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庭園での二人
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「エルランジェ家から逃げ出してしまって、こんな事をいう資格はないのは承知です。マデリーンが毒薬犯の一人だとしたら、エルランジェ家と、お腹の中の子はどうなるのでしょうか……?産まれてくる子に罪はありません。でもあの時はマデリーンの妊娠を聞いて、婚姻を破棄するしかないと、そればかりで。私は自分の事しか……」
「産まれて来る子供に罪はない、確かにね。妊婦と赤子に無体な事はするつもりはないよ。でもエルランジェ家やマデリーンの件については、ミレーユは何も気にしなくていい。考えるなと言われても、難しいかもしれないけれど。
それにこれはエルランジェ家や伯爵が、嬉々として選んだ事だ」
「……そうですね」
──自分が逃げ出したような気持ちになってしまったけれど、最初に捨てられたのは私の方だ。
東屋から離れて、サイラスとミレーユは薔薇のアーチを潜り、ルピナスやネモフィラが咲き乱れる花壇を横目に歩いていた。
「ところでミレーユ、この前の事考えてくれた?」
「えっと、この前って……」
サイラスの言葉に視線を彷徨わせる。真っ直ぐに射止められると、途端に目が合わせられなくなる。
「はぐらかしても駄目だよ。分かってるよね」
人差し指で顎下をなぞり、目線が合うようゆっくり上を向かされる事になった。
「俺と結婚して欲しい。淡い憧れなんかじゃない、今迄もこれからも俺には君が唯一なんだ」
ストレートな告白にしばらく固まったが、自分の心の内を伝えないと。
「産まれて来る子供に罪はない、確かにね。妊婦と赤子に無体な事はするつもりはないよ。でもエルランジェ家やマデリーンの件については、ミレーユは何も気にしなくていい。考えるなと言われても、難しいかもしれないけれど。
それにこれはエルランジェ家や伯爵が、嬉々として選んだ事だ」
「……そうですね」
──自分が逃げ出したような気持ちになってしまったけれど、最初に捨てられたのは私の方だ。
東屋から離れて、サイラスとミレーユは薔薇のアーチを潜り、ルピナスやネモフィラが咲き乱れる花壇を横目に歩いていた。
「ところでミレーユ、この前の事考えてくれた?」
「えっと、この前って……」
サイラスの言葉に視線を彷徨わせる。真っ直ぐに射止められると、途端に目が合わせられなくなる。
「はぐらかしても駄目だよ。分かってるよね」
人差し指で顎下をなぞり、目線が合うようゆっくり上を向かされる事になった。
「俺と結婚して欲しい。淡い憧れなんかじゃない、今迄もこれからも俺には君が唯一なんだ」
ストレートな告白にしばらく固まったが、自分の心の内を伝えないと。
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