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6 たのもう
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昼休みの時間を迎えるなりペトラはそそくさと席を立ちあがった。
「誰かと約束?」
いつもならのんびりと空中像を消すペトラとの対比にシエナは呆気にとられた表情で尋ねる。
「うん。ちょっと」
言葉少なにペトラは持ってきたランチバッグを手に取った。
「そっか。じゃあまた後でねー」
「うん。居眠りしすぎないようにね」
「はいはい」
シエナはぱたぱたと急ぎ足で駆けて行ったペトラの後ろ姿に向かって手を振る。
「一体誰と会うんでしょうねぇ」
くすくすと一人で笑いながら、シエナも至福の昼寝タイムへと移ろいでいった。
ペトラは昼休みになって人通りが多くなった廊下を駆け足で通り過ぎ、混んでいるエレベーターは使わずに階段を駆け上がる。
普段あまり運動をしていない彼女にとって階段を一気に駆けるのは相当な負荷がかかった。ぜぇぜぇと息を切らしながらも重くなった足を出来るだけ急がせて目的のフロアへと向かう。
ペトラがフロアに入ってきたことに、大半の者はぎょっとした顔をしていた。
昼休みだと言うのに何か問題でもあったのかと、そわそわした表情の者もいる。しかしペトラは彼らの反応など目に入れる余裕もなく、たった一人だけを視界に入れた。
(良かった……! まだいた……!)
昼休みに入ったというのに変わらず空中像に向かっている青年の横顔を見つけ、ペトラはほっと息を吐く。まだ額には汗が滲んでいた。
「あれ? どうしたの人事さん。何か用?」
するとペトラの右隣からはきはきとしたヒョウのような声が飛んでくる。ペトラは思いがけず肩を飛び上がらせて抱えていたランチバッグを落としそうになった。
「め、……えっと、はい。ちょっと、用事がありまして……」
隣に立っているラドミールの仲間である見慣れた女性に対し、ペトラは思わず自分の中の愛称で呼びそうになって言葉を引っ込めた。
女神はペトラが空調の行き届いたフロアの中で汗をかいていることに首を傾げながら「そう?」とだけ答える。
「あの、ラドミールさんに用事が……」
「ラドミール? ああ、なるほど。ついに直々に警告に来ちゃった?」
女神は以前廊下でペトラと話した内容を思い返し、バツが悪そうにはにかむ。
「いいえ。私たちにそこまでの権限はないので……」
「そう? そうなの?」
「はい。人事総務だって、踏み入れていい領域ってものがありますから」
「権限ねぇ。ふーん。まぁ、仕事として見たら、そうなのかもね」
「?」
女神があまり腑に落ちない表情をしたので、ペトラはきょとんと彼女のことを見上げたまま小首を傾げた。
「まぁいいや。ラドミールならまだ仕事してるよ。あいつ、いつも昼食は適当なんだ。あいつにいい顔してる他のチームの奴が差し入れくれるから、そればっかり食べてる」
「そうなんですか? ちゃんとご飯、食べてないんですか?」
「たまーに食堂に行くくらいじゃない? あんまり食べるの好きじゃないらしいよ。味のついた飲み物で十分だっていつも言ってるから」
「えっ」
ラドミールの新たな発見にペトラはつい固まってしまった。青ざめたペトラを見た女神は、彼女の顔の前で手を振って彼女の目を覚まそうとする。
「あいつほんと、超不健康だよね。まぁ、頼ってばっかの私たちも悪いけどさ」
「引き受ける方も……限度があると思います、から」
自らを責めるように気まずい表情をした女神に対し、ペトラはほろほろと崩れそうな声で彼女を慰めた。
「普通は、断りますよ」
視線を女神から未だに手を止めようとしないラドミールへと移す。
ペトラは女神というよりはラドミールを諭すようにぽつりと呟いた後で、彼女にぺこりと頭を下げて彼のもとへと近づいていく。
仕事を詰めるだけでは飽き足らず、そもそもの健康すら疎かにしているとは。
ペトラは沸き上がる静かな怒りに燃えながらも彼の隣でぴたりと止まる。
「ラドミールさん!」
「ぅあっ!?」
空中像に夢中の彼に聞こえるようにと威勢よく声をかけたペトラ。ラドミールはその声に驚き、思わず椅子から落ちそうになる。
(集中しすぎ…………)
ペトラはラドミールの気の抜けた表情を見下ろしながら小さく唇を尖らせる。
「ペトラさん? あれ? どうしたんですか?」
思いがけないペトラの登場にラドミールは目を丸くして微かに笑みを作る。
ペトラは澱みのない瞳に真っ直ぐに見つめられ、温度が上がってきた怒りが少し冷えていく。
途端に先ほどの自分の大声を思い出して恥ずかしくなり、今度は声を落として控えめに話題を繋ぐ。
「…………あ、あのっ。お昼、一緒にどうですか?」
「え?」
ペトラのお誘いは完全に想定外だったようだ。
ラドミールはきょろきょろと周りを見回した後で自分を指差し、「俺?」と再度確認する。
「そうです。サンドウィッチ、作りすぎちゃったので、お裾分けさせてください」
ラドミールが食べることを好んでいないとは知らなかったペトラは、差し入れなら受け取っているという得たばかりの情報をもとに即席の言い訳を述べる。
「え? でも……いいんですか? 俺で」
なおもラドミールは大きな瞳をぱちぱちとさせたまま。
「はい。この前の面談のお礼です」
「でもあれ、騎士団の制度のひとつじゃ……」
「あ、えっと……すごく、ためになったから……です。あの、管理局の話、とか、あまり聞いたことないので、面白かった、ので……」
ペトラは適当な言い訳を並べてどうにかラドミールの疑問をかわそうとした。
確かに彼が不審に思うのも当然だ。二人は部署としてはまったく違うし、まだ知り合ったばかり。ペトラは改めてこれは無謀な試みだと実感する。
仕事をどうにか取り上げようとも彼にはまったく効果がないことを学んだペトラは、それならばと仕事以外の側面から彼の空気を抜こうと画策した。
ペトラの思った通り、女神の話を聞く限りでも彼はまともに休憩すらとっていない。
誰かと昼食を食べると話が盛り上がってつい時間を忘れてしまう自分たちとは大違いな彼に対し、ペトラはイチかバチかの策を実行した。
それはまったく大層な作戦でもなんでもなく、ただ自分が昼食に誘えばいいのだという安直な発想のものだった。
美味しいものは時間を忘れさせてくれるはず。
彼とどれくらい会話が出来るか分からないが、どうにか彼史上最長の休憩を取らせたい。
その代償として残業をいつもの倍してやられたら意味がないので、強制的に残業が出来なくなる施設メンテナンスのあるこの日を狙った。
さすがに家までは監視できないので、家に持ち帰られたらどうしようもないが、少なくとも家にいるのだからまだ許容しようとペトラは妥協した。
少し長めの休憩を取って、その微かな罪悪感と満足感の魅力に気づいて欲しい。
以前彼を観察していた時、彼が甘ったるい飲料を嬉しそうに飲んでいたことが印象的だったペトラは、いつも作っているサンドウィッチの中身をフルーツや生クリームといった甘いものばかりに変えた。
味の好みも分からないので、どうにか興味を持ってもらえるものを、と思ったのだ。
まさか彼がただ飲むことの方が好きで、甘い飲料を好んでいたのは味が強いからだとは思いもよらなかったが。
ラドミールはペトラが持っているランチバッグを見やると、彼の返事を待って緊張を滲ませた表情をしているペトラをもう一度見る。
「うん。ありがとうペトラさん。せっかくだから、お言葉に甘えてもいいですか?」
「……! はい! ぜひぜひ!」
ペトラの表情がぱっと明るくなると、ラドミールもにこっと優しく笑う。
ラドミールは空中像を消しながら上着を手に取る。
「どこで食べますか?」
「今日は天気がいいので、外はどうですか?」
「ははっ。いいね」
「ですね!」
ペトラの提案通り外に出ようとする二人とすれ違った女神は、ずっと見ていた二人のやり取りに対して口笛を吹いた。
ペトラが不思議に思って振り返ると、女神は美しいウインクを飛ばした後で親指を立てて激励を送ってくる。
(え?)
女神の異様な仕草にペトラはしばらくそれが何を意味するのかを考えてみた。
そして。
「ちっ、違いますよ……っ!?」
慌てて二人を見送っている女神に対して思い切り首を横に振って必死で彼女の推測を否定しようとした。
隣を歩くラドミールは突然のペトラの大声に再び驚きながらも、耳を赤くして戸惑っている彼女のことを横目で見やった。
「誰かと約束?」
いつもならのんびりと空中像を消すペトラとの対比にシエナは呆気にとられた表情で尋ねる。
「うん。ちょっと」
言葉少なにペトラは持ってきたランチバッグを手に取った。
「そっか。じゃあまた後でねー」
「うん。居眠りしすぎないようにね」
「はいはい」
シエナはぱたぱたと急ぎ足で駆けて行ったペトラの後ろ姿に向かって手を振る。
「一体誰と会うんでしょうねぇ」
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ペトラは昼休みになって人通りが多くなった廊下を駆け足で通り過ぎ、混んでいるエレベーターは使わずに階段を駆け上がる。
普段あまり運動をしていない彼女にとって階段を一気に駆けるのは相当な負荷がかかった。ぜぇぜぇと息を切らしながらも重くなった足を出来るだけ急がせて目的のフロアへと向かう。
ペトラがフロアに入ってきたことに、大半の者はぎょっとした顔をしていた。
昼休みだと言うのに何か問題でもあったのかと、そわそわした表情の者もいる。しかしペトラは彼らの反応など目に入れる余裕もなく、たった一人だけを視界に入れた。
(良かった……! まだいた……!)
昼休みに入ったというのに変わらず空中像に向かっている青年の横顔を見つけ、ペトラはほっと息を吐く。まだ額には汗が滲んでいた。
「あれ? どうしたの人事さん。何か用?」
するとペトラの右隣からはきはきとしたヒョウのような声が飛んでくる。ペトラは思いがけず肩を飛び上がらせて抱えていたランチバッグを落としそうになった。
「め、……えっと、はい。ちょっと、用事がありまして……」
隣に立っているラドミールの仲間である見慣れた女性に対し、ペトラは思わず自分の中の愛称で呼びそうになって言葉を引っ込めた。
女神はペトラが空調の行き届いたフロアの中で汗をかいていることに首を傾げながら「そう?」とだけ答える。
「あの、ラドミールさんに用事が……」
「ラドミール? ああ、なるほど。ついに直々に警告に来ちゃった?」
女神は以前廊下でペトラと話した内容を思い返し、バツが悪そうにはにかむ。
「いいえ。私たちにそこまでの権限はないので……」
「そう? そうなの?」
「はい。人事総務だって、踏み入れていい領域ってものがありますから」
「権限ねぇ。ふーん。まぁ、仕事として見たら、そうなのかもね」
「?」
女神があまり腑に落ちない表情をしたので、ペトラはきょとんと彼女のことを見上げたまま小首を傾げた。
「まぁいいや。ラドミールならまだ仕事してるよ。あいつ、いつも昼食は適当なんだ。あいつにいい顔してる他のチームの奴が差し入れくれるから、そればっかり食べてる」
「そうなんですか? ちゃんとご飯、食べてないんですか?」
「たまーに食堂に行くくらいじゃない? あんまり食べるの好きじゃないらしいよ。味のついた飲み物で十分だっていつも言ってるから」
「えっ」
ラドミールの新たな発見にペトラはつい固まってしまった。青ざめたペトラを見た女神は、彼女の顔の前で手を振って彼女の目を覚まそうとする。
「あいつほんと、超不健康だよね。まぁ、頼ってばっかの私たちも悪いけどさ」
「引き受ける方も……限度があると思います、から」
自らを責めるように気まずい表情をした女神に対し、ペトラはほろほろと崩れそうな声で彼女を慰めた。
「普通は、断りますよ」
視線を女神から未だに手を止めようとしないラドミールへと移す。
ペトラは女神というよりはラドミールを諭すようにぽつりと呟いた後で、彼女にぺこりと頭を下げて彼のもとへと近づいていく。
仕事を詰めるだけでは飽き足らず、そもそもの健康すら疎かにしているとは。
ペトラは沸き上がる静かな怒りに燃えながらも彼の隣でぴたりと止まる。
「ラドミールさん!」
「ぅあっ!?」
空中像に夢中の彼に聞こえるようにと威勢よく声をかけたペトラ。ラドミールはその声に驚き、思わず椅子から落ちそうになる。
(集中しすぎ…………)
ペトラはラドミールの気の抜けた表情を見下ろしながら小さく唇を尖らせる。
「ペトラさん? あれ? どうしたんですか?」
思いがけないペトラの登場にラドミールは目を丸くして微かに笑みを作る。
ペトラは澱みのない瞳に真っ直ぐに見つめられ、温度が上がってきた怒りが少し冷えていく。
途端に先ほどの自分の大声を思い出して恥ずかしくなり、今度は声を落として控えめに話題を繋ぐ。
「…………あ、あのっ。お昼、一緒にどうですか?」
「え?」
ペトラのお誘いは完全に想定外だったようだ。
ラドミールはきょろきょろと周りを見回した後で自分を指差し、「俺?」と再度確認する。
「そうです。サンドウィッチ、作りすぎちゃったので、お裾分けさせてください」
ラドミールが食べることを好んでいないとは知らなかったペトラは、差し入れなら受け取っているという得たばかりの情報をもとに即席の言い訳を述べる。
「え? でも……いいんですか? 俺で」
なおもラドミールは大きな瞳をぱちぱちとさせたまま。
「はい。この前の面談のお礼です」
「でもあれ、騎士団の制度のひとつじゃ……」
「あ、えっと……すごく、ためになったから……です。あの、管理局の話、とか、あまり聞いたことないので、面白かった、ので……」
ペトラは適当な言い訳を並べてどうにかラドミールの疑問をかわそうとした。
確かに彼が不審に思うのも当然だ。二人は部署としてはまったく違うし、まだ知り合ったばかり。ペトラは改めてこれは無謀な試みだと実感する。
仕事をどうにか取り上げようとも彼にはまったく効果がないことを学んだペトラは、それならばと仕事以外の側面から彼の空気を抜こうと画策した。
ペトラの思った通り、女神の話を聞く限りでも彼はまともに休憩すらとっていない。
誰かと昼食を食べると話が盛り上がってつい時間を忘れてしまう自分たちとは大違いな彼に対し、ペトラはイチかバチかの策を実行した。
それはまったく大層な作戦でもなんでもなく、ただ自分が昼食に誘えばいいのだという安直な発想のものだった。
美味しいものは時間を忘れさせてくれるはず。
彼とどれくらい会話が出来るか分からないが、どうにか彼史上最長の休憩を取らせたい。
その代償として残業をいつもの倍してやられたら意味がないので、強制的に残業が出来なくなる施設メンテナンスのあるこの日を狙った。
さすがに家までは監視できないので、家に持ち帰られたらどうしようもないが、少なくとも家にいるのだからまだ許容しようとペトラは妥協した。
少し長めの休憩を取って、その微かな罪悪感と満足感の魅力に気づいて欲しい。
以前彼を観察していた時、彼が甘ったるい飲料を嬉しそうに飲んでいたことが印象的だったペトラは、いつも作っているサンドウィッチの中身をフルーツや生クリームといった甘いものばかりに変えた。
味の好みも分からないので、どうにか興味を持ってもらえるものを、と思ったのだ。
まさか彼がただ飲むことの方が好きで、甘い飲料を好んでいたのは味が強いからだとは思いもよらなかったが。
ラドミールはペトラが持っているランチバッグを見やると、彼の返事を待って緊張を滲ませた表情をしているペトラをもう一度見る。
「うん。ありがとうペトラさん。せっかくだから、お言葉に甘えてもいいですか?」
「……! はい! ぜひぜひ!」
ペトラの表情がぱっと明るくなると、ラドミールもにこっと優しく笑う。
ラドミールは空中像を消しながら上着を手に取る。
「どこで食べますか?」
「今日は天気がいいので、外はどうですか?」
「ははっ。いいね」
「ですね!」
ペトラの提案通り外に出ようとする二人とすれ違った女神は、ずっと見ていた二人のやり取りに対して口笛を吹いた。
ペトラが不思議に思って振り返ると、女神は美しいウインクを飛ばした後で親指を立てて激励を送ってくる。
(え?)
女神の異様な仕草にペトラはしばらくそれが何を意味するのかを考えてみた。
そして。
「ちっ、違いますよ……っ!?」
慌てて二人を見送っている女神に対して思い切り首を横に振って必死で彼女の推測を否定しようとした。
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