『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

第7章 フードアカデミーニューヨーク校開校！

第151話 - 新たな決意、理事長室へ

翌朝、アレックスは早朝から動き出し、深い決意を胸に抱えながら、リンと共に理事長室へ向かうことを決めた。昨日の夜、リンと彼の間で交わされた言葉が、二人を一歩前進させる力となった。そして、アレックスの決意を確かなものにするため、理事長にしっかりと伝えなければならないことがある。

「リン、行こう。」アレックスは少し緊張した様子で彼女を見つめたが、その瞳には確固たる決意が宿っていた。

リンは深く息を吐き、頷いた。「うん、一緒に行こう。私たちの未来のためにも。」

二人は肩を並べ、理事長室へと向かう廊下を歩く。気持ちが高ぶる中で、アレックスはふと振り返り、リンの手を握った。「君が一緒にいてくれるから、僕もここまで決められた。ありがとう。」

「お互い、支え合ってきたから。だからこそ、今度は私があなたを支える番だよ。」リンは微笑みながら、アレックスを励ますように言った。

理事長室の扉が近づいてくると、アレックスは少し息を呑んだ。リンもその扉の前で立ち止まり、互いに目を合わせる。

「行こうか。」アレックスが言い、リンは深呼吸をしてから頷いた。

扉を開けると、理事長が机の前で資料を確認していた。彼は顔を上げ、二人の姿を見て静かに言った。「アレックス、リン…君たちが来ることは覚悟していたよ。」

アレックスとリンは互いに一瞬目を合わせた後、アレックスが一歩前に出て、手に持っていた退学届を理事長の前に差し出した。

「理事長、お世話になりました。しかし、私たちはフードアカデミーを辞めます。」アレックスは声を震わせながらも、しっかりとその言葉を発した。

リンは静かに横に立ち、アレックスの手にある退学届けを理事長の前に差し出す。「私も、アレックスと一緒に辞めることを決めました。」

理事長は二人の退学届けを受け取ると、少しの間黙っていたが、やがてゆっくりと顔を上げた。「君たちの決断は理解した。でも、リン、君がなぜこの決断をしたのか、正直に話してくれ。」

リンは少し驚きながらも、しっかりと答える。「アレックスと私はこれから一緒に生きていく決意をしました。赤ちゃんができたこともありますし、二人の未来を歩むために、フードアカデミーを辞めることが最善だと考えました。」

理事長はしばらく沈黙した後、ため息をついた。「君たちがどんな道を選ぼうと、私はそれを尊重する。しかし、フードアカデミーにとって君たちの存在は大きかった。だからこそ、少しでも心残りがあるならば、言ってくれ。」

アレックスは少し考え込み、そして決意を込めて言った。「心残りはありません。ただ、僕たちには新しい未来があります。それに向かって進むためには、この選択が必要だったんです。」

リンは頷きながら、「私たちはこれから、別の形で支え合って生きていくつもりです。」と言った。

理事長は二人の真剣な眼差しを見つめ、そして静かに笑顔を浮かべた。「分かった。君たちがしっかりと考えた上での決断だということは伝わったよ。君たちの未来が明るいものになるよう祈っている。」

アレックスとリンは深く頭を下げ、理事長室を後にした。退学の手続きを終えた二人は、これからの新たな人生に向けて歩み始める準備を整えていた。