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新たな問題

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マデリーンの名に、ミレーユの身体は瞬時に冷たい氷で覆われてしまったかのように身を硬くし、体温が急激に冷えていった。

その反応をみて肯定だと、シモーヌは察する。

「やっぱり知っているのね?貴女に会いに本館へと訪ねて行ったら、貴女ではなく彼女がいたのよ」


ミレーユが邸に居ない事も、代わりに愛人が住み始めた事も義母に知られてしまった。マデリーンとユージオの関係は今更もう隠す事が出来ない。

「もしかしてユージオは愛人を邸にいれるためにミレーユを追い出したの?」
「それは、ないと思いますが……」

(ユージオが私の事を疎ましく思っていたのは、事実だけど……)

ユージオの考えは別として、邸を出たのはミレーユの意思だったので、その部分は否定しておいた。

「でも、二人の関係は前から気付いていました」
「どうして言わなかったの……」

もしすぐに義母に相談したら、何かが変わっていたのだろうか。無理に引き離そうとすると、余計に二人の愛が燃え上がったり、配偶者を恨む事さえ考えられた。
過去の自分が選らばなかった選択肢を、今更想像したところで仕方がない。
何が最善だったかなんて分からない。

互いに黙り込んだまま、重い空気が漂う室内でシモーヌは溜息を吐くと、神妙な面持ちで零した。

「彼女、ユージオの子供を妊娠しているっていうの……」
「え」

見る見る青ざめて行く義母を前に、ミレーユも戸惑うしかなかった。

「ユージオに問い詰めたら、あり得ないっていうのだけれど……。『身に覚えあるでしょう?』ってマデリーンに言われた途端気まずそうに黙りこくって、否定しなかったのよ」

ミレーユだって情事に耽る二人のことは見てしまっている。不貞があったのは事実。今さら言い逃れは出来ないだろう。

「女主人が不在な事もあって、妊婦を追い出すかは悩んでしまっていて……。しかもユージオの子供を身籠っている女性でしょう?だから、もし今の貴女に子供が出来ていたら、それを理由に追い出そうと思っていたのよ」
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