えた。
「京野く~ん、お待たせー!」
 林莉子は京野颯太の横に座り、「キャー、怖い」とか言いながら京野颯太に抱き付き、目と目が合い恋に落ちる乙女ストーリーを夢に描いていたのだ。 

 待ち合わせ場所は、ブラーノストリート・ゾーンの西側。回転する乗り物がまとまっているエリアだ。最初に選んだ乗り物は「ギャラクシー」円形の軌道を回転し、上昇と下降を繰り返す二人乗りのアトラクションだ。

 海斗は中山美咲の隣の席を狙うが、搭乗間際のスタッフ誘導により中山美咲は京野颯太と乗車した。海斗は悔しがった。海斗の隣は小野梨沙が座った。
「やっぱり海斗は、私と乗りたかったのね。私も嬉しいよ。怖わい時は、私の手をぎゅーと握ってもいいよ。特別だよ!」
海斗はサラリと聞き流した。

 小野梨紗はアトラクションが動き出すと、海斗に抱き付いた。歓声を上げて楽しむ姿は、海斗に幼い頃の彼女の記憶を想い出させた。海斗は無邪気な彼女を見て微笑んだ。懐かしい思いが心をくすぐったのだ。
 降りると林莉子が近づき、海斗に耳打ちをした。
「どうして中山さんと乗らなかったのよ?」
「俺だって乗るギリギリまで中山さんの横にいたんだよ。乗車間際でスタッフから誘導されてさ……、林さんだって、京野のそばにいて京野と乗ればいいのに」
「そうなのよー、私も乗車間際でスタッフから誘導されたのよ。それで京野君は美咲と座り、私は一人。このグループ7人だから恐れていたのよね。それがいきなりよ、いきなり一人なんだもん……」
林莉子は悲しい顔をした。
 海斗は勇気づけた。
「小野さん頑張ろうね。今度は上手くいくよ、リベンジ、リベンジ!」

 次に彼らが向かったのが、「ディスク・オー」円盤の外周に二十名程が外向きに座り、回転しながら振り子運動を繰り返すアトラクションだ。

 海斗達は乗車の列に並んだ。今度は誘導されないように注意して並んだが、また乗車間際にスタッフに誘導され中山美咲と離れた場所に座った。京野颯太は中山美咲、林莉子と並び、海斗は小野梨紗と並び動き出した。
 小野梨紗は微笑んだ。
「海斗、また一緒だね。わたし嬉しいー!」
 彼女は偶然が続き上天気だった。海斗は中山美咲と乗れない事が不満だったが、海斗は中山美咲の背後でもあり小野梨紗とアトラクションを楽しんだ。
 乗り物から降りると林莉子は興奮していた。
「美咲、嬉しかったよー、京野君と乗り物に乗れたよ!」
中山美咲も親友が喜んでいて嬉しかった。

 ここで京野颯太に想定外の出来事が襲った。所有するパシフィックゼネラル社の株がTOBを発表され彼の会社関係者から緊急連絡が入ったのだ。前々から噂が有った会社ではあったが、こんなに早いタイミングで発表されるとは思ってもいなかったのだ。そこで京野颯太は会議を行なうため遊園地を離れる事となった。
 京野颯太は中山美咲に頭を下げた。
「済みません美咲さん、急用が出来てしまいエスコートが出来なくなってしまいました」
「いいえ、お構いなく。お仕事を優先して下さい」

 京野颯太は思った。こんなに順調に作戦が進み、天国だったのに次は地獄だよ。彼はリムジンに乗り、関内に有る本社ビルに向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

ハヤテの背負い

七星満実
青春
父の影響で幼い頃から柔道に勤しんできた沢渡颯(さわたりはやて)。 その情熱は歳を重ねるたびに加速していき、道場の同年代で颯に敵う者は居なくなった。 師範からも将来を有望視され、颯は父との約束だったオリンピックで金メダルを獲るという目標に邁進し、周囲もその実現を信じて疑わなかった。 時は流れ、颯が中学二年で初段を取得し黒帯になった頃、道場に新しい生徒がやってくる。 この街に越して来たばかりの中学三年、新哲真(あらたてっしん)。 彼の柔道の実力は、颯のそれを遥かに凌ぐものだったーー。 夢。親子。友情。初恋。挫折。奮起。そして、最初にして最大のライバル。 様々な事情の中で揺れ惑いながら、高校生になった颯は全身全霊を込めて背負う。 柔道を通して一人の少年の成長と挑戦を描く、青春熱戦柔道ストーリー。

浦島子(うらしまこ)

wawabubu
青春
大阪の淀川べりで、女の人が暴漢に襲われそうになっていることを助けたことから、いい関係に。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

「ノベリスト」

セバスーS.P
青春
泉 敬翔は15歳の高校一年生。幼い頃から小説家を夢見てきたが、なかなか満足のいく作品を書けずにいた。彼は自分に足りないものを探し続けていたが、ある日、クラスメイトの**黒川 麻希が実は無名の小説家「あかね藤(あかね ふじ)」であることを知る。 彼女の作品には明らかな欠点があったが、その筆致は驚くほど魅力的だった。敬翔は彼女に「完璧な物語を一緒に創らないか」と提案する。しかし、麻希は思いがけない条件を出す——「私の条件は、あなたの家に住むこと」 こうして始まった、二人の小説家による"完璧な物語"を追い求める共同生活。互いの才能と欠点を補い合いながら、理想の作品を目指す二人の青春が、今動き出す——。

処理中です...