『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

第7章 フードアカデミーニューヨーク校開校！

第162話: クロエ、謝罪に訪れる

クロエは自分の過ちに対する深い後悔を胸に抱きながら、アカデミーの門をくぐった。彼女がここに来る理由はただ一つ、自分の犯した罪を償いたい、そして、カイとレイに対して謝りたいという強い思いからだった。

学内は静かだった。いつもの賑やかさが消え、彼女が訪れるには少しばかり気まずい空気が流れているように感じた。クロエは歩みを進める中で、過去の自分がどれほど愚かだったのかを噛みしめていた。

カイとレイは、今ではアカデミーでも尊敬される存在になり、その成長を見守る者たちの眼差しも温かい。自分がやったことの重さを感じながら、クロエは自分の足でその場所へ向かう決意を固めていた。

教室の前で立ち止まり、深呼吸を一つ。彼女はカイとレイがすでに授業を終えて教室を出るところに出くわした。二人の目がクロエに注がれ、少し驚いたような表情を浮かべた。

「クロエ…どうしたんだ？」レイがまず声をかけた。

クロエは目を伏せ、声を絞り出した。「カイ、レイ…。本当に、すみませんでした。」涙をこらえながら、彼女は二人に向かって深々と頭を下げた。「私は、あなたたちの努力を見ていて、自分がどれほど愚かなことをしていたのか、改めて実感しました。嫉妬していた、認めたくない気持ちを抱えて、そして…不正を犯してしまった。」

カイとレイは互いに視線を交わし、少しの間黙っていた。カイが静かに口を開く。「嫉妬していたって、どういうことだ？」

クロエは一度、深呼吸をしてから、続けた。「あなたたちがどんどん上達していくのを見て、私は焦っていた。自分がいつも注目されていたはずなのに、だんだんと存在が薄れていくように感じて、それに耐えられなかった。自分が努力してきたことが評価されず、二人がどんどん輝いていくのが怖かったんです。でも、あの時の私は、それを正しく受け入れられず、不正な手段に手を染めてしまった。あなたたちが優れた才能を持っているのはわかっていた。でも、嫉妬していたんだ。」クロエは頭を下げたまま、心からの謝罪を続けた。

レイが静かに歩み寄り、クロエの肩に手を置いた。「クロエ…私たちも、あなたがどれだけ努力してきたか、知っているよ。でも、それとこれとは別だ。嫉妬していたからといって、手段を選ばずに不正を行うのは、間違いだよ。私たちはあなたに、そんなことをしてほしくなかった。ただ、私たちの実力で評価されるべきだと思う。」

カイも頷きながら言った。「それでも、君が謝ってくれて本当に嬉しい。だって、君が今、素直に向き合ってくれたことが一番大事だよ。私たちは君のことを恨んでいない。でも、これからはちゃんと自分の力で戦っていくべきだと思う。」

クロエはその言葉を聞いて、涙を堪えきれずにこぼれ落ちた。今までの自分の弱さと愚かさが、ひとしお心に響いた。

「ありがとう、カイ、レイ。あなたたちの言葉を聞けて、私は少しだけ楽になれた気がする。これからは、あなたたちのように正当な努力をして、どんな結果が出ても誇りを持って生きていきたい。心から謝りたかった。」クロエは感謝の気持ちと共に、二人に微笑んだ。

その後、カイとレイはクロエを励まし、もう一度やり直すために歩み始めることを決めた。三人は今後の成長を誓い合い、アカデミーで切磋琢磨していくことを約束した。

クロエは、これからの人生でどんな困難が待っているとしても、必ずや正しい道を歩むと決めて、その一歩を踏み出した。