『Pâtisserie Hina 〜夢と絆のスイーツ物語〜』

ユキワラシ

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第4章:そして、新しい日々へ

第71話:新たな一歩

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瑠奈は、雅也の裏切りを知った後、心の中で多くの感情が渦巻いていた。悲しみ、怒り、そして裏切られたことへの絶望。それでも、彼女は決して後ろを振り返ることなく、前を向くことを決めた。自分の手で赤ちゃんを育てるために、一歩を踏み出さなければならない。

「陽菜、お願いがあるの…」
瑠奈は、陽菜に電話をかけた。陽菜はすぐに出て、心配そうに彼女の声を聞いた。

「瑠奈、どうしたの?声がなんだか元気がないけど…」
陽菜の声には優しさがにじんでいた。

「実は、私、雅也と別れたの。もう一緒にいることはできない。赤ちゃんを育てるために、今からでもちゃんと自立しないといけないと思ってる。」
瑠奈は涙を堪えながら、言葉を続けた。「でも、一人でやっていける自信がなくて…。もしよかったら、陽菜のカフェで働かせてもらえないかな?」

陽菜は驚きとともに、すぐに答えた。「瑠奈…もちろんだよ!私たちは友達だし、何より一緒に働けることを私は嬉しく思う。カフェは忙しいけど、あなたと一緒なら心強い。」

その言葉に、瑠奈は涙をこらえきれずにこぼれ落ちた。陽菜の支えがどれほどありがたかったか、彼女は言葉では表せないほど感謝していた。

「ありがとう、陽菜。本当にありがとう。」
瑠奈は涙をぬぐいながら、強く決意を新たにした。

数日後、瑠奈は陽菜のカフェで働き始めた。最初は手探りで、スイーツやコーヒーを作るのに苦戦したが、陽菜やスタッフのサポートを受けながら、少しずつ慣れていった。

「このカフェで働くことになって、本当に良かった。」
瑠奈はカフェの片隅で、赤ちゃんを抱きながら、陽菜と一緒に過ごす時間を楽しんでいた。陽菜も、瑠奈が一緒に働くことで、さらにカフェの雰囲気が温かくなるのを感じていた。

「瑠奈、あなたが来てくれて、スタッフのみんなも嬉しそうだよ。あなたの明るい笑顔が、カフェの雰囲気にぴったりだと思う。」
陽菜は微笑みながら言った。

瑠奈は照れくさそうに笑い、「でも、まだまだ不安なことだらけだよ。でも、あなたがいてくれるから大丈夫だと思ってる。」
陽菜はその言葉に温かく頷き、励ましの言葉をかけた。

「一緒にやっていこう、瑠奈。これからは、私たちが支え合っていけるから。」
陽菜は瑠奈に手を差し伸べ、彼女の肩を軽く叩いた。

その日から、瑠奈はカフェでシングルマザーとして新たな一歩を踏み出した。陽菜と共に働きながら、赤ちゃんを育てる決意を固め、少しずつ自信を取り戻していった。


---

カフェはますます賑わいを見せ、瑠奈も自分の仕事に慣れていく中で、何度も陽菜に支えられてきた。彼女が笑顔を見せる度、周りの人々も自然と笑顔になり、陽菜のカフェの雰囲気はますます温かく、居心地の良い場所になっていった。

ある日、カフェの忙しい時間が過ぎ、ようやく落ち着いた午後。陽菜と瑠奈は少しだけ休憩を取って、カフェの隅でおしゃべりをしていた。

「瑠奈、赤ちゃんが少し大きくなってきたね。どんどん手がかからなくなってきたんじゃない?」
陽菜が赤ちゃんを抱えながら、微笑んで言った。

「うん、だいぶ楽になったよ。まだ夜泣きとかで寝不足だけど、それでも陽菜が支えてくれるから、乗り越えられる。」
瑠奈は幸せそうに笑いながら答えた。

「私はあなたと一緒に仕事ができて、本当に幸せだよ。シングルマザーとして頑張るあなたを見て、すごく勇気をもらってる。」
陽菜はそう言って、瑠奈の手を握った。

瑠奈は感謝の気持ちを込めて、陽菜を見つめた。「ありがとう、陽菜。あなたがいなかったら、私はここまで来れなかった。これからもずっと支えてくれる?」

「もちろんだよ。あなたと赤ちゃんのために、私ができることは何でもするから。」
陽菜は笑顔で答えた。

その時、瑠奈は心から感じていた。どんな困難な時でも、友達や周りの支えがあれば、どんな未来でも乗り越えていけるということを。

陽菜と一緒に働きながら、シングルマザーとしての生活を支えてもらうことで、瑠奈は自分自身に少しずつ自信を取り戻していった。そして、これからも赤ちゃんと共に、新たな一歩を踏み出す準備が整ったのだった。
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